神戸・京都・大阪。阪急沿線で愛される老舗のパン。愛されるのには、理由がある。【TOKK2023年4月号】
2023.03.25特集
ついついふらりと立ち寄ってしまう、地元の老舗ベーカリー。
神戸、京都、大阪、阪急沿線で長きにわたり愛されてきたパン作りの秘訣やおすすめパンをご紹介。
※パンの価格はテイクアウト価格です。
目次
意外と歴史が長いパン。鉄砲とともに日本へ伝来
日本のパンのルーツは1543年。この年、種子島に漂着したポルトガル人によって、鉄砲とともに本格的な西洋風のパンが日本に伝来した。「パン」の名前の由来は、ポルトガル語の「Pao(パォン)」。キリスト教では「パンはキリストの肉体」と考えられており、キリスト教が広まるにつれパンも全国に広がっていった。
神戸初のパン屋が開店したのは、神戸港開港翌年の1869年。開港とともに多くの外国人が神戸に来日し、外国人の居留地が整備されるとパン屋も続々と誕生。今では神戸は、数々の名店がひしめくパン激戦区となっている。
一方、京都人も実は大のパン好き。京都府のパン消費量は全国トップクラスで、パン屋も多い。大阪や宝塚においても地域に根付いたパン屋が多く、パンは他地方から比べても身近な存在。阪急沿線で長く愛されてきた老舗の名店を訪れ、パンの魅力を味わい尽くそう。
【大阪・池田】いしばし商店街にある昔ながらのパン屋さん「タローパン」
1929年に初代の堤(つつみ)太郎さんが創業。かつてはパンのほか洋菓子や餅も販売していた。1970年代、パンは袋詰めで売るのが一般的だったが、同店では包装せず販売するように。
三代目の洋一さんによると「当時の大阪ではこれが斬新で、包装の手間を省くことで焼きたてパンの提供が可能になりました。また、この時期のパン屋は入口側に壁やドアがない建物が多く、タローパンは当時では珍しく四方に壁があり床がフローリング風の建物だったため、土足がダメなのだと思って店前で靴を脱いで入店するお客様も。あの時代ならではの、ほほ笑ましい思い出です」。
洋一さん本人が自信をもっておいしいと思えるクオリティーにこだわって作るパンは、どれも素朴ながら毎日食べたいおいしさ。
近くの大阪大学の学生も多く訪れ、同大学卒業生との縁あって、スパイスカレーとフランスパンを提供する、月に一度のイベントも開催している。つい立ち寄りたくなる親近感が魅力的なまちのパン屋さんだ。
(左)「シナモンアップル」205円 たっぷり乗ったりんごとデニッシュ生地がベストマッチ。りんごは煮詰めた後、シロップをかけて焼き、ゼリーを乗せるというこだわり仕込み。
(中)「ソーセージロール」172円 やわらかい生地にパリッとしたウインナーを挟んだこちらも、パンの形は変わっているものの、約50年前から販売している人気商品。
(右)「焼きそばドッグ」183円 昔は近所の幼稚園の給食でも出していた商品で、50年近いロングセラー。焼きそばは、肉やソースが多めで食べ応えあり。
スポット名 | タローパン |
時間 | 8:30~19:15 |
定休日 | 日曜休 |
問い合わせ | 072-761-8480 |
アクセス | 阪急石橋阪大前駅下車すぐ |
住所 | 池田市石橋1ー12ー4【MAP】 |
備考 | パンは電話または店頭で予約可能。 イベントの詳細はInstagramにて随時更新。 |
URL | http://taro-pan.com/ https://www.instagram.com/taro_pan.ishibashi/ |
【神戸三宮】本格的なドイツパンを日本に広めた名店「FREUNDLIEB(フロインドリーブ)」
ハインリッヒ・フロインドリーブ氏が1924年に夫婦で開店。本格的なドイツパンを日本に広めた店として知られる。広報の杉本さんは「ライ麦パンや食パンなどのドイツパンを中心に販売しています。ドイツパンらしいハードパンが多く、創業以来、昔からの手作り製法を守っているのもこだわり。その時々でほんの少しずつ変わる焼き上がりや自然な風味もお楽しみください」と語る。パンは保存料不使用、その日に販売する分だけを作る。
旧神戸ユニオン教会をリノベーションしたカフェも人気。風情ある空間で、自慢のパンを使ったサンドウィッチを楽しもう。
(左)「ハードトースト」1/2サイズ 583円、L 1,166円 れんが窯で焼き上げたパンは、外はバリッとした歯切れのよい食感、中はふんわり。まずはシンプルにトーストでどうぞ。
