【豊中】尼崎から移転したモンパルナスを取材!守り継がれるピロシキ
2021.05.27グルメ
「パルナスって、あのCMの?」。1958年から「モスクワの味」というキャッチコピーと共に、関西で人気を誇ったパルナス製菓のテレビコマーシャル。そのパルナス製菓から独立し、かつての味を引き継ぐ唯一の店「モンパルナス」が、2021年5月に阪神尼崎駅前から豊中・庄内へ移転オープンしました。
長年関西で愛され続ける老舗の、生まれ変わった店舗を編集部がレポートします。
目次
“モスクワの味”、愛され続ける名物「ピロシキ」
パルナス製菓は、戦後すぐ、古角松夫さんが神戸で創業。当時珍しいロシアのお菓子を販売する洋菓子店として、1980年代には関西で280店舗以上を構えました。
開業前、すでに日本にあったドイツやフランス菓子との差別化を図るため、ロシアのお菓子に目をつけた松夫さんは、モスクワに赴き現地のレストランや工場を視察。ケーキやドーナツ、シュークリーム「クレーモフ」といったロシアのお菓子をメニューにしました。その後、現地の職人から教わったレシピと製法で作る総菜パン「ピロシキ」を発売。
ピロシキとは、小麦粉を練った生地に、野菜や肉などの具材を詰めて揚げたパンのこと。同店のピロシキは、ゆで卵、玉ネギ、牛ミンチを塩コショウなどでシンプルに味付けしています。片手に乗るくらいの程良いサイズ感で、揚げていながらもスッとお腹に収まってくれます。
パルナス製菓は洋菓子がメインだったものの、ピロシキはたちまち人気に。百貨店での実演販売に加えて、社内で”キャラバン隊”が結成され、洋菓子のみを販売するパルナス店舗の店頭でも定期的に販売していました。
唯一のピロシキを受け継いだモンパルナス
モンパルナスは、松夫さんの弟である伍一さんが、1974年に独立し開業。阪神尼崎駅の構内に喫茶室を備えた店舗を構え、自社工場で作ったオリジナルのケーキや焼き菓子を販売していました。そのメニューには、パルナス製菓時代から作り続けていたピロシキやドーナツも並びました。
その後、時代の変化に伴って、パルナス製菓が2002年に事業を精算し解散することに。長年愛され続けたピロシキの味は、モンパルナスでしか食べられないメニューとなったのです。
モンパルナスの社長が伍一さんから現社長の武司さんに代替わりし営業を続けますが、周辺に全国規模のチェーン店が続々と出店してきたことで、苦戦を強いられます。そんなさなか、追い打ちをかけるように新型コロナウイルスが蔓延。座席数を減らして営業しつつも、「このままでは行き詰ってしまう」と判断し、移転するという大きな決断を下しました。
パリの街角!? 新生モンパルナスのおしゃれでクラシカルな店内
「従業員全員が通えて、育ててもらった尼崎のお客様にも来ていただきやすい場所を」と、社長が選んだ移転先は、阪急庄内駅から歩いて約3分の場所。
パリの街角に並んでいそうなグレーを基調とした外観、店内もクラシックでおしゃれな雰囲気です。
尼崎時代は65席を有し、モーニングやランチを提供する喫茶店として営業していましたが、移転した庄内の店はパンのテイクアウトが中心。購入したパンとコーヒーで、店内でひと息つけるカフェスペースも併設しています。
実は店舗のデザインは、インテリアデザイナーである社長の息子さんが手掛けたもの。味わいのあるアンティークの家具や調度品が、モンパルナスが積み重ねてきた歴史と重なります。
デザインは息子さんに一任しているそうで、壁の色からトイレの壁紙にいたるまでこだわりが随所に。
店内の照明の一部は尼崎時代に使っていたものをそのまま利用。トイレの扉も塗装し直して使い、モンパルナスの歴史を繋いでいます。
ほかにも、店内にはパルナス製菓時代のロゴや、CMの静止画、年表など、パルナスの歴史を伝えるパネルを展示。リアルタイムでパルナス製菓を知らない世代でも、関西人にどれだけ愛されていたのかが想像できます。
そして棚に目をやると、パルナスのキャラクターグッズが。これから販売する予定のものだそう。
「パルナスファンの有志の方がオリジナルで製作してくださってるんです」
