2025年 大阪・関西万博まで1年!1970年大阪万博を知る【TOKK2024年5月号】

来年は2回目となる大阪での万国博覧会開催の年。初回開催の54年前にタイムトリップできる施設を巡り、1970年の大阪万博を知れば2025年大阪・関西万博をもっと楽しめるはず。

お祭り広場のイベントを録画した豊富な映像資料を保存「池田文庫」

|寄稿|阪急文化財団・正木喜勝「大阪万博と阪急」

大阪万博を支えた阪急

阪急沿線史上最大のイベントといえば、やはり1970年の大阪万博(日本万国博覧会)でしょう。半年でのべ6421万もの人々が訪れ、阪急グループ各社も地元の企業として、様々な役割を担いました。

輸送面では、会場へのメインルートとして北大阪急行電鉄が設立され、阪急電鉄(当時の社名は京阪神急行電鉄)も現在の山田駅付近に臨時駅を開設しました。南茨木駅や茨木市駅からは阪急バスが他社と共同でシャトルバスを運行しました。

1. 北大阪急行電鉄営業開始(1970年2月24日)。2. 万国博西口駅から大阪万博の会場へ向かう人波(1970年)。
3. 京阪神急行電鉄の車内広告(1970年)。4. 北大阪急行開通時の車内広告(1970年)。

遠方からのお客様には宿泊施設が必要です。新阪急ホテルや宝塚ホテルは新館を増築し、大阪エアポートホテル、千里阪急ホテルといった新しいホテルもその需要に応えました。

会場では食事を楽しむ場所も欠かせません。その一部は阪急百貨店や阪急産業が担当しました。前者は本部の従業員食堂、後者は日本館の食堂などを手がけています。阪急百貨店は会場内で公式グッズの売店も運営しました。

お祭り広場での活躍

大阪万博のシンボルといえば太陽の塔を思い浮かべますが、その塔がある「お祭り広場」全体も「人類の進歩と調和」というテーマを体現する重要な空間でした。

この広場では、国際色豊かな式典やショー、日本各地の民俗芸能、実験的なパフォーマンスが連日披露されました。

お祭り広場における韓国の催し物の一場面(1970年5月18日)

これら催し物の企画を統括したのは、阪急電鉄から梅田コマ・スタジアムに出向した伊藤邦輔という人物です。ミュージカル『王様と私』の日本初演など数々の名作を世に送り出した演劇プロデューサーで、博覧会立案の実績もありました。

催し物には宝塚歌劇団の演出家も参加しました。民俗芸能の調査と上演をライフワークとした渡辺武雄は、その知識と人脈を請われて、伊藤の下でお祭り広場専門のプロデューサーに就任しています。

同じく演出家の内海重典は、開会式の脚本・演出という大役を務めました。宝塚大劇場はもちろん、西宮球場での野外音楽イベントを演出していたこともあり、そうした経験が役立ったのでしょう。

池田文庫の豊富な万博資料

阪急電鉄は、会場内の遊園地エキスポランドの計画や運営も委託されています。創業以来、宝塚新温泉・宝塚ファミリーランドで培われた遊園地のノウハウがいかされたのです。鉄道を敷き、ショーや娯楽を提供し、食堂をつくり、物を販売し、ホテルを建てる。万博に対するこれらの取り組みは、阪急の多角化事業の歴史と重なります。

『TOKK』の前身の一つ『HOT』の表紙も大阪万博に(1970年3月15日号)。

以上のような経緯から、阪急や演劇の専門図書館である池田文庫には、催し物の記録を中心に、大阪万博に関する資料が数多く所蔵されています。一般公開しているものもありますので、ご予約の上、ぜひご利用いただけたらと思います。詳細はお問い合わせください。(文中敬称略)

1949年に開設、阪急電鉄資料と宝塚歌劇に関する資料を網羅的に収集した図書館。
スポット名阪急文化財団 池田文庫
時間10:00~17:00
問い合わせ072-751-3185
休館日月曜(祝日の場合は開館、翌日休)、6月14日〜7月1日は図書整理のため休館。
アクセス阪急池田駅下車 約10分
住所池田市栄本町12-1【MAP
備考6月9日まで、ミニ展示「万博を旅する Part1―1862年ロンドン・1867年パリ―」を開催中。
URLhttps://www.hankyu-bunka.or.jp/ikedabunko/