(中)「ウィナー(ドイツコッペ)」648円 しっかりとしたクラスト(パン外側の焼き色がついた部分)が楽しめる。かみ応えのあるハードな生地で、香ばしい風味も魅力。
(右)「ブラウンブレッド クルミレーズン入り」S 648円、L 1,296円 酸味と甘さのバランスが絶妙なライ麦30%のレーズンとクルミが入ったブレッド。トーストしてもおいしい。温かいスープと一緒に食べるのがドイツ流。
スポット名 | FREUNDLIEB(フロインドリーブ) |
時間 | 10:00~18:00(17:30LO) |
定休日 | 水曜休(祝日の場合は営業、翌日休) |
問い合わせ | 078-231-6051 |
アクセス | 阪急神戸三宮駅下車 約12分 |
住所 | 神戸市中央区生田町4-6-15【MAP】 |
備考 | パンは電話または店頭で予約可能。 |
URL | http://h-freundlieb.com/wp1/ |
【宝塚】長年のファンも多い出来立てサンドウィッチ「サンドウイッチルマン 花のみちセルカ店」
宝塚で二店舗を構えるサンドウィッチ専門店。1964年に𥶡 史子(たが ふみこ)さんが創業した。まだサンドウィッチ専門店がなかった時代、史子さんが生まれて初めて食べたたまごサンドに衝撃を受けたことがルマン誕生のきっかけ。
看板商品「エッグサンド」のほか、野菜、魚、肉、フルーツなど具材は多彩。「新鮮な食材を使って手作りするのがこだわりで、フライは注文を受けてから揚げています。
数年前まで幼稚園の給食に商品を提供していたこともあり、『幼少期の思い出の味を食べたくて』と来店される方も多いんです」と主任の福田美恵子さん。地域に根付いた人気店だ。
(左)「エッグサンド」896円 スクランブルエッグに、刻んだゆで卵入りのマヨネーズをプラス。一箱に使用する卵は4~5個。卵のおいしさをたっぷり楽しめる。
(中)「組合せフルーツ」954円 エッグ、ハム、フルーツ、ミンチカツ、ヤサイの5種類が組み合わせになった、色んな味を楽しみたい人にぴったりな欲張りセット。
(右)「ストロベリーサンド」1,430円 たっぷりのイチゴが贅沢(ぜいたく)な季節限定。1月中旬~5月上旬頃の販売(時期は変更となる場合あり)。夏はシャインマスカットの予定。
スポット名 | サンドウイッチルマン 花のみちセルカ店 |
時間 | 9:00~17:00(16:30LO) |
定休日 | 月・水曜休 |
問い合わせ | 0797-85-1200 |
アクセス | 阪急宝塚駅下車 約8分 |
住所 | 宝塚市栄町1-6 花のみちセルカ2番館2階【MAP】 |
備考 | パンはテイクアウトに限り、電話または店頭で予約可能。 |
URL | http://www.takarazuka-lemans.com/ |
【神戸三宮】パンは180種類以上。毎日通っても楽しい「イスズベーカリー 本店」
戦後間もない1946年創業。当時は配給物資の小麦粉でパンを作っていたという。まだ洋菓子専門店がなかったこの頃、パン屋はパンと洋菓子を両方作るのが普通だった。同店も洋菓子を販売していたが、現在はパン作りに注力している。パンは常時180~190種類。
毎日通う人にも楽しんでもらえるよう、毎月7~8種類の新商品も登場する。三代目の井筒大輔さんは「パンは昔ながらの手作り。イーストを極力使わず、その分発酵や熟成に時間をかけることで、なめらかな口どけと小麦本来のうま味を感じるパンに仕上げています」と話す。手間暇かけて作るパンは味わいも格別。
(左)「食パン ハード山食」1袋(1/3本) 291円、1本 873円 二代目・井筒英治さんが「毎日食べても飽きないパン」として考案。生地をしっかり熟成させることで小麦本来のうま味を引き出している。
(中)「トレロン」1本 756円、1/2本 378円 燻製した特注ウインナーに、粒マスタードがアクセント。全長はなんと約70cm。名前の由来は、フランス語の「treslong(とっても長い)」。
(右)「牛すじ煮込みカレーパン」259円 パンチのあるカレーに甘辛く煮込んだ大きめの牛すじをMIXさせたカレーパン。カレーパングランプリ金賞を2度受賞。
スポット名 | イスズベーカリー 本店 |
