<祇園祭編>伝統と食。歴史ある祭りの食文化に注目【TOKK2024年7月号】


毎年7月1日から31日まで開催される祇園祭。祇園祭の見どころと共に、祭りの担い手たちが食べる伝統食から地元のお店で購入できる縁起物まで、祭りゆかりの食べものを紹介。

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<天神祭編>伝統と食。歴史ある祭りの食文化に注目

※掲載行事や施設の定休日、営業時間などは予告なく変更される場合があります。また、荒天時は行事が予告なく中止になる場合があります。

疫病退散を祈願する京都の夏の一大祭り

八坂神社の祭礼「祇園祭」は、千年以上続く京都の夏の風物詩。全国に疫病が流行した869年、神泉苑に当時の国の数66カ国と同じ66本の矛(ほこ)を立て、祇園社(現在の八坂神社)から神輿を迎えて災難厄除を祈願した「祇園御霊会(ごりょうえ)」が起源とされる。

祇園祭では、1カ月にわたり様々な神事が行われる。宵山が始まると、祇園囃子の音色が響くなか、夕方から山鉾の駒形提灯が灯(とも)り、辺り一帯が祭りムード一色に。

宵山の期間中は、各山鉾町にて懸装品や屏風が公開されたり、オリジナルの縁起物が授与されたりと楽しみ方は多彩。

そして祭りのハイライトは、山鉾巡行と神輿渡御(とぎょ)。前祭(さきまつり)では23基、後祭では11基の豪華絢爛(けんらん)な山鉾が京都市街地を巡行し、神輿渡御に先立つ露払いとして都大路を清める。

左)前祭 山鉾巡行、右)後祭 山鉾巡行
壮麗な懸装品が彩る山鉾は「動く美術館」とも称される。巨大な山鉾が方向転換する「辻廻し」は迫力満点。

その後、八坂神社御祭神の御神霊を遷(うつ)した3基の神輿が、威勢の良い掛け声と共に氏子地域を渡御し、疫病退散を祈願する。今年も無病息災の願いを込めて、現地で活気に満ちた祭りの風情を体感したい。

左)神幸祭(神輿渡御)、右)還幸祭(神輿渡御)
神幸祭、還幸祭の「神輿渡御」では、神輿を高々と掲げる「差し上げ」や神輿を回転させる「差し回し」も見どころ。
花傘や舞妓を乗せた曳(ひ)き車、獅子舞、鷺(さぎ)踊など約1,000人の華やかな行列が巡行する「花傘巡行」。

また、祇園祭はかつて「鱧(はも)祭」とも称された。祇園祭が行われる7月は、鱧が旬を迎える時期。鱧は生命力が強く、輸送や冷蔵の技術が発展途上だった時代にも、遠方から京都市内に生きたまま運ぶことができた。そのため、暑い夏の滋養強壮食材として重宝され、今も夏の味覚として愛されている。ほかにも、氏子や関係者は祇園祭の間きゅうりを食べない風習があるなど、祇園祭にまつわる食文化は興味深い。祭りの行事と共に、伝統ある食べものにも注目してみて。