これほどまでに愛されているとは……。
ちなみに、パルナスのキャラクター「パルちゃん」は、ロシアの絵本の登場人物がモデルで、本名は「ネズナイカ」というそうです。
「どれを食べても外れなし」懐かしいパンたち
そんなおしゃれな店内で、名物のピロシキは、お客様全員の目に留まるレジ横の位置にスタンバイ。揚げたてが次々と並んだと思いきや次々に売れていく……を繰り返します。
店内の中央には、ピロシキ以外のパンがずらり。あんパンやアップルデニッシュ、ソーセージがのった惣菜パンなど「町のベーカリー」メニューが主で、種類は約50種。お値段も100円台後半が中心と良心的です。
街ではハード系パンの人気が高まっていますが、”誰にとっても食べやすく外れがない、町のベーカリーのパン”という位置付けが「モンパルナスらしいスタイル」と社長は考えます。
また移転オープンにあたって、尼崎時代の喫茶店スタイルを辞め、テイクアウトのベーカリーを中心としたのは、イートインに頼りきらない形態と、百貨店の定期的な催事出展でピロシキ以外のパンの販売にも手ごたえを感じていたから。
例えば、高菜サラダパン。
ホールの高菜漬けを細かく刻んでごま油で炒め、からしマヨネーズで和え、たっぷりとパンに挟んだメニュー。催事ではピロシキに次ぐ大ヒットメニューで、ちょっと辛めの「高菜サラダパン RED HOT」やゆず風味にしたアレンジメニューも好評です。「ピロシキは買わずに高菜サラダパンだけ買いに来る」というお客様もいるそうで、しっかりファンがついています。
「ピロシキは先代が作ったもの。オリジナルメニューで、ヒットを生み出し続けたい」
と、言葉に力を込める社長。モンパルナスが運営していた女子大の食堂を担当していた時、「どうすればお客さんに喜んでもらえるか?」と毎日頭をひねらせてメニュー作りに励んだことで、かなり鍛えられたそう。次なるヒットメニューは何か? 期待が高まります。
「町のベーカリー」としての新たな出発は大盛況
5月1日のオープン前から、店舗にはお客様から開店を心待ちにする問い合わせが多数寄せらたとか。オープン後も連日完売が続く人気ぶりで、スタッフの手が回らず、社長自ら厨房に立ちピロシキ包みを行う時もあるそうです。「趣味のギターにも全く触れていません……」と、嬉しい悲鳴。仕事に追われる中、それでも社長やスタッフを尽き動かすのはお客様の声です。
「食べたくて食べたくて、子どもの頃デパートで親に泣いてねだったわ~」
「亡くなった父が、いつもお土産に買ってきてくれた」
「他のお店のピロシキを食べても、”何か違う”って思ってしまう」
そんな声を聞くたびに「辞めるに辞められない」と自らを奮い立たせます。
コロナ禍の中、移転オープンするという大決断。門外不出の味を守り抜く覚悟を決め、関西人らしいユーモアとアイデアで切り開いていこうとする社長の目は、自信とパワーに満ちていました。
店舗名 | モンパルナス 豊中(庄内)店 |
時間 | 8:00~19:00(祝日は8:30~18:00) |
定休日 | 当面は毎週日曜 |
アクセス | 阪急庄内駅下車すぐ【MAP】 |
問い合わせ | 06-6151-4915 |
URL | http://www.pirosiki.com/ |
この記事を書いたのは… TOKK編集部T
「TOKK(トック)」編集部T。豊中育ち→箕面→豊中→池田→神戸・岡本→池田と阪急沿線を転々とする。そのたびに、その街と周辺を隅々まで歩き、住人だからこそ分かる見どころを掘り起こしている。次に住んでみたいのは阪急京都線の大山崎。趣味は、おいしいもの発掘と山歩き。
阪急沿線情報紙「TOKK」は今年で創刊から49年目を迎える情報紙で、関西私鉄・阪急電車沿線のおでかけとくらし情報を毎月1回、各30万部発行するメディアです。取材のこぼれ話やお店の方から聞いたお話や、くらしの中で気になる情報を毎日更新中です。
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