なぜ紅葉する?日本の紅葉は世界一美しい?科学で紐解く紅葉【TOKK2023年11月号】
2023.10.25特集
赤、黄、褐色…など様々な色の紅葉が見られる日本。
紅葉のメカニズムとなぜ紅葉に魅せられるのかを知る紅葉特集。
※紅葉スポットの写真は2022年以前のものです。 ※紅葉の見頃は気象条件により異なりますので、事前にご確認のうえお出かけください。
▼関西の紅葉情報はこちらもチェック▼
【京都の紅葉2023】名所から穴場まで絶景スポット24選。嵐山、洛中、東山、京都市外エリア別
【大阪の紅葉2023】北摂の紅葉の見頃と名所。絶景スポット6選
【神戸~宝塚周辺の紅葉2023】紅葉の名所と穴場スポット8選
今回疑問に答えてくださった先生… 京都府立植物園 樹木係長 樹木医 中井 貞先生
約12,000種類の植物を観賞できる、1924年に開園した日本最古の公立総合植物園・京都府立植物園。「生きた植物の博物館」として多様性を学べる同園にて、樹木などの保全・診断・治療を行い、桜守も務める。好きな樹はサルスベリ。
目次
Q 紅葉をもみじ以外の葉でも呼ぶのはなぜ?
紅葉とは、主に落葉樹が落葉に先立って葉が色づき、古くは秋に色づいた様子を「もみづ(紅葉つ)、もみつ(黄葉つ)」と呼んだことから転じて紅葉=もみじと読むようになったとか。
「日本で紅葉を代表する樹種は、イロハモミジ。カエデ属以外でも秋に色づく植物すべてを広い意味で〈もみじ〉と呼んだと考えられ、カエデは〈もみじ〉の代表と捉えてよいのでは」とのこと。
Q 葉はなぜ落葉する?
葉は光エネルギーを用いて、無機物から有機物を合成し栄養源として生育。光合成が大きな役割で、その光合成の速度が低下する生育に不利な乾季・寒季を乗り越えるための適応が落葉なのだそう。落葉の準備として、葉の付け根に離層という組織が発達し、葉で生産された物質が幹や枝とやり取りされなくなり、葉が色づいていく仕組み。
ちなみに常緑樹も徐々に入れ替わるだけで落葉はあるそうで、特に新芽のふいた後などは、落葉が増えるのだとか。
Q 赤?黄色?紅葉する条件とは
葉に含まれる緑の色素のクロロフィルが、寒くなり日照時間(紫外線)が短くなると分解され、水溶性のブドウ糖や蔗糖(しょとう)などの糖やアミノ酸類が蓄積される。この過程で葉の色は赤や黄色、褐色に変化していくことが、紅葉する条件なのだそう。
植物の葉には、元々ルテインやカロテンなど黄の色素となるカロテノイドも含まれるが、緑色に見えているのは、葉緑体(光合成を行う植物の器官)の中に含まれるクロロフィルが多いから。「紅葉は葉緑体を保護するためと考えられていて、元々どの色になる葉にもカロテノイドやタンニン、クロロゲン酸などは含まれています。この量によっては、本来紅葉する葉もアントシアニンの生成が少なくて、褐葉になることもあるんですよ」と中井さん。
同じ植物の葉なのに一つずつ色味が違うのは、条件もあるが植物の個性のようで興味深い。そんなところに注目しながら観賞するのも楽しい。
紅葉の仕組み
紅葉
赤の色素は春や夏には存在せず、葉緑体の代わりに過剰な光を吸収するアントシアニンが発生したことによるもの。日の最低気温が8℃以下になると紅葉がはじまり、5~6℃以下になるとより紅葉が進行する。
● 主な種類…カエデ
黄葉
黄色の色素は、秋に葉緑素であるクロロフィルが分解することで元々含有されていた分解速度の緩やかなカロテノイドが見えてくることによる。
● 主な種類…イチョウ
褐葉
タンニン性の物質や酸化重合したフロバフェンと称する褐色物質の蓄積が目立つため。
● 主な種類…ブナ、ケヤキ
Q 世界一美しい? 日本の紅葉
