風情と品格の紅葉。歴史が誘う、京都・大阪・神戸の紅葉名所へ【TOKK2022年11月号】

もみじの下を通って、歴史ある寺社や庭園などに思いを馳せるひと時を。
長い時を超えて愛されてきた名所に出かけよう。

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風情をたたえる紅葉

【池田・久安寺】紅葉を訪ねて曼荼羅(まんだら)に見立てた境内をひとめぐり

初夏のヒラドツツジや梅雨のアジサイ、夏のハス。大阪府池田市にある久安寺は、725年行基開創の古社。年間を通じて美しい花や木々を観賞できる「関西花の寺」でもある。例年11月20日頃から月末にかけて、境内に点在する約100本の紅葉が色づく。東西と北の三方は北摂の山々に囲まれ、その遠い山並みにぽつぽつと散らばる赤や黄の彩りもまた美しい。池田市は全国有数の植木産地であり、境内の植物も檀信徒(だんしんと)の植木職人によって手入れされている。

見どころの一つは、虚空園のバン字池。ほとりには大きなもみじが根をはり、ゆったりと泳ぐ鯉たちに紅葉を振りまく。バンとは梵字(ぼんじ)の一字で、真言密教の教主である大日如来のシンボルであり、「心」を意味している。バン字池を大日如来に見立て、境内全体は曼荼羅を描くように設計されている。阿弥陀堂や薬師堂、地蔵堂などの建築を眺めながらゆっくり散策するのがおすすめだ。虚空園にはこのほか、弘法大師の逸話に基づいて高野山から植樹した三鈷(さんこ)の松や、2億年前に起源をもつジュラシックツリーが配され、こちらも趣深い。

参道のあちこちで紅葉や彫像が顔を出し、歩くほどに発見がある。豊臣秀吉公が「月見の茶会」で腰かけたという腰掛石、樹齢400年を超えるお手植えの榧(かや)の老木など、秀吉公ゆかりのスポットも。北側の奥に新設された仏塔には、6m超の涅槃(ねはん)像が穏やかな表情で寝そべっている。

11月3日からは切り絵の御朱印を授与。楼門に紅葉をあしらったもので、お気に入りの秋景色を透かして見るという楽しみも広がる。秋を装う山々と庭園、建築の調和に心和む名所だ。

「もみじ切り絵ご朱印」1,000円
※11月3日~12月4日限定。
スポット名久安寺
料金300円
時間9:00~16:00
問い合わせ072-752-1857
アクセス阪急池田駅→阪急バス・久安寺停下車すぐ
備考バスは本数が少ないので注意(1時間に1~3本)。
072-739-2002(阪急バス豊能営業所)
住所池田市伏尾町697【MAP
案内「もみじまつり」11月20日10:00~
URLhttps://kyuanji.jp/

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【京都・北野天満宮】菅公も愛した紅葉を秀吉公ゆかりの御土居で

全国天満宮の総本社である北野天満宮。菅原道真公を御祭神とし、学問や芸能など数々の御神徳で崇敬を集めている。紅葉の名所である史跡御土居のもみじ苑には、菅公が宇多上皇の御幸(みゆき)に伴った際に詠まれた歌碑が立つ。

―このたびは幣もとりあへず手向山紅葉の錦 神のまにまに
(急な旅でお供え物〈幣〉を用意できず、手向山の紅葉をお供えします。神の御心のままにお受けください)

紅葉という自然の業に感嘆し、その美を愛でる心が伝わる歌だ。時を超えて現代、紅葉の季節になるともみじ苑は錦秋に染まり、多くの人でにぎわう。

菅公の時代を下り、桃山時代には豊臣秀吉公に篤(あつ)く崇敬された。国宝の御社殿は秀頼公が造営したもので、御本殿と拝殿、石の間、楽の間を連結した日本最古の八棟造り。当時の姿を残す貴重な建築だ。また、秀吉公が境内で開いた大茶会「北野大茶湯」も有名。茶をたしなむ者は身分を問わず参加でき、千利休居士ら希代の茶人や、秀吉公の点てる茶を飲めたという。

