京都の「松尾大社」とは?見どころやご利益を解説!

京都最古の神社のひとつとして知られる「松尾大社(まつのおたいしゃ)」。阪急嵐山線・松尾大社駅下車すぐの場所にあり、駅から出た瞬間に松尾大社の大きな鳥居が見えてくる。 松尾大社駅は、嵐山駅からたったの一駅。京都の嵐山観光とあわせて訪れるのもおすすめだ。

今回は、松尾大社広報ご担当の西村伴雄(にしむらともお)さんによるご案内で、境内をぐるりと巡り、松尾大社の歴史やご利益、見どころなどを伺った。

松尾大社広報ご担当の西村伴雄さん
松尾大社広報ご担当の西村伴雄さん。気さくな語り口が魅力的だ

京都の松尾大社とは?

京都洛西の総氏神、酒造の神様として有名な松尾大社。

その歴史は、太古まだ社殿がなかった頃、松尾山の山頂にある磐座(いわくら/神様が鎮座する場所とされる岩)に山の神様・大山咋神(おおやまぐいのかみ)を祀(まつ)ったことに始まる。

「かつては『山の神様は恐い、だからこそより一層の御神徳がある』と信じられていたようです。平安遷都の際には、松尾大社は上賀茂神社、下鴨神社とともに皇城鎮護(おうじょうちんご)の社(都の守り神)とされ、“賀茂の厳神、松尾の猛霊(もうれい)”と並び称された歴史もあります。“猛霊”とは、いかにも恐くてご利益のありそうな呼び名でしょう?その頃は厄払いで訪れる人も多かったんです」と西村さん。

今もなお緑豊かで広々とした境内に、京の都を守り続けてきた“猛霊”の堂々たる風格が感じられる。

701年に建立された本殿
本殿が建立されたのは701年のこと

酒造の神様 松尾大社のご利益

松尾大社は京都洛西の総氏神として多くの崇敬を集めるほか、開拓、治水、土木、建築、商業、文化、寿命、交通、安産の守護神として、そのご利益は多岐にわたる。

なかでも醸造祖神、とくに酒造の神様としての信仰が篤く、全国の酒造家、みそ、しょうゆ、酢などの製造・販売業者、さらには酒を飲むのが好きな愛好家も数多く参拝する。

松尾大社が酒造の神様として信仰されるようになったのは、室町時代に入ってから。 室町時代以降、優れた酒造技術をもつ渡来民族・秦(はた)氏がこの一帯に来住し、松尾大社を一族の総氏神として仰いだことから、いつの間にか酒造の神様として崇拝されるようになったという。

奉納酒樽が並ぶ神輿庫
酒造に携わる企業から奉納された酒樽が並ぶ「神輿庫(みこしこ)」

ただし、酒造の神様として松尾大社の名が全国に知れ渡ったのは、意外にも江戸時代になってから。

西村さんによると「江戸時代は、船が日本中を航海するようになった時期。さらに、今でいう関西の辺りには、当時高度な火入れの技術がありました。だから、京都で作られた酒を腐らせずに日本のあちこちへ運ぶことができるようになり、『酒造の神様 松尾大社』の名が全国的に知られるようになったのです。もしかすると『今日の酒うまいね』『松尾大社という酒造の神様のもとで作っているからね』なんて会話があったのかもしれません」。

神輿庫のアップ。中にはお気に入りの銘柄があるかも
酒樽の中に普段飲んでいる銘柄を探してみるのも一興だ

松尾大社の見どころ

見どころ両流造の屋根が珍しい本殿

701年に建立された本殿は、1397年に再建、1542年に大改修されたもの。御祭神に大山咋神と市杵島姫命(いちきしまひめのみこと)を祀る。 今回は取材のために、通常は入れない本殿の内部へ特別に入らせていただくことに!間近に見る本殿には、なんともいえない迫力がある。

通常は入れない本殿内部に特別に入らせていただく
特別なときにしか入れない本殿内部

神社建築において本殿の屋根には、千木鰹木(ちぎかつおぎ)が多く見られる。一方、松尾大社は屋根の大棟(おおむね)を板で箱形につくる「箱棟(はこむね)」、左右の屋根が同じ長さをしている「両流造(りょうながれづくり)」なのが珍しい。

本殿の屋根は箱棟、両流造なのが珍しい
本殿を横から見ると、箱棟や両流造なのがよくわかる

本殿を眺めていると、随所に施された金装飾に魅せられる。「白木造の社でこんなに飾り金具があるのは珍しいです。詳しい理由はわかっていないものの、本殿が再建された1397年はちょうど金閣寺建立の時期であったことから、煌びやかな金装飾が流行っていて、松尾大社にも使ったのではないか?と考えることはできますね」と西村さん。