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山鉾巡り・宵山・山鉾巡行

場所阪急烏丸駅周辺【MAP

山鉾巡行・花傘巡行

場所阪急京都河原町駅【MAP
備考阪急京都河原町駅山鉾巡行・花傘巡行9山鉾巡行の観覧は、阪急烏丸駅→地下鉄・烏丸御池駅、または京都市役所前駅の利用も便利。

神事・祭礼

場所八坂神社
問い合わせ075-561-6155
アクセス阪急京都河原町駅下車 約8分
住所京都市東山区祇園町北側625【MAP

祇園祭山鉾連合会からのお願い

※会場の混雑が予想されますので、体調不良の方は無理なご来場をお控えください。
※ごみのお持ち帰りにご協力お願いします。
※食べ歩きはご遠慮ください。

祇園祭の主なスケジュール

7月1日~18日吉符入[各山鉾町]
7月1日長刀鉾町御千度[八坂神社]
7月1日~11日二階囃子[各山鉾町(鉾・曳山のみ)]
7月2日くじ取り式[京都市役所 市会議場]
山鉾町社参[八坂神社]
7月3日神面改め[船鉾町]
7月5日長刀鉾稚児舞披露[長刀鉾町]
7月7日綾傘鉾稚児社参[八坂神社]
7月10日~14日前祭山鉾建て[前祭各山鉾町]
7月10日お迎提灯[氏子区内]
神輿洗式[四条大橋]
7月12~13日前祭山鉾曳初・舁(かき)初
[前祭各山鉾町(鉾・曳山、一部舁山)]
7月13日長刀鉾稚児社参[八坂神社]
久世稚児社参[八坂神社]
7月14日~16日前祭宵山[前祭各山鉾町]
7月15日斎竹(いみだけ)建[四条麩屋町]
宵宮祭[八坂神社]
7月16日献茶祭[八坂神社]
7月17日前祭山鉾巡行[氏子区内]
くじ改め[四条堺町]
神幸祭 (神輿渡御)[八坂神社~御旅所]
7月18日~21日後祭山鉾建て[後祭各山鉾町]
7月20日~21日後祭山鉾曳初・舁初
[後祭各山鉾町(鉾・曳山、一部舁山)]
7月21日~23日後祭宵山[後祭各山鉾町(鉾・曳山のみ)]
7月23日煎茶献茶祭[八坂神社]
護摩焚き[役行者町]
7月24日後祭山鉾巡行[氏子区内]
くじ改め[寺町御池]
花傘巡行[下京中学校成徳学舎~八坂神社]
還幸祭(神輿渡御)[御旅所~八坂神社]
7月25日狂言奉納[八坂神社]
7月28日神輿洗式[四条大橋]
7月29日神事済奉告祭(しんじずみほうこくさい)[八坂神社]
7月31日疫神社夏越祭(えきじんじゃなごしさい)
[八坂神社境内疫神社]

独自の食文化も祇園祭の伝統の一つ

祇園祭ゆかりの食べものの一つが、神輿渡御で中御座(なかござ)を担ぐ三若神輿会の「みこし弁当」。輿丁(よちょう)と呼ばれる神輿の担ぎ手が、神輿渡御の休憩中に夜ごはんとして食べる。

みこし弁当は、塩水でしめた白飯、梅干、たくあん、ゴマを竹の皮で包んだシンプルな内容。

当日の明け方、輿丁約100人が会所に集まり、7月17日は2,800食、24日は3,500食を10時半頃までかけて手作りする。白飯の湯気が立ちのぼり、木型に詰めた白飯を竹の皮に勢いよく叩きつける音がバン!と鳴り響く空間で、一気に弁当が作られていく様は圧巻。

弁当作りは、具材を切る人、竹の皮を敷く人、白飯を型に詰めて叩きつける人、具材を載せる人など分業制で行う。

味も好評で「力仕事の合間に食べるので格別においしい」、「食べると力が湧く」、なかには「この弁当のために神輿を担いでいる」と言う人もいるほど。同会の近藤会長によると「みこし弁当は一般の方には販売していませんが、私たちにとっては、これも祇園祭の大切な伝統の一つ。輿丁さんの楽しみでもあり、これがないと神輿は担げません。今後も継承していきたいと思っています」とのこと。

できあがった弁当は、輿丁約800人が1人2個ずつ食べるほか、お世話になった関係者に縁起物として配る。

また、祇園祭期間中、山鉾の一基である函谷鉾(かんこぼこ)では町内会所に神殿をしつらえ、八坂神社の御祭神・祇園牛頭天皇(ごずてんのう)を祀(まつ)り、昔から変わらぬ神饌(しんせん)を供える。そして7月1日、八坂神社の神官を招いて「吉符入」式を務め、祭りの無事と各人のお役目遂行の契りに、神様のおさがりとして御神酒と撤饌(てっせん)のスルメ、昆布をありがたく頂戴するそう。また、三宝に供えられた神饌の大きな紅白の鏡餅は、吉符入の数日後に撤饌として関係者に振舞われる。祭りの担い手にとって、お供え物に加えて各種の行事やしきたり、所作を変えることなく粛々と継承していくことが大切な事柄なのだという。