史跡御土居のもみじ苑もまた、秀吉公と縁が深い。秀吉公は大規模な都市開発を行い、防塁と水防のための「御土居」で洛中を囲んだ。時代とともに御土居は消えていったが、北野天満宮では鎮守の杜の一部として、今も史跡が遺る。もみじ苑の紅葉はおよそ350本。御土居が苑内の高低差を生み、頭上へも足元へも折り重なるように紅葉が広がるさまは圧巻だ。

また、紅葉の間から御社殿を臨む展望所は必見。御土居は版築工法や石積みなど、当時の技術を使って修復されており、桃山時代に迷い込んだような気分をかき立てる。紙屋川にかかる朱塗りの鶯橋や、紅と緑のコントラストが見事な竹林は絶好の撮影スポット。「三叉(みつまた)の紅葉」は樹齢400年を超える巨木で、秀吉公も愛でていたかと想像するのも楽しい。

スポット名北野天満宮
料金境内無料
時間6:30~17:00
問い合わせ075-461-0005
アクセス阪急西院・大宮各駅→市バス・北野天満宮前停下車すぐ、または阪急西院・大宮・嵐山各駅→嵐電・北野白梅町駅下車 約7分
住所京都市上京区馬喰町【MAP
案内「史跡・御土居のもみじ苑」10月29日~12月4日 9:00~16:00(15:40受付終了)/大人1,000円、小学生以下500円(茶菓子付き)、「もみじ苑ライトアップ」11月12日~12月4日 日没~20:00(19:40受付終了)/料金は上記と同じ
URLhttps://kitanotenmangu.or.jp/

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阪急沿線 紅葉図鑑

京都線

紅葉には町を特別な景色に見せる魔法のような力が備わっているが、京都にかかるその力は格別に強い。歴史が刻まれた寺社建築や苔むした庭園に映える紅葉は、時代を超越するような効果を発揮する。

嵐山を訪れるなら「天龍寺」へ。冷えた空気の中、紅葉を眺める早朝参拝は心洗われるような体験。夢窓疎石により作庭された曹源池庭園は嵐山・亀山・小倉山の借景も美しい。

洛西エリアにも名所が点在。「浄住寺」は参道の石段に舞い散る紅葉が情趣を誘う。黄檗宗(おうばくしゅう)寺院で、本尊の釈迦牟尼仏坐像や諸堂には中国風の意匠が見られる。

© 水野秀比古

浄住寺からほど近くには、竹の寺と呼び親しまれる「地蔵院」が。燃えるような紅葉と常緑の竹林のコントラストが鮮やかで、例年11月下旬に見頃を迎える。

「真如堂」はしっとり佇む三重塔にかかる紅葉が見事。晩秋には、本堂裏に現れる散りもみじのじゅうたんも見逃せない。特別公開される観経(かんぎょう)曼陀羅は、浄土の様子を精緻に描き出した巨大な金色刺繍で一見の価値あり。

長岡京市の山腹に建つ「総本山光明寺」は法然上人ゆかりの寺院。特別入山の期間には境内が錦模様に彩られ、参道に続く紅葉のトンネルは息を飲む美しさ。伽藍の中心である御影堂、平安時代の様式・阿弥陀堂などの建築も圧巻だ。

01 天龍寺【嵐山駅】
紅葉が綾なす夢窓疎石の庭園

スポット名 天龍寺
庭園参拝料一般500円、小中生300円(諸堂の参拝は300円追加)
時間8:30~17:00(受付は~16:50。諸堂の参拝は~16:45〈受付は~16:30〉)
問い合わせ075-881-1235
アクセス阪急嵐山駅下車 約15分
住所京都市右京区嵯峨天龍寺芒ノ馬場町68【MAP
案内「曹源池庭園 早朝参拝」11月12~30日 7:30~
URLhttp://www.tenryuji.com/

02 浄住寺【上桂駅】
唐風の建築と紅葉が醸す美

「秋の特別公開」日時11月23日~12月4日 9:30~16:30(案内は10:00~。受付は~16:00)
料金大人(中学生以上)800円、小学生400円
問い合わせ075-381-6029
アクセス阪急上桂駅下車 約10分
住所京都市西京区山田開キ町9【MAP
案内上記期間以外は9:00~17:00(12~3月は~16:30)
URLhttps://shojo.localinfo.jp/pages/115452/page_201509212131