当時の熱気を体感できる「EXPO’70パビリオン」

77カ国が参加し、約半年で6421万人が訪れたという’70年の大阪万博。1日では回り切れないほどの展示で埋め尽くされた会場の熱気を、今に伝える唯一の施設がEXPO’70パビリオン。

パビリオンが並ぶ当時の会場の様子。遠くには太陽の塔も見える。
写真提供:大阪府

日本鉄鋼連盟が出展したパビリオン「鉄鋼館」を使用し、アジアで初めて開催された万博の準備段階から閉会までを、約3千点におよぶ実物資料と写真、映像で紹介している。

EXPO’70パビリオンの建物は、建物自体が楽器というテーマで運営された旧鉄鋼館。
スペースシアターでは、当時の最新技術を結集し1,008個のスピーカーとレーザー光線による前衛的なショーが開催された。現在は施設内部をガラス越しに見学できるようになっている。
写真提供:大阪府

昨年には別館もオープンし、太陽の塔の内部にある岡本太郎の作品「生命の樹」に関する展示などを追加。ホステスのユニフォーム展示も登場した。

現在の太陽の塔の黄金の顔部分は2代目。大阪万博当時設置されていた初代・黄金の顔を間近で見ることができる。
当時のホステスの等身大パネルが入り口で出迎えてくれる。

高揚感と来場者の熱を展示で追体験

’70年の大阪万博をリアルタイムで経験した人には懐かしく、そうでない人には新鮮に映る。同じものを見ても全く違う感想が出てくるのも、同館の楽しみ方の一つではないだろうか。

1970年3月14日11:00、うっすらと雪が残る会場で華やかに行われた開会式の様子。
写真提供:大阪府

床、壁、天井まで赤を基調とした展示通路を進みながら、グッズやパンフレットなどの実物資料、会場に溢れる人々の映像を鑑賞していく。

展示のスタートは大阪万博のシンボルマークに関する展示から。「人類の進歩と調和」というテーマを視覚化したもので、全体で日本の代表的な花「桜」を表現している。
各パビリオンで配布されたパンフレットも展示。

当時の高揚感を自分も追体験しているような不思議な感覚に包まれる。54年前に開催された祭典から進化したこと、そして変わらないこと…。そんな事を考えながら2025年の大阪・関西万博を楽しみに待ちたい。

スポット名EXPO’70パビリオン
料金高校生以上500円、中学生以下無料(自然文化園・日本庭園共通入園料は別途必要)
時間10:00~17:00(最終入館は16:30)
問い合わせ06-6877-7387
休館日水曜(万博記念公園に準ずる)
アクセス阪急南茨木・蛍池・山田各駅→大阪モノレール・万博記念公園駅下車 約11分
場所吹田市千里万博公園1−1【MAP
URLexpo70-park.jp/facility/watchlearn/other-07/

アジア初の万国博覧会のアイコンとなった「太陽の塔」

地元の要望で取り壊しを免れ、吹田のシンボルへ

開催時の太陽の塔周辺の様子。腕の先端から塔を囲むように造られた大屋根に降りるという見学ルートだった。
写真提供:大阪府

’70年の大阪万博のテーマ館の一部として、芸術家・岡本太郎がデザインした太陽の塔。岡本太郎の芸術哲学であった「太陽の下に新しい人類の創造」を掲げ、その象徴として人々に未来への希望と革新のメッセージを伝えた。

1967年7月17日に岡本太郎が描いた太陽の塔のスケッチ。

元々、万博会場にある建物などは取り壊される前提で建てられ、太陽の塔も例外ではなかったが、大阪万博を象徴する建造物であることや、地元からの要望もあって’75年に永久保存が決まる。’93年の大規模改修、2016年の内部再生事業を経て、2018年から一般公開されている。

受付でスマートフォン落下防止ケース(500円)を借りれば2階以上でも内部の写真撮影が可能となる。ぜひ利用したいアイテム。

当時の空気感を五感で楽しむ巨大造形の内部

外観の特徴は、何と言っても遠くからもよく見え、日光を受けると金色に輝く顔。

広報の方に教えていただいたフォトスポットからの眺め。見学コースの最初にある!