本殿には細部まで金装飾が施されている
細部にまで金装飾が施され、まばゆく輝く

ところで、ふと「双葉葵」の文様に目が留まる。双葉葵といえば、上賀茂神社と下鴨神社のイメージだが…。

松尾大社境内の所々で双葉葵の紋を見かける
境内の所々で見かける双葉葵の文様

西村さんにたずねたところ、「その昔、秦氏と賀茂氏は現在の奈良県の同じ一帯に住んでいました。そこから両一族は京都へ移り、秦氏は松尾大社と伏見稲荷大社、賀茂氏は上賀茂神社と下鴨神社を祀るようになります。さらに、松尾の御祭神・大山咋神と下鴨神社の御祭神・玉依姫は夫婦。当社の還幸祭は別称で『松尾の葵祭』とも呼ばれますし、もともと関わりは深いのです」とのことだ。

見どころ②御神水が湧く「亀の井」と境内の滝「霊亀の滝」

「亀の井」には、延命長寿のご利益で名高い御神水が湧いている。酒に入れると腐らないともいわれる名水で、なかには毎日汲みに来る人もいるのだとか。

御神水が湧く亀の井
「よみがえりの水」とも呼ばれる亀の井の御神水

亀の井からさらに奥へ進むと「霊亀(れいき)の滝」という小さな滝もある。

ちなみに、西村さんから「たまに誤解を受けることがありますが、亀の井に湧く御神水は、霊亀の滝の水ではありません。山からの湧き水です」とのコメントも。

霊亀の滝。境内に滝が流れているとは驚きだ
境内に滝が流れているとは驚きだ

亀の井をはじめ各所で亀と鯉を見かけるが、松尾大社においてこれらは神様の使い。太古、御祭神・大山咋神が川を渡る際に、緩流は亀、急流は鯉に乗ったという伝承によるものだ。亀は延命長寿、鯉は立身出世の象徴として信仰される。

松尾大社において亀と鯉は神様の使い
堂々と構える亀と威勢よく滝をのぼる鯉が対照的

見どころ③重森三玲が手掛けた松風苑庭園

松尾大社には、昭和を代表する庭園家・重森三玲(しげもりみれい)が手掛けた4つの庭園がある。

重森三玲は「永遠のモダン」をコンセプトに、庭園を自身の“作品”としてつくり上げた人物。その重森氏が長年にわたる庭園研究の奥義を結集し、この地上に残す最高の芸術作品としてつくったのが同社の庭園だ。庭園は有料エリア。拝観料をお納めしたら、いざ庭園へ。

まずは「曲水(きょくすい)の庭」。

重森三玲が手掛けた曲水の庭
「松風苑(しょうふうえん)三庭」のひとつ、曲水の庭

この庭園は、平安貴族の人々が慣れ親しんだ雅遊の場を表現したと伝わる。王朝文化華やかな平安時代、そして松尾大社が「松尾の猛霊」と称され隆盛を極めた時代の艶やかさや気高さを秘めながらも、庭園としては現代的な造形が斬新である。四方どこから見ても美しい名庭だ。

お次は「上古(じょうこ)の庭」。

重森三玲が手掛けた上古の庭
「松風苑三庭」のひとつ、上古の庭

こちらは、松尾大社にまだ社殿がなかった古い時代の、松尾山山頂に祀られた磐座を模してつくられた。庭の奥、中央の巨岩2つは御祭神二柱を、地面に植えられたミヤコザサは人の立ち入れない高山の趣きを、これを取り巻く多数の石は、随従する諸神の姿を表現している。

続いて「蓬莱(ほうらい)の庭」。

重森三玲が手掛けた蓬莱の庭
「松風苑三庭」のひとつ、蓬莱の庭

蓬莱とは、不老不死の仙界という意味。この庭園は鎌倉期の代表的な回遊式庭園を取り入れたもので、池全体が羽を広げた鶴をかたどっている。

庭園の正面奥を見ると、岩に向かって小さな滝が流れている。これは庭園の滝の様式のひとつ「龍門瀑(りゅうもんばく)」の「鯉魚石(りぎょせき)」という。岩は鯉を暗示しており、そこに流れ落ちる滝とあわせて、全体が鯉の滝のぼりを表現している。

そして「即興之庭(そっきょうのにわ)」。

重森三玲が手掛けた即興之庭
こちらも重森三玲が手掛けた「即興之庭」

松尾大社の庭園は3つでは?と思っていた方は大変鋭い。松尾大社といえば「松風苑三庭」と称される3つの庭園が有名だが、この「即興之庭」もあわせると4つの庭園が存在する。実はこの庭園は当初つくる予定がなかったが、寂しく空いていたスペースに重森三玲が即興でつくったと伝わる枯山水庭園だ。