03 地蔵院(竹の寺)【上桂駅】
晩秋を彩る一面の敷きもみじ

料金一般500円、小中高生300円
時間9:00~16:30(受付は~16:10)
問い合わせ075-381-3417
アクセス阪急上桂駅下車 約13分
住所京都市西京区山田北ノ町23【MAP
URLhttps://www.takenotera-jizoin.jp/

04 真如堂【京都河原町駅】
紅葉を着飾る三重塔の立ち姿

料金境内無料。書院・庭園は大人1,000円、中学生900円(~10月30日と12月5日以降、書院・庭園は大人500円、中学生400円)
時間9:00~16:00(受付は~15:45)
問い合わせ075-771-0915
アクセス阪急京都河原町駅→市バス・錦林車庫前停下車 約5分、または真如堂前停、または浄土寺停下車 約7分
住所京都市左京区浄土寺真如町82【MAP
案内「御本尊御開帳」11月15日
URLhttps://shin-nyo-do.jp/

05 総本山光明寺【長岡天神駅】
カエデの老木が誘うもみじ参道

料金境内無料(11月15日~12月4日は下記参照)
時間9:00~16:30(受付は~16:00)
問い合わせ075-955-0002
アクセス阪急長岡天神駅→阪急バス・旭が丘ホーム前停下車すぐ
住所長岡京市粟生西条ノ内26-1【MAP
備考駐車場なし。公共交通機関を推奨。
案内「紅葉の特別入山」11月15日~12月4日/一般1,000円、中高生500円、小学生以下無料
URLhttps:/hkomyo-ji.or.jp/

【阪急電車】京都方面の秋期列車運行ダイヤについて

2022年秋期は、嵐山発着の臨時列車の運行はありません。

【11月における嵐山臨時交通規制について】
観光ピークが予想される11月19日(土)・20日(日)・23日(祝)・26日(土)・27日(日)の5日間、各日の10時~17時に嵯峨街道(渡月橋北詰~阪急嵐山駅前交差点)南行一方通行規制を実施。
※新型コロナウイルスの感染状況により、規制内容が変更となる場合があります。
詳しくは、下記ホームページへ。

紅葉シーズンの嵐山観光には感染症予防対策をしたうえで、鉄道・バスなどの公共交通機関をご利用ください。

京都観光交通情報:https://www2.city.kyoto.lg.jp/tokei/trafficpolicy/kankochi/
※上記ホームページは11月上旬からご覧いただけます。

神戸線

街なかの日本庭園、海を遥かに臨む都市公園、六甲山系に抱かれた温泉地…。神戸線沿線には紅葉の名所が多いが、その景色は多彩である。山と海に恵まれ、異文化が共生する神戸の紅葉狩りへ出かけよう。

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「神戸市立相楽園」は元町の街なかにありながら、ゆったりと散策が楽しめる日本庭園。大きな池のある池泉回遊式庭園で、マツやクスノキなど常緑の木々に混じって紅葉が秋色を添える。茶室である浣心亭や船屋形といった建築物も見どころで、芝生広場に向かう紅葉の小道も美しい。園内には北野町から移築された旧ハッサム住宅や、カフェ相楽園パーラーなども併せて立ち寄りたい。

有馬温泉街を抜けた先には、「瑞宝寺公園」がある。前身である瑞宝寺は豊臣秀吉公とのゆかりが深く、秀吉公がその紅葉を「時が経つのを忘れるほどに素晴らしい」と褒め称えた逸話から「日暮の庭」として語り継がれてきた。紅葉の期間限定でもみじ茶屋がオープンし、赤い番傘の下でお茶やお菓子をいただける。

「神戸市立須磨離宮公園」は、須磨浦も見える、海にほど近い紅葉の名所。約150mのもみじ道が織りなす錦のトンネルが見事。旧岡崎邸の和室や和庭園との取り合わせも素晴らしい。もみじ観賞会期間中の週末はライトアップが催され、夜の紅葉狩りへ出かけたい。

06 神戸市立相楽園【花隈駅】
日本庭園を引き立てる多彩な赤

料金大人300円、小人(小中生)150円
時間9:00~17:00(入園は~16:30)
休園日木曜休(祝日の場合は開園、翌日休)
問い合わせ078-351-5155
アクセス阪急花隈駅下車 約15分
住所神戸市中央区中山手通5-3-1【MAP
URLhttp://www.sorakuen.com/