円錐型の胴体部分に大きく広げた腕は、全身で風を受け止め羽ばたく鳥のようにも見える。

太陽の塔の右腕内部。構造物、アート、両方の美を備えた不思議な空間が空へのびる。

内部には「生命の樹」と呼ばれる巨大な造形が設置され、見学者は1階から腕の部分にあたる高さまで約30mを登りながら鑑賞できるようになっている。

当時はエスカレーター、現在は階段で登りながら鑑賞する塔内部の見学。

「生命の樹」には、岡本太郎が制作した33種183体(1点を除き復元・修復したもの)の生き物が配され、原生生物が群生する「基底部」と呼ばれる場所からスタート、哺乳類誕生まで生命の進化の過程を辿る作品となっている。ライトに照らされる「生命の樹」、作曲家・黛敏郎が作曲した「生命の讃歌」が響く塔内、足を踏み入れた瞬間に異空間へ誘われる没入感を楽しんで。

スポット名太陽の塔
料金高校生以上720円、小中生310円
(自然文化園入園料は別途必要、入館は予約優先(空きがあれば当日券の販売あり))
時間10:00~17:00(最終受付は16:30)
問い合わせ0120-1970-89
アクセス阪急南茨木・蛍池・山田各駅→大阪モノレール・万博記念公園駅下車 約8分
場所吹田市千里万博公園1−1【MAP
URLtaiyounotou-expo70.jp

“ナポリタン”など懐かしの洋食メニューが大人気「万博食堂」

’70年の大阪万博出店が創業のきっかけに

前回の大阪万博をテーマにした洋食店。先代社長が万博に出店したことが起業のきっかけとなったエピソードが興味深い。創業の地でもある大阪万博の跡地にEXPOCITYがオープンするにあたり、再び出店となった。アメリカ館で展示され話題となった「月の石」の名前を冠した「月の石ハンバーグ」、万博会場で販売され人気に火が付いたというフランスパンなど、当時話題となったメニューが人気の上位を占める。

1.各国の国旗や前回の大阪万博の際に発売されたグッズなどが並ぶショーケースは、眺めているだけでも楽しい。
2.ポスターから、酒類、タイムカプセルまで、店内にはコレクターなどから譲り受けたアイテムが。グッズを見て懐かしむお客さんと話が弾むことも多いそう。
3.長さ約40㎝のプレートに「月の石ハンバーグ」、「ナポリタン」、「フランスパン(ガーリック、明太子、メープルの3種)」など同店の人気メニューを集めた「万博All Stars」3,058円。ギュッと肉が詰まった月の石ハンバーグは食べごたえアリ。
スポット名万博食堂
時間11:00~21:00(土・日曜・祝日は〜22:00、21:00LO)
※ららぽーとEXPOCITYに準ずる。
問い合わせ06-4860-6399
アクセス阪急南茨木・蛍池・山田各駅→大阪モノレール・万博記念公園駅下車 約7分
場所吹田市千里万博公園2-1ららぽーとEXPOCITY内【MAP
URLhttp://www.hatsukame.co.jp/business/banpaku.html

新店舗がオープンしたEXPOCITYにもぜひ立ち寄って

「万博食堂」が入るららぽーとEXPOCITYは、EXPOʼ70の跡地に誕生したショッピングモール。今春、国内最大級の屋内スケートパークと大型のムラサキスポーツ店舗を併設した「ムラサキパーク」をはじめ、「EVERYTHING MINECRAFT」や「クリスピー・クリーム・ドーナツ」など5つの新店舗が続々オープン。
詳細は下記公式サイトをチェック。
www.expocity-mf.com/expo/

ミャクミャク号運行中!

阪急電車では、2025年大阪・関西万博開催の500日前にあたる2023年11月30日から、大阪・関西万博公式キャラクター「ミャクミャク」のヘッドマークを付け、車体に「ミャクミャク」のラッピングを施した列車を運行中。運行期間は2025年大阪・関西万博の会期終了(2025年10月13日)までを予定している。
運行予定はwww.hankyu.co.jp/area_info/にて掲載。

お知らせ
あなたのʼ70大阪万博の思い出の品や写真に「#万博思い出」をつけてX(旧Twitter)またはInstagramにアップ!
公式アカウントにてご紹介します。

  • 掲載店舗や施設の定休日、営業時間、メニュー内容、イベント情報などは、記事配信日時点での情報です。新型コロナウイルス感染症対策の影響などにより、店舗の定休日や営業時間などは予告なく変更される場合がありますのでご了承ください。また、お出かけの前に各店舗にご確認いただきますようお願いいたします。
  • 感染症対策を行いながら、取材・撮影をしております。
  • 価格は記事配信日時点での税込価格です。

この記事をシェアする

関連キーワード






Follow Me!

Instagram Icon Twitter Icon

公式アカウントをチェック!