見どころ④貴重な御神像を常設展示する「神像館」

庭園拝観の合間には、全国でも珍しく御神像を通年公開する「神像館」にも立ち寄ろう。

西村さんに解説していただくと「御神像がつくられるようになったのは、仏教が伝来してから。そもそも『神様には姿形がない』という考えですから、つくられてこなかったのです。現代においても仏像と比べて御神像は数が少なく、通常非公開の場合も多いですが、ここには御神像を21体常設展示しています」。

神像館の内部
有料エリアにある「神像館」の内部へ

入ってすぐに安置されている三体の御神像は、松尾大社の御祭神を表わす。

西村さんによると「この三像が御神像でありながらどことなく仏様を思わせる造形をしているのは、仏師がつくったものだからです。御神像には、仏像と違い男女の区別があり、服装は当時の貴族の装いが参考にされ、等身大以上の大きさのものはないという特徴があります」。

神像館には御祭神を表すとされる御神像三体も展示
左から御子神(壮年像)、大山咋神(老年像)、市杵島姫命(女神像)

さらに西村さんはこう語る。「御神像は湿気などにより傷んでいきますが、基本的には修復しません。そもそも御神像は、あくまでも神様が降りてこられるための“アンテナ”。つまり依り代です。それに、古来むやみに手を加えるものではないという意識もありました」。

神像館に展示される御神像の数々
神像館の御神像もあえて修復していない

「ただし、御祭神の三像は、神仏習合の時代に神宮寺(じんぐうじ/神社の中にある小さな寺)に安置されていた時期があり、人に見せる機会もあったので、例外的に修復されてきれいになっています」。

神像館の御神像のひとつで平安時代初期の作
平安時代初期の作で重文に指定されている

ここで素朴な疑問が。昔の御祭神の御神像が神像館に収蔵されているということは、今の本殿には何が祀られているのだろうか?とたずねると、

「それは内緒(笑)。まれに一般の参拝者の目に触れる機会はありますので、完全極秘というわけでもないのですが。先述のとおり御神像や磐座はそれそのものが神様なのではなく、あくまでも神様が降りてこられるためのアンテナ。だから今の本殿に何を祀っているかは、強いて明らかにするものではないという考えです」。

見どころ⑤酒造の歴史や道具を紹介する「お酒の資料館」

そして、境内無料エリアにある「お酒の資料館」も必訪。松尾大社と酒の関わりや歴史、酒造の工程や道具、酒の文化などをビデオや展示品でわかりやすく紹介している。

どことなく懐かしい酒のラベル展示も

松尾大社のお守りなど授与品にも注目を

境内をじっくりとお参りしたら、お守りなどの授与品も気になるところ。

袋入服酒守、銭亀守、幸運の双鯉守
袋入服酒守1,500円、銭亀守300円、幸運の双鯉守1,500円

お酒好きにイチオシなのは、酒を飲む人のための「袋入服酒守(ふくしゅまもり)」。松尾大社の神様の使いである亀をかたどった約1cmの小さな「銭亀守(ぜにがめまもり)」や、鯉が描かれる「幸運の双鯉守(そうりまもり)」もおすすめだ。

松尾大社の基本情報やアクセス

松尾大社の最寄り駅の阪急松尾大社駅は、嵐山駅から一駅。京都の嵐山観光とあわせて訪れるのも十分可能なアクセスだ。

大阪方面からは、阪急大阪梅田駅→京都線・桂駅で嵐山線に乗り換え→松尾大社駅で所要約50分。

松尾大社の境内は緑豊かで広々としている
かつてはさらに広大な敷地だったというが、現在の境内もかなり広い

広々とした緑豊かな境内は、清々しい空気に満ちている。見どころの多い松尾大社、ぜひゆっくりとお参りしよう。

スポット名松尾大社(まつのおたいしゃ)
料金境内自由(庭園・神像館の拝観は大人500円、学生400円、子ども300円)
時間9:00~16:00(日曜・祝日は~16:30)
問い合わせ075-871-5016
アクセス阪急松尾大社駅下車すぐ
住所京都市西京区嵐山宮町3【MAP
URLhttps://www.matsunoo.or.jp/

この記事を書いたのは… TOKK編集部I

甘いものが大好きなTOKK編集部 I

京都在住。休日の過ごし方はもっぱら京都のまち歩き。美術館や社寺、お笑いライブがとくに好き。花より団子。

阪急沿線情報紙「TOKK」は今年で創刊から50年目を迎える情報紙で、関西私鉄・阪急電車沿線のおでかけとくらし情報を毎月1回、各30万部発行するメディアです。取材のこぼれ話やお店の方から聞いたお話や、くらしの中で気になる情報を毎日更新中です。

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