物語のある和菓子。知ることで深まる銘菓の魅力【TOKK2024年2月号】
2024.01.25特集
歴史と伝統、そして季節の訪れを気付かせてくれる和菓子。
京都・大阪・兵庫、阪急沿線にある名店や銘菓のストーリーに触れ、店を訪ね、“和菓子の今”を感じてみて。
目次
和菓子の『季節』
五節句や大寒、立春といった二十四節気を用いて自然の豊かさや季節の移ろい、伝統を表現する和菓子。特に上生菓子はその美しさや菓銘の繊細な表現で、時の将軍に献上されるものとして発展し、今や登録無形文化財や世界無形文化遺産にも認定されるほど。
和菓子は大きく分けると3種類。練り物や餅類などの「生菓子」、最中や羊羹などの「半生菓子」、落雁や飴などの「干菓子」がある。それらすべてにおいて、今より少し先の一刹那を映したお菓子が季節ごとに創作され、発信されていく。この冬は、和菓子に込められた物語を受け、より季節を感じ、親しむ機会にしてみたい。
和菓子の 『伝統』
日本書紀に登場する菓祖・田道間守命(たじまもりのみこと)が帝のために持ち帰った「非時香菓(ときじくのかぐのこのみ)」が和菓子の起源とされている。そして、貴族など一部の人しか口にできなかった和菓子が、庶民の間にも広まったのは江戸時代だ。同時に菓銘や工夫を凝らした和菓子が次々と生まれ、その姿は老舗(しにせ)和菓子店で受け継がれている菓子見本帖に残されている。「今見ても鮮やかで美しく、アイデアの豊かさに驚かされる」と「駿surugaya 南森町本店」の岡本さん。日本で独自に発展を遂げた和菓子の華麗な伝統に触れてみて。
和菓子の 『進化』
季節や伝統を大切にしながら、さらなるアプローチに挑戦する和菓子店も増えている。「それはSNSの発展によるものでは」と「亀屋良長」の𠮷村さん。“店や地域のみ”で受け継がれていた和菓子と技術が拡散されることによって、若者の情報収集だけでなく、職人たちも菓子作りを広く深く知ることができるようになったそう。和菓子が持つ伝統や、繊細で不変的な美しいものを大切にしながらも、新たな刺激や発想を盛り込んだ“ネオ和菓子”を生み出す店や職人にも注目したい。
続いては、編集部が選んだ京都・大阪・兵庫にある注目の和菓子店を紹介。
【神戸・御影】時代を越えて共感される「雪月花」のわびさび「御菓子司 常盤堂」
伊藤博文が社交場のように利用していた料亭・神戸常盤花壇の和菓子部門の一統として、1868年創業。伊藤自身も幼い頃におつかいで訪れていたという老舗だ。
「季節を表現する和菓子」を大切にする常盤堂が、創業時から作り続けている代表銘菓が「御影 雪月花」という3種1組の最中。
中国の詩人・白楽天の「雪月花の時に最も君を憶(おも)ふ」という詩をモチーフにした最中で、春は花を愛(め)で、秋は月に心を奪われ、冬は雪に情緒を感じる…。そういった巡る季節や、輪廻転生の世界観が盛り込まれた和菓子だ。
材料は小豆と糖と米粉のみ。それだけで、今も昔も人の心に触れる情景を表現している。
「和菓子には菓銘、色合い、形、あしらい、すべてに意味があります」と五代目・岩崎典治さん。その物語を知ることで、より心豊かに味わえるのも和菓子の魅力だ。
店名 | 御菓子司 常盤堂 |
時間 | 9:00~18:30 |
定休日 | 日曜休 |
問い合わせ | 078-851-4677 |
アクセス | 阪急御影駅下車 約12分 |
住所 | 神戸市東灘区御影中町4-8-22【MAP】 |
URL | https://tokiwado.jp/ |
【京都・大宮】地の水と共に創業220年 “伝統の最先端”を愉しむ「亀屋良長」
1803年に創業し、「醒ヶ井水」を一つの材料として様々な和菓子を作り続けている京菓子司「亀屋良長」 。素材の味と香りが引き立つという中軟水で作られる和菓子は、この地で生み出される菓子ならではの魅力だ。
加えて「和菓子の材料はとてもシンプルです。削ぎ落とされたデザイン、新たな工夫やストーリーも楽しんでほしい」と八代目当主・𠮷村良和さん。
「こだわりを捨て受け入れる」という考えのもと、異業種とのコラボレーション商品の開発にも力を入れ、また、若手社員たちが和菓子の型や基本を生かしつつ、新たな感性で二十四節気の菓子を作る「かめや和菓子部」も発足。伝統と進化を感じさせてくれる商品が並ぶ店内で、和菓子の“今”にふれてほしい。
店名 | 亀屋良長 |
時間 | 9:30~18:00(茶房は11:00~17:00) |
定休日 | 無休 |
問い合わせ | 075-221-2005 |
アクセス | 阪急大宮駅下車 約5分 |
住所 | 京都市下京区柏屋町17-19【MAP】 |