「日本は、北半球の亜熱帯から亜寒帯までの多様な自然環境を有していて、紅葉が美しくなる5つの条件を備えた地だからと考えられます」と中井さん。高原、渓谷、標高の高い湖沼や滝が紅葉の名所として多いのは、この5つの条件を満たしているから。
【美しい紅葉の5つの条件】
(1)昼夜の気温の差が大きい
(2)十分な日照
(3)平地より斜面
(4)空気が汚れていない
(5)適度な水分
また京都に紅葉の名所が多いわけを「京都は歴史的な日本庭園が多く、そこには秋の紅葉も表現されてきました。世界的に見ても稀有(けう)な自然条件と、文化的な環境が相まって今日の美しい紅葉の景観が残されているのでは」とのこと。沿線に世界一とされる紅葉が見られる喜びを味わいに紅葉狩りへ訪れてみたい。
阪急沿線で見られる主な紅葉9種
ナンキンハゼ
トウダイグサ科。落葉高木で、紅葉が美しく街路樹や庭木、盆栽などに用いられる。果実の種子の油には毒があるので要注意。
ハゼノキ
ウルシ科。ヒマラヤ・中国・日本の山に自生する。かつては果実からロウを採って工業用に使われていたことも。
イロハモミジ(タカオカエデ)
ムクロジ科。一般的にモミジと呼ばれる、秋の紅葉観賞の中心的存在。7つに裂けた葉を「いろは…」と数えたことに由来する。和名は京都の紅葉の名所「高雄」から。
オオモミジ
ムクロジ科。イロハモミジやヤマモミジと似ているが、葉のふちのギザギザが細かくそろっているのが特徴。
トウカエデ
ムクロジ科。中国長江流域を中心に分布する落葉高木。生長がはやく樹高は15m以上になるものも。
フウ
フウ科。台湾原産で高さ40mにもなる高木。茎の節に1枚の葉が互い違いにつく互生(ごせい)で、果実は球状の集合果が垂れ下がるようにつくことが特徴。
ニシキギ
ニシキギ科。日本・朝鮮半島・中国の温帯暖帯にかけて分布。板状の翼のついた枝から対になって生じた紅葉が美しく、庭木・生垣などに用いられる。
イチョウ
イチョウ科。裸子植物に属する落葉高木。太古の時代から多くの種があったとされ、他に例のない特質を持つことからイチョウ科が設けられている。
ドウダンツツジ
ツツジ科。日本の伊豆半島以西の山地の岩場に自生する落葉低木。庭園や公園の植栽などによく用いられる。
中井さんがいる京都府立植物園で、世界中のカエデ属の紅葉を愛でよう
植物の多様性を知ることができる同園。国内最大級のフウや色づいた針葉樹のスマスギ、国内初のシナマンサクなど、ほかでは見られない様々な樹種の紅葉を観賞することができるのも魅力。紅葉ライトアップのほか職員の案内による紅葉散策ツアーも人気。
スポット名 | 京都府立植物園 |
料金 | 一般200円、高校生150円、中学生以下無料 |
時間 | 9:00~17:00(入園は~16:00) |
休園日 | 無休 |
問い合わせ | 075-701-0141 |
アクセス | 阪急烏丸駅→地下鉄・北山駅下車すぐ |
住所 | 京都市左京区下鴨半木町【MAP】 |
インフォ | 紅葉ライトアップ 11月10日~12月3日 日没~20:00(最終入園は~19:30) |
URL | https://www.pref.kyoto.jp/plant/ |
中井さんおすすめ! 紅葉スポット
【長岡天神駅】紅葉庭園「錦景苑」は名園!「長岡天満宮」
2007年に造園された新しい庭園。滝を覆うように大小の紅葉が錦を織り成し、見事な紅葉を楽しむことができる。
今年は参道を約300基の灯ろうで照らす「花灯路」を開催。
スポット名 | 長岡天満宮 |
料金 | 境内無料 |
時間 | 9:00~17:00 |
問い合わせ | 075-951-1025 |
アクセス | 阪急長岡天神駅下車 約10分 |
住所 | 長岡京市天神2-15-13【MAP】 |
