生田神社は神戸にある縁結びの名所。七五三やお宮参りにも人気
2023.07.28おでかけ
神戸・三宮の繁華街にある生田神社。「縁結びのいくたさん」として親しまれ、1,800年以上の歴史が人と人との縁を今につないでいる。
境内の「生田の森」の豊かな緑は人々の心を癒やし、最近はフォトジェニックな「切り絵御朱印」や、地元アパレルブランドとコラボした授与品などでも注目を集めている。
今回は、権禰宜(ごんねぎ)の澤田政彰(さわだまさあき)さんに、生田神社のご利益や見どころについてうかがった。
目次
生田神社の歴史とご利益
飲食店やゲームセンターが立ち並ぶにぎやかな通りを抜ける。木造りの「二の鳥居」をくぐり、朱塗りの「三の鳥居」を仰ぐと、空気が一変する気がした。
生田神社は『日本書紀』に「創建201年」という記述が残る古社。文献によると、神功(じんぐう)皇后が朝鮮出兵からの帰路、今の神戸港あたりで船が進まなくなり占いをしたところ、「稚日女尊(わかひるめのみこと)」が現れ、「私は活田(いくた)に居たい」と告げたため、ご祭神として祀ったのが始まりとされる。
稚日女尊は「稚く(わかく)みずみずしい美しい太陽の女神様」。「万物を生み育て、万物の成長を加護する」とされ、人々の豊かな生活や繁栄、健康長寿など、さまざまなご利益があると伝わる。また、神服を織っていた「機織りの神様」でもあることから、糸と糸を織りなすように人と人をつなぐ「縁結びの神様」として、人々の心の拠りどころとなってきた。
一方、源平合戦の戦場になったり、戦災や水害、震災に遭ったりと数々の苦難に直面してきた。そのたびに見事に再建され、「蘇(よみがえ)りの神社」としても信仰を集めている。
生田神社の見どころ
境内には、朱色が目に鮮やかな美しいフォルムの「楼門」や「社殿」をはじめ、アスリートから人気を集める狛犬や、四季を感じられる「生田の森」、興味深い摂社・末社やパワースポットといった見どころが点在している。「水みくじ」を引いてから手に携えて、散策するのがおすすめだ。
楼門
「三の鳥居」をくぐり、「楼門」を見上げる。高さは10メートルほどだろうか。その立派な造りに圧倒されながら近づく。楼門とは、2層造りで下層に屋根のない門を指す。1974年の造営で、朱塗りの柱と白い壁のコントラストが美しい。
元旦には、この楼門で和太鼓をたたく伝統がある。午前零時に宮司が打つ太鼓の音に呼応して、楼門上の打ち手たちがリズミカルに和太鼓の演奏を始め、初詣客を迎え入れる。
1995年1月の阪神・淡路大震災で神社が被害を受けた翌年の節分には、米ロック歌手のシンディ・ローパーさんが着物姿でこの楼門前に組まれたやぐらに上り、豆をまいた。境内には1万5000人を超える人々が訪れ、神戸の人たちを元気づける舞台となった。
社殿(拝殿&本殿)
「拝殿」に近づくと、神前を守る狛犬の筋骨隆々な姿が目を引いた。マッチョな理由は判然としないが、引き締まった体つきが、アスリートらから人気なのだという。
そんな狛犬に見守られながら、拝殿へと進む。阪神・淡路大震災で倒壊したものの、わずか1年半で再建され、「蘇りの社」を象徴する建築物だ。
拝殿には「舞台」と呼ばれる吹き抜けの石畳の空間がある。屋根代わりの幌(ほろ)から日の光が透け、明るく感じる。ここでは年間数百組というカップルが神前結婚式を挙げるほか、多くの家族連れが七五三やお宮参りに訪れ、厳かに神事が執り行われている。
「舞台」の奥に鎮座するのが、御神体が祀られている「本殿」。その前の「祝詞(のりと)の座」で神職は「神様と人々をつなぐ仲介役」として日々、さまざまな祭事を行っている。毎朝、神様にお食事を捧げる「御日供(おにっく)祭」のときにも、「コロナ禍が早く収束し、皆さんが健康に過ごせますようにと神職一同お祈りしていました」(澤田さん)。
この拝殿と本殿を合わせた「社殿」は、奈良の春日大社に代表される「春日造」と呼ばれる建築様式。空襲で焼けて1959年に再建された際、この様式へと造り替えられた。
生田神社では25年に一度、屋根を葺き替えるなどの「式年造替」を行っており、現在の社殿は、2009年に装いを新たにした。柱は今も色鮮やかに拝殿を彩り、本殿の扉では金色の飾りが、きらびやかに輝いていた。
いざ、生田の森へ
参拝を終えて、境内の散策へ。
「縁結び」や「筋力アップ」、「再生」などさまざまなご利益のある摂社・末社やパワースポットがあると聞き、境内をぐるりと一周することにした。