URL | https://kameya-yoshinaga.com/ |
【京都・西院】店で得た確かな技で紡ぐ日常菓子「まるに抱き柏」
2021年にオープンした、大福や薯蕷(じょうよ)饅頭といった定番菓子と上生菓子を取り扱う、普段使いできる和菓子店。店主の西森敬祐さんは製菓専門学校を卒業後、老舗京菓子店「老松」で和菓子の世界にふれ、「亀屋良長」で和菓子作りの伝統的な基本を学んだ後、約8年に渡り、豆餅で有名な「出町ふたば」で餅作りを徹底的に追求。「王道のベーシックなお菓子だからこそベースをきっちり守りたい」と西森さん。
加えて、料理などから得る気付きも率先して取り入れる。常に研究を続けるその姿勢が感じられる味に、来店する客は「ここのはどれもおいしいよ」と絶賛。街の人自慢の人気店になっている。
店名 | まるに抱き柏 |
時間 | 9:00~18:00 |
定休日 | 火曜休、不定休あり |
問い合わせ | 075・748・9650 |
アクセス | 阪急西院駅下車 約5分 |
住所 | 京都市右京区西院平町21【MAP】 |
URL | https://www.instagram.com/maruni_dakigashiwa/ |
【兵庫・芦屋川】昔のものは昔のままに 元来の姿を新しい切り口で「餅匠しづく 上(しょう)」
岸和田に本店を構え、「お菓子で百薬の長を目指す」をコンセプトに掲げる「餅匠しづく」が“研究と実験の場”“思考のショーケース”として、芦屋で立ち上げ。ここでは“より体に良いもの”をテーマに、オーガニック食材由来の和菓子が並ぶ。代表の石田嘉宏さんは「ハレとケで言えば、ケの日に食べるお菓子を作っていきたいです。日本の主食である白米のように、日常的に食べても飽きないようなお菓子を研究しています」と話す。
食べること本来の意味を大切に、古代からある素材を使いながらも、今の時代だからこそ必要とされるニュースタンダードな和菓子作りを目指す。
時間 | 10:30~18:00 |
定休日 | 火曜休、不定休あり |
問い合わせ | 0797-38-3781 |
アクセス | 阪急芦屋川駅下車 約18分 |
住所 | 芦屋市茶屋之町10-9【MAP】 |
URL | https://mochi-shizuku.jp/ |
【大阪・南森町】煉羊羹(ねりようかん)発祥の系譜を持つ進化系パステル羊羹「駿 surugaya 南森町本店」
煉羊羹は、1589年に京都・伏見の「駿河屋」四代目・善右衛門が創案。「駿 surugaya」は、1837年に分家した「大阪本家駿河屋」の新ブランドだ。看板商品は食べやすさと味の可能性を追求した「小形羊羹」。抹茶味には老舗「一保堂茶舗」の抹茶を、黒糖珈琲味には「ブルックリンロースティングカンパニー」のコーヒーをブレンドするなど、新旧他業種とのコラボレーションで、多彩な味を展開している。
一見モダンな商品だが、小豆など基本の原料や製法は創業時のまま。羊羹発祥の店としての誇りを感じる新たな銘菓だ。
店名 | 駿 surugaya 南森町本店 |
時間 | 10:00~18:00(土・日曜・祝日は~17:00) |
定休日 | 不定休 |
問い合わせ | 06-6354-3333 |
アクセス | 阪急大阪梅田・天神橋筋六丁目各駅→地下鉄・南森町駅下車すぐ |
住所 | 大阪市北区紅梅町2-17【MAP】 |
URL | https://www.o-surugaya.com/ |
【箕面・牧落】鹿児島・徳之島がルーツ 誰もが郷愁を抱く蓬(よもぎ)餅「よもぎや」
14歳のころに奄美群島・徳之島から大阪へ移り住んだ久林千恵美さんが営む、手作り蓬餅の店。蓬餅は徳之島では「フチムチ」と呼ばれる島のソウルフードで、島以外では見られないヨモギの濃厚さが特徴の、黒糖と餅米だけで作る餅だ。久林さんは「私自身が食べたくて、これは自分で作るしかない」と、ヨモギの含有量が多い郷土の味を再現。ヨモギは4~6月頃が収穫期で、春には自宅前の畑で栽培したヨモギが使用され、より風味豊かな味を堪能できるとか。ヨモギの香りが主役の素朴な味は、島の2世、3世も懐かしむほど。徳之島の画像を検索したくなる、郷愁あふれる味をぜひ。
店名 | よもぎや |
時間 | 11:00~16:30 |
定休日 | 木曜休 |
問い合わせ | 072-725-0621 |
アクセス | 阪急牧落駅下車 約5分 |
住所 | 箕面市桜1-16-28【MAP】 |
URL | https://www.yomogiya.shop/ |
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