函谷鉾では会所に設けた神殿に様々な神饌をお供えする。鏡餅は直径50cmほどのビッグサイズ。

※みこし弁当は販売されていません。関係者以外は食べられませんのでご了承ください。

祇園祭ゆかりの和菓子

神前に奉納される稚児餅(ちごもち)「中村楼 二軒茶屋」

「稚児餅」5本入り2,300円。イートインは2本(お茶付き)1,540円

餅に竹串を刺し粗味噌を塗って焼いたもので、食べると夏やせしなくなり、疫病除けになるとの言い伝えがある。7月13日早朝、八坂神社の神前に稚児餅が奉納され、同日の「社参の儀」の後には、店にお稚児さんを招いて稚児餅や茶を振る舞いもてなす。7月14~31日の販売。

店名中村楼 二軒茶屋
時間11:00〜18:00
定休日水曜休
問い合わせ075-561-0016
アクセス阪急京都河原町駅下車 約13分、または阪急京都河原町駅→市バス・祇園停下車すぐ
住所京都市東山区祇園八坂神社鳥居内【MAP
URLhttp://www.nikenchaya.jp/

⇒こちらもチェック!祇園祭ゆかりの伝統菓子、中村楼 二軒茶屋の「稚児餅」。焼き立てを味わってみて

無病息災の和菓子、行者餅(ぎょうじゃもち)「柏屋光貞」

「行者餅」3個入り1,350円、5個入り2,250円、10個入り4,500円

山椒が香る白味噌あんと求肥を、薄いクレープ状の生地で包んだもので、同店の初代が山伏としての修行中、お告げに従って作ったという菓子。役行者山(えんのぎょうじゃやま)に供え、知人にも分け与えたところ、皆が疫病を免れて以来、無病息災の霊菓として喜ばれたとの伝承が残る。販売は7月16日のみ。

店名柏屋光貞(かしわやみつさだ)
時間10:00〜18:00
定休日日曜・祝日休 ※不定休あり。
問い合わせ075-561-2263
アクセス阪急京都河原町駅下車 約14分、または阪急京都河原町駅→市バス・東山安井停下車すぐ
住所京都市東山区安井毘沙門町33-2【MAP
URLhttps://www.instagram.com/kashiwamitu1806/

⇒こちらもチェック!祇園祭ゆかりの伝統菓子、柏屋光貞の「行者餅」。販売は年に1日のみ

占出山(うらでやま)ゆかりの吉兆あゆ「大極殿本舗 本店」

「若あゆ」1匹243円(占出山町限定販売の「吉兆あゆ」は5匹入り1,500円)

5月中旬~9月中旬に販売される、求肥をカステラ生地で包んだ涼菓「若あゆ」。7月13~16日のみ、若あゆを竹の皮で包んだ「吉兆あゆ」を占出山町で限定販売(大極殿本舗では販売しないので注意)。占出山の御神体・神功皇后が鮎を釣り、戦勝の兆(きざし)とした説話にちなむ。

店名大極殿本舗 本店
時間9:30〜18:00(喫茶は10:00~17:00 LO)
定休日水曜休(6月~祇園祭期間中は無休)
問い合わせ075-221-3533(吉兆あゆについては075-221-3323)
アクセス阪急烏丸駅下車 約4分
住所京都市中京区高倉通四条上ル帯屋町590【MAP
備考「吉兆あゆ」の販売は占出山町(錦小路通烏丸西入ル)のみ。
大極殿本舗では販売・予約受付はされません。
URLhttps://www.instagram.com/daigokuden.honpo/

祇園祭 詳細マップ&行事案内

祇園祭特別号miniTOKK ミニ・トック「祇園祭ガイドマップ」7月1日より配布!(予定)
特設サイトも7月1日公開予定。

配布場所
阪急烏丸・京都河原町駅ほか阪急主要駅

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  • 感染症対策を行いながら、取材・撮影をしております。
  • 価格は記事配信日時点での税込価格です。

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