すると、「先に『水みくじ』を引いておくといいですよ」と澤田さんからアドバイスが。水みくじは、水に浸すと文字が浮かび上がる人気の恋占い。聞けば、おみくじを引くのは楼門そばにある授与所、実際に占うのは境内の奥にある「生田の森」の中だという。
授与所に向かい、重ねられた束から水みくじを1枚選んだ。ピンク地に白色のハートや桜の模様が描かれた可愛らしいデザイン。縁結びにまつわる「色」「願い事」「縁談」と書かれた欄にメッセージが浮き出る仕組みだ。いったいどんな文字が。期待が高まる。
水みくじを手に携え、拝殿に向かって左側の参道を歩いていくと、左手に「生田の池」が現れた。
池に浮かぶ小さな島に建つのが「市杵島(いちきしま)神社」。祀られている市杵島姫命(弁財天)は「美の女神」とあって女性の人気を集める。
参道に戻って少し進んだところに「戸隠神社」がある。御祭神は手力男命(たぢからおのみこと)。天の岩戸に隠れた天照大神(あまてらすおおみかみ)がわずかに顔をのぞかせた際、その隙間をこじ開けたとされる力持ちの神様だ。身体健全、筋力増進がご利益とあって、健康を願う人や体を鍛えたい人にぴったりの神社だ。
その隣には商売繁盛の神様「蛭子神社」が建つ。ここの狛犬は、ウサギのような長い耳がちょっとかわいい。
さらに先に歩くと「生田の森」の入口があった。一歩足を踏み入れると、凜とした雰囲気が漂う。濃い緑からの木漏れ日が美しい。
見上げると木々の合間から、周囲のビルがちらちらと見える。確かにここは繁華街の真ん中。樹齢500年とも800年とも言われるクスノキの御神木をはじめ、多くの樹木が茂る空間に身をおいていると、どこか癒やされる感じがしてきた。
「生田の森」の面積は約1,600㎡。テニスコートに例えると約6面分の広さがある。何度も焼野原になったこの地で生き残った巨木や、新しい命を生み出す木々のパワーを感じながら進むと、1つの石碑が目にとまった。
ん? かまぼこの発祥地?
碑文には「201年、神功皇后が旅の途中、生田の杜ですりつぶした魚肉を鉾の先に塗り、焼いて食べたことがかまぼこの始まり」という趣旨の伝説が記されている。たき火に鉾の先をかざしている人たちの絵も添えられている。
生田神社がかまぼこ発祥の地であるという伝説にちなみ、この石碑の除幕式では、当時のかまぼこ作りを再現するイベントも開催されたそうだ。
水に浸すと文字が浮かび上がる水みくじ
森の奥に鎮座するのが、安産・万物成長にご利益がある「生田森坐社(いくたのもりにいますやしろ)」。その近くに、水みくじの占い場があった。
持ってきたおみくじを手に持ち、「金龍泉」と名付けられたその小さな池のほとりにかがんで、いざ!
ふわっと水面に浮かべた瞬間、たちまち文字が浮かんできた。涼しげでかわいくて、恋占いにぴったり……と、のんびり眺めていると、あっという間に文字がにじみ始める。
大慌てで池から引き上げて読んでみた。浮き上がってきたのは「中吉」の文字。「願い事」には「人のアドバイスに耳を傾けて」と書かれている。「総合恋愛運」はビミョーな「4分咲き」だった。
実は、この水みくじにも、神社から参拝客へのある「思い」がこめられている。「生田の森に足を運んでいただくきっかけにしたかったんです」と澤田さん。森の素晴らしさに気づいてもらえるよう、あえて森の奥に池を造り、占いの場所としたのだという。
かつて源平合戦の戦場となり、清少納言の『枕草子』にも登場する鎮守の森。一時期は、神聖な場所として立ち入りが禁止されていた。「参拝される方々がゆっくりと過ごし、心身をすっきりとできる場所に」と2001年に井戸を掘り、小川や遊歩道、東屋などを整備。金龍泉もそのときに造られた。
「生田の森は、神社で一番のおすすめスポット。ぜひ、都会のオアシスで癒されて」と澤田さんは話す。「境内に残る自然を、四季を身近に感じてほしい」というのが願いであり、生田の森はその思いを凝縮しているのだという。マイナスイオンたっぷりの空気を存分に吸い込んで、森をあとにした。
再び参道に出てきて、ふと脇を見ると鳥居がずらり。「稲荷神社」だ。数多くの鳥居を「通る」ことで、願いごとが「通る」とされることから、恋愛成就を願う人も多い。水みくじでは「4分咲き」と出た私の運勢。「満開」になるよう、改めてお願いしておくことにした。
