初詣の起源とは?神戸・京都・大阪、寺社の初詣の風習を紐解く【TOKK2022年1月号】
2021.12.25特集
【TOKK2022年1月号】
年の節目となるこの時期は、沿線各所で様々な祭祀が営まれる。初詣の風習を紐解き、心新たに年の始まりを迎えよう。
目次
初詣の起源とは
年始に欠かせない日本の行事「初詣」。その由来は「年籠(としごも)り」にあると言われている。
「年籠り」とは、家長が大晦日の夜から朝にかけて、氏神様を祀(まつ)る神社に籠り、新年の平安や豊作を眠らずに祈り続ける風習のこと。この「年籠り」がやがて、大晦日の夜に参拝する「除夜詣」と、元日の朝に参拝する「元日詣」に分かれて行われるようになった。その後は徐々に「元日詣」のみ行われることが慣例となり、現在の「初詣」へと変化していったとされている。
「元日詣」は当初、地域を守ってくださる氏神様がおられる神社へ詣でるのが習わしだった。それが次第に、氏神様に限らず、各々が崇敬(すうけい)している社寺を参拝する行事として定着していく。その背景には、鉄道によって交通網が発達し、移動の利便性が向上したことも影響していると考えられている。
時代の移り変わりや人々の暮らしに応じて、少しずつ変化を遂げ、今日の様式が確立された「初詣」。これからも参拝の作法は時と共に変わりゆくかもしれないが、一年を無事に過ごせたことへの感謝の気持ちを神仏にお伝えし、新しい年が平安無事であるようにと祈りを捧げるーー。そうした伝統は、これからも大切に受け継がれていくことだろう。
「門松」ではなく独自の「杉盛(すぎもり)」で新年を祝う、神戸・生田神社
年神様をお迎えする正月飾りといえば、「門松」。しかし生田神社では、松ではなく杉を用いた「杉盛」を飾る。「昔、洪水で松の木が倒れて社殿が壊れたという伝承から、生田神社では松を忌み、『杉盛』を奉製しています」と話すのは、同社の権禰宜(ごんねぎ)・澤田政彰さん。そのため境内に松は一本もなく、氏子地域では新年の風物として「杉盛」が根付いている。
楼門の前で参拝客を厳かに迎える、高さ約2.5mの「杉盛」。杉の枝を約2千本使い、約30人がかりで奉製する。注連縄(しめなわ)の数が12本なのは、一年12カ月が幸せであるようにという思いが込められているため。年神様をお迎えし、新年を祝うという日本の文化を重んじつつ、生田神社が大切に守り続けてきた独自の正月飾りといえる。
生田神社へ初詣に行く際、「杉盛」を観賞するのと合わせて、ぜひ授かりたいのが「育守」。神戸発祥のベビー・子ども関連ブランド、ファミリアとの縁から、令和3年8月9日(ハグの日)に生まれた授与品だ。「お子様はもちろん、ご年齢に関係なく皆様の想いや夢を育むと共に、神戸が発展する一助となればとの願いで奉製されました」。
表には同社の社紋である八重桜、裏にはファミリアの象徴ともいえるクマのモチーフと「生田宮」の文字が、西陣織で織り上げられている。格調ある意匠ながら、愛らしいクマの表情に、授かった参拝客からは思わず笑顔がこぼれる。
「神社の役割は、神様に喜んでいただくこと。そのためには参拝者様に笑顔になっていただくことが一番です。時代を超えて参拝者の方に喜んでいただけるよう、伝統を守りつつ、自分が去った100年先を見据えて新しいことに取り組んでいければ」と澤田さん。100年後の世に何を残し、伝えていけるのか。冬の清澄な空気の中、初詣の折にじっくりと考えてみたい。
スポット名 | 生田神社(いくたじんじゃ) |
問い合わせ | 078-321-3851 |
アクセス | 阪急神戸三宮駅下車 約8分 |
住所 | 神戸市中央区下山手通1-2-1【MAP】 |
URL | https://ikutajinja.or.jp/ |
行事 | 「神戸太鼓初打ち」1月1日0:00〜、「歳旦祭」6:00〜 ※三が日は正面鳥居で検温・消毒のうえ入門。 |
神聖な火で迎える京都・八坂神社の年越し行事「をけら詣り」
京都の年末を飾る風物詩といえば「をけら詣り」。大晦日の夜、境内3カ所に設けられた灯籠から、「をけら火」を火縄に受けて無病息災を祈る祭事だ。「をけら」はキク科の植物で、乾燥させた根を燃やすと発する強い匂いが邪気を祓(はら)うとされる。「をけら詣り」の起源は諸説あるが、削掛(けずりかけ)神事にあるとされ、井原西鶴の『世間胸算用』には別名悪口祭り(あくたれまつり)として記されている。
大晦日の夜に参詣の際、灯りは全て消され、境内は真っ暗になる。そして他人の顔が見えない暗闇で、人々は一年間の鬱憤を残らず吐き出し、まっさらな心で新年を迎えたのだとか。続いて祇園社の社僧が、木を薄く細長く削いだ削掛を拝殿の東西に立てて焼き、参詣者はその火を火縄に移して持ち帰り、無病息災を祈願して新年の雑煮を炊くなどした。
時代と共にその風習はなくなったが、「をけら火」を火縄に受ける伝統は今日まで受け継がれている。「をけら詣り」で用いられる御神火は一年間決して絶やさぬように本殿で大切に保管され、祇園祭などの神事でも用いられる。そして12月28日に行われる鑽火式(さんかしき)で新たな御神火が鑽(き)り出されて灯される。その神聖な火を「をけら詣り」で有難く授かり、感謝の気持ちで年越しを迎えたい。
スポット名 | 八坂神社(やさかじんじゃ) |
問い合わせ | 075-561-6155 |
アクセス | 阪急京都河原町駅下車 約10分 |
住所 | 京都市東山区祇園町北側625【MAP】 |
URL | https://www.yasaka-jinja.or.jp/ |
行事 | 「をけら詣り」12月31日 19:30 ~ 1月1日 5:00頃 |
自分の手で選ぶ、宝くじ発祥の地・箕面山 瀧安寺のおみくじ
初詣に一年の運勢を占うおみくじ。筒を振り、出た番号のおみくじを授与してもらうのが一般的だが、宝くじ発祥の地である瀧安寺では自分の手で選ぶ。「筒を振る時間を省き、また、ご自身の意思で選び取っていただけるよう、5年程前からこの様式にしました」と話すのは、住職の山本昌弘さん。和紙を使ったおみくじは手仕事で巻かれ、お清めをして授与される。
おみくじといえば、何よりも気になるのが結果。大吉だとうれしく、凶だと気が滅入るのが人情というもの。「おみくじは御神仏からの御助言です。例え凶を引いても、人生をより良い方向へ導こうとしてくださっていると考えていただければ」。引いた後の作法について伺ってみると、「持ち帰っても境内の木に結び付けてもかまいません。大事なのは御助言に感謝の心を持つことです」。結果に一喜一憂せず、おみくじを御助言として日常に生かすことで、豊かな新年が過ごせそうだ。
スポット名 | 箕面山 瀧安寺(みのおさん りゅうあんじ) |
問い合わせ | 072-721-3003 |
アクセス | 阪急箕面駅下車 約18分 |
住所 | 箕面市箕面公園2-23【MAP】 |
URL | https://www.ryuanji.org/ |
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- 写真は2021年以前のものです。