07 瑞宝寺公園【神戸電鉄】
木もれ日差す綾錦の園へ

料金入園自由
問い合わせ078-904-0708(有馬温泉観光案内所)
アクセス神戸電鉄・有馬温泉駅下車 約20分
住所神戸市北区有馬町【MAP
案内「有馬大茶会」11月2・3日
URLhttps://www.hyogo-tourism.jp/spot/result/70?c-4=4

08 神戸市立須磨離宮公園【山陽電車】
頭上を彩る紅葉の並木道

料金一般400円、小中生200円
時間9:00~17:00(入園は~16:30。11月19~30日の土・日曜・祝日は~20:00)
休園日木曜休(11月3日は開園)
問い合わせ078-732-6688
アクセス神戸高速線・新開地駅→山陽電車・月見山駅下車 約10分
住所神戸市須磨区東須磨1-1【MAP
案内「第20回 もみじ観賞会」11月19~30日(予定)
URLhttps://www.kobe-park.or.jp/rikyu/

宝塚線

川西周辺のエリアには、源(多田)満仲公とゆかりの深い紅葉の名所が多い。満仲公は清和天皇の曾孫にして、平安時代中期より藤原摂関家に仕え武士の地位を確立し、清和源氏の礎を築いた。

「満願寺」は勝道上人が千手観音を本尊に開基し、のちに清和源氏の祈願所として一族の拠り所となった寺院。山門から金堂へとまっすぐ伸びる石畳の参道があり、境内のあちこちで紅葉が鮮やかに色づく。山門そのものも中国様式を取り入れた明治初期の建築で珍しい。

「能勢妙見山」もまた満仲公が篤く信仰した聖地で、のちに子孫である能勢氏再興の地となった。能勢妙見山までの道のりでは、ハイキングやケーブルカーで遠景近景の紅葉を楽しめる。境内には鳥居や山門周辺、展望台「星嶺」など紅葉スポットが点在。「北極星の森」には、氷河期から続くとされるブナの原生林が広がり、ブナの黄色やもみじの赤が美しいグラデーションを作り出す。

「多田神社」には満仲公が祀られ、「亡くなった後も源氏一門を守る。国内に事変があれば多田院の鳴動をもって知らせる」との遺言がある。またその子である頼光公が家来とともに鬼を成敗し、首を洗ったとされる池が境内に存在するなど、多くの伝承が残る地。拝殿正面の紅葉や連なった鳥居の敷きもみじが美麗で、散策をしながら歴史に思いを馳せるのにおすすめだ。

09 満願寺【雲雀丘花屋敷・川西能勢口駅】
参道の紅葉が趣深い山中のお寺

料金金堂内拝観料:300円、里山入場料:100円
時間9:00~16:00
問い合わせ072-759-2452
アクセス阪急雲雀丘花屋敷駅下車 約30分、または阪急雲雀丘花屋敷・川西能勢口各駅→阪急バス・満願寺停下車すぐ
住所川西市満願寺町7-1【MAP
案内「紅葉ライトアップ」11月上旬~中旬 17:00~21:00、「千本ろうそく」11月20日 17:00~20:00
URLhttps://www.manganji.jp/

10 能勢妙見山【能勢電車】
能勢氏が誕生した北極星信仰の聖地

料金境内自由
時間9:30~16:00
問い合わせ072-739-0991
アクセス阪急川西能勢口駅→能勢電車・妙見口駅→阪急バス(または徒歩)→妙見の森ケーブル→妙見の森リフト・妙見山駅下車 約10分
住所豊能郡能勢町野間中661【MAP
備考妙見の森ケーブル・リフトは毎週水・木曜運休(祝日の場合は営業)。12月5日~冬期運休。
URLhttps://www.myoken.org/

11 多田神社【能勢電車】
赤い橋を渡って満仲公を祀る神社へ

料金境内無料
時間6:00~17:00
問い合わせ072-793-0001
アクセス阪急川西能勢口駅→能勢電車・多田駅下車 約17分、または阪急川西能勢口駅→阪急バス・多田神社前停下車すぐ
住所川西市多田院多田所町1-1【MAP
URLhttp://www.tadajinjya.or.jp/

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