生田神社の授与品(御朱印・ファミリアコラボ・お守り)
近年、注目を集めているのが華やかな御朱印と、かわいいお守りだ。さまざまな授与品は、参拝客の幸せを願う生田神社の思いが詰まっている。
特別感あふれる御朱印
御朱印はシンプルな直書き以外に、月ごと、季節ごとといった複数の限定版がある。ゴージャスかつ繊細なデザインは、まさに芸術作品。
例えば、季節ごとにデザインが変わる「四輝(しき)朱印」の『夏』は、幻想的に輝く社殿を中央に、神戸の街を照らす花火が色鮮やかに配されている。
「切り絵御朱印」の『夏詣』は、境内に咲く向日葵が太陽に照らされ、明るい輝きに満ちあふれている様子が細やかな切り絵で表現されている。
どれも美しくて選ぶのに迷ってしまうが、今回は「切り絵御朱印『夏詣』」をチョイスした。手にした瞬間、ほぉっとため息が出る。青空をバックにかざすと切り絵が浮き彫りになり、ますます豪華に見える。
生田神社が限定版を手がけるようになったきっかけは、元号が平成から令和にかわったタイミングだった。記念に100年前のデザインを復刻した御朱印を授与したところ、初日に8000人が列を作った。その人気ぶりに、これまで以上に神社の魅力を伝えたいと考え、特別感のある御朱印をデザインし始めたという。
これを手がけるのは、実は神職の男性2人。コンセプトは神社が大切にしている自然と四季。その思いを伝えたいという一心で取り組んでいるそう。コロナ禍に入り、参拝できない人にも神社を身近に感じてもらえるようにと工夫しています」(澤田さん)。
この限定版を楽しみに、毎月訪れる参拝客も増えているそうだ。
ファミリアとコラボしたお守りや御朱印帳、絵馬
楼門わきの授与所には、絵馬やお守りがずらりと並んでいる。眺めていると、キュートな白クマに目が釘付けになった。
神戸のベビー・子ども関連ブランド「ファミリア」と生田神社がタッグを組み、2023年6月に授与を始めたばかりの祈願絵馬「はぐくま」だ。ネーミングには、親グマが子グマを優しく抱きしめる「ハグ」、幅広い世代の人の「願いが『はぐくま』れるように」などの思いがこめられているという。そのかわいい表情が参拝者の心をとらえています」と澤田さん。
ファミリアと同神社のコラボは2021年、コロナ禍の神戸を元気づけようと始まった。ファミリアを象徴するクマとチェック柄に神社の社紋の八重桜があしらわれたお守り「育守(はぐくまもり)」や、社殿の前で手を合わせる親子のクマの愛らしい御朱印帳などが授与されている。
幸守「八重の糸」と縁結び守「たまき」
安産や金運祈願といったさまざまなお守りの中でも、抜群の人気を誇るのが「幸守(さちまもり)『八重の糸』」と、縁結び守「たまき」。
「八重の糸」は、社紋の八重桜が刺繍されたレース素材の美しいお守り。幸せな日々を織りなし、幾重にも彩りのある人生になりますようにという思いが込められている。
「たまき」とは奈良時代以前、玉などを紐に通しお守りとして使われていたというブレスレットのこと。ペアで身につけて生田の森の御神木に手を添えて祈願するのが良いそうだ。
生田神社のアクセス(最寄り駅や駐車場情報)
生田神社の最寄り駅は、阪急神戸三宮駅。阪急神戸三宮駅の西改札口を出て、飲食店が並ぶ北側の通りへ。西に100メートルほど進み、交差する「いくたロード」を北へと真っ直ぐ進むと、正面に「二の鳥居」が見えてくる。神戸三宮駅から徒歩10分ほどだ。
乗用車の場合は、生田神社には駐車場もある。
駅からのアクセスも抜群。都会にありながら自然豊かな生田神社で、ゆっくりと癒やされてみては?
生田神社の基本情報(拝観時間や料金など)
スポット名 | 生田神社(いくたじんじゃ) |
料金 | 境内自由 |
時間 | 7:00~17:00(お札授与・御朱印受付は9:00~) |
問い合わせ | 078-321-3851 |
アクセス | 阪急神戸三宮駅から徒歩約10分 |
住所 | 神戸市中央区下山手通1-2-1【MAP】 |
URL | https://ikutajinja.or.jp/ |
神戸周辺のおすすめランチ・カフェ
生田神社の最寄り駅は、阪急神戸三宮駅。独自の食文化が育まれてきた神戸には、おいしいグルメのお店が多数。あわせて神戸のランチ・カフェもぜひチェックしてみて!
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