時間 | 8:00~20:00 |
定休日 | 無休 |
問い合わせ | 078-222-4180 |
アクセス | 阪急神戸三宮駅下車 約9分 |
住所 | 神戸市中央区布引町2-1-4【MAP】 |
備考 | パンは電話または店頭で予約可能。 |
URL | https://isuzu-bakery.jp/ |
【京都・烏丸】名物は“京かるね”、京都人のなじみの味「志津屋 本店」
1948年に堀 信(まこと)氏が創業し、当初はパンや洋菓子の委託販売をしていた。戦後は物資不足からパン作りに必要な砂糖をハチミツで代用したという話もある。
今では多くのパンやサンドウィッチを販売する同店だが、広報によると「1960~70年代には洋菓子の製造販売、ピザの宅配をしていた時期も。その経験も生かしながら、今は『どんな世代でも食べられる、からだに優しいパンをお届けすること』を信条にパン作りに専念しています」。
店頭にはできたてのパンやサンドウィッチがずらり。新進気鋭の若手スタッフが商品開発を担当している毎月の新作パンも好評。
(左)「京かるね」230円 志津屋の代表的パンで、具材はボンレスハム、スライス玉ねぎ、マーガリンのみ。カイザーロールの生地はハード寄りの食感。
(中)「デニッシュカルネ」250円 京かるねと同じ具材でデニッシュ生地に仕上げた新感覚カルネ。サクッと口どけのよい生地で、子どもや年配の方にも食べやすいと評判。
(右)「本店限定 マシュマロチョコカルネ」290円 板チョコ、マシュマロを挟んだデザートカルネ。マーガリンとの甘じょっぱい組み合わせが癖になる。トーストで温めるのもおすすめ。
スポット名 | 志津屋 本店 |
時間 | 7:00~20:00 |
定休日 | 無休 |
問い合わせ | 075-803-2550 |
アクセス | 阪急烏丸駅→京都市営地下鉄・太秦天神川駅下車 約6分 |
住所 | 京都市右京区山ノ内五反田町10【MAP】 |
備考 | パンは前日までに電話または店頭で予約可能。 |
URL | https://www.sizuya.co.jp/ |
【京都・烏丸】フランスのパン文化を創業の地・京都で伝える「進々堂 寺町店」
創業は1913年。創業者の続木斉(つづき ひとし)氏は、1924年に日本人で初めてパリへパン留学し、2年間の遊学の後フランスパンの製造を開始。1952年には日本初のスライス包装食パン「デイリーブレッド」を発売し、京都の家庭に「朝食はパン」という食文化を浸透させる一助となった。
「パン作りで特に大切にしているのは、配合・熟成・焼成。米に多くの銘柄があるように小麦にも種類があり、それぞれの小麦の特徴を生かしたパン作りを追求しています」と製造部の須藤あき子さん。パンのフィリング(具材)も自家製ですべて手作りしており、進々堂のパン作りに妥協はない。
(左)「レトロバゲット”1924″」390円 表面はパリッ、中はしっとりと柔らかい。ほのかに塩気があり、かめばかむほど小麦本来の甘みが口の中に広がる自慢の逸品。
(中)「クロワッサン・オ・ブール」220円 発酵バターの風味豊かな味わいで、大きめサイズがうれしい。外のパリパリ感と中のもちっと感、バターの香りをお楽しみあれ。
(右)「しば漬カレーパン」300円 自家製カレーと京都の漬物屋・打田漬物のしば漬を使った人気パン。しば漬のポリポリ食感、冷めてもサクサクの衣にもこだわった。
スポット名 | 進々堂 寺町店 |
時間 | レストラン7:30~18:00(17:00LO) イートイン7:30~18:30(18:00LO) ショップ7:30~19:00 |
定休日 | 無休 |
問い合わせ | 075-221-0215 |
アクセス | 阪急烏丸駅→地下鉄・丸太町駅下車 約10分 |
住所 | 京都市中京区久遠院前町674【MAP】 |
備考 | パンは電話または店頭で予約可能。 |
URL | https://www.shinshindo.jp/ |
まだまだあります、神戸・京都・大阪のパン。
ほかにも京阪神エリアは、魅力的なパン屋さんが豊富。下記にまとめているので、気になるエリアをチェック!
<梅田エリア>
<神戸~宝塚エリア>
<北摂エリア>
<京都エリア>
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