インフォ | 「ライトアップ」11月18日~12月3日 夕方~20:00、 「京都西山・長岡天満宮花灯路」11月18日~12月3日 16:30~20:00 |
URL | https://nagaokatenmangu.or.jp/ |
【長岡天神駅】もみじ参道の絶景は息をのむほど「総本山光明寺」
薬医門を中心としたもみじ参道は両側に250本ものカエデの古木が枝を広げており、秋には美しい錦のトンネルに。
スポット名 | 総本山光明寺 |
料金 | 境内無料(11月11日~12月3日は下記参照) |
時間 | 9:00~16:30(受付は~16:00) |
問い合わせ | 075-955-0002 |
アクセス | 阪急長岡天神駅→阪急バス・旭が丘ホーム前停下車すぐ |
住所 | 長岡京市粟生西条ノ内26-1【MAP】 |
備考 | 駐車場なし。公共交通機関を推奨。 |
インフォ | 「紅葉の特別入山」11月11日~12月3日/一般1,000円、中高生500円、小学生以下無料 |
URL | https://komyo-ji.or.jp/ |
様々な樹木の紅葉を楽しめる
【山田・南茨木・蛍池駅】壮観な黄金色のプラタナス並木は必見!「万博記念公園」
スポット名 | 万博記念公園 |
料金 | 大人260円、小中生80円 |
時間 | 9:30~17:00(入園は~16:30) |
休園日 | 水曜休(祝日の場合は開園、翌日休。紅葉まつり期間は無休) |
問い合わせ | 06-6877-7387 |
アクセス | 阪急山田・南茨木・蛍池各駅→大阪モノレール・万博記念公園駅下車 約7分 |
住所 | 吹田市千里万博公園【MAP】 |
インフォ | 「紅葉まつり」11月3日~12月3日 |
URL | https://www.expo70-park.jp/ |
【神戸三宮駅】イロハモミジにメタセコイアが織りなす錦絵「神戸市立森林植物園」
スポット名 | 神戸市立森林植物園 |
料金 | 大人300円、小中生150円 |
時間 | 9:00~17:00(入園は閉園の30分前まで) |
休園日 | 水曜休(祝日の場合は開園。イベント期間中は無休) |
問い合わせ | 078-591-0253 |
アクセス | 神戸高速線・新開地駅→神戸電鉄・北鈴蘭台駅→無料送迎バス、または阪急神戸三宮駅→市バス・森林植物園前停下車すぐ |
住所 | 神戸市北区山田町上谷上字長尾1-2【MAP】 |
備考 | 「森林もみじ散策」10月28日~12月3日。「ライトアップ」11月3日~12月3日の土・日曜・祝日は~19:30(最終入園は~19:00) |
URL | https://www.kobe-park.or.jp/shinrin/ |
【お知らせ】
みなさんのお気に入りの紅葉写真に「#もみじtokk」をつけてX(旧Twitter)またはInstagramにアップしてください。公式アカウントにてご紹介します。
▼関西の紅葉情報はこちらもチェック▼
【京都の紅葉2023】名所から穴場まで絶景スポット24選。嵐山、洛中、東山、京都市外エリア別
【大阪の紅葉2023】北摂の紅葉の見頃と名所。絶景スポット6選
【神戸~宝塚周辺の紅葉2023】紅葉の名所と穴場スポット8選
- 掲載店舗や施設の定休日、営業時間、メニュー内容、イベント情報などは、記事配信日時点での情報です。新型コロナウイルス感染症対策の影響などにより、店舗の定休日や営業時間などは予告なく変更される場合がありますのでご了承ください。また、お出かけの前に各店舗にご確認いただきますようお願いいたします。
- 感染症対策を行いながら、取材・撮影をしております。
- 価格は記事配信日時点での税込価格です。