吹田でバナナを栽培! 手間ひま掛けて極上の味わいに
2025.07.30吹田
大阪府北部に位置する吹田市は万博記念公園をはじめとした都市公園が整備され交通網が発達し、住みやすいと幅広い世代に人気の街です。そんな吹田市の街なかで、バナナを栽培しているって知っていましたか? その名も吹田バナナ。「なぜこの場所で?」「どんなバナナなの?」そんな疑問を解決すべく、吹田バナナを栽培する北摂バナナ圃場(ほじょう)に伺いました。
日本生まれの希少なバナナを吹田で無農薬栽培
大阪急行電鉄の緑地公園駅から歩くこと約15分。落ち着いた住宅街の一角に、北摂バナナ圃場のビニールハウスはあります。


「ビニールハウスの中は夏場は特に暑く、35~40℃くらいありますよ」と北摂バナナ圃場の代表の紙谷幸弘さん。
紙谷さんに案内されてハウスの中に入ると、高さ数十cmのものから3mほどのものまで、さまざまなバナナの草が植えられていました。バナナは葉が重なり合って茎となり成長していくので、木ではなく草に分類されます。


熱帯地域が原産のバナナは日本で売られているものもフィリピンなどからの輸入品がほとんどですが、こちらで栽培されているのは珍しい日本生まれの品種なのだそう。
「縁があって鹿児島でバナナを栽培している友人から苗分けしてもらい、吹田バナナと名付けて令和4(2022)年から無農薬で栽培を始めました。日本でバナナを栽培する事例は少ないこともあり実際にやってみないとわからないことが多く、試行錯誤の3年でしたね」。
絶妙な温度管理や散水量がバナナの成長を左右
ビニールハウスの中にはプランターで育つバナナの苗も見られます。
「30cmくらい成長してから土に植え替えて、そこから収穫までは約1年かかります」と紙谷さん。

一つのバナナの草で収穫できるのは1回限り。順調に育てば約100〜150本のバナナが、一つの草から 採れるそうです。
「一番難しいのはやはり温度管理。夏場はそのままにしていると暑すぎるので風通しを良くしたり、直射日光で葉っぱが焼けないように遮光シートで覆ったりして調整しています」。

温度が低くなりすぎると生育不良となるため、冬は暖房をかけ保温性を高めるためのシートで二重にして約20℃に保つなど、年中工夫を凝らします。
また散水量も季節や天候、土の状態を見極めて変えているそうです。
「真夏にカンカン照りの日が続く時は3日に1回、バナナの草1本に対して1回で約50ℓの多量の水を与えます。糖度を上げるためにも、水の量は重要なのです」。
バナナの栽培に適した水はけの良い培養土を使うのもポイント。それでも地中での水の流れ方は場所によって微妙に異なるため土の中に手を入れて感覚で水分量をチェックするなど、細やかな作業も行っています。
さらにここでは無農薬で栽培を行っているため、随時害虫のチェックや駆除、対策も欠かせません。
さまざまな性格のバナナの草と向き合う
「これ(下写真)は収穫間近の実です。実の断面が丸くなってきたら収穫のサインなんですよ」
と紙谷さんが見せてくれたバナナの実は、はち切れそうに丸くきれいにふくらんでいます。
「外国産のバナナは店頭に並ぶまでに時間がかかるので早めに摘むため、バナナが痩せている。でもここでは中の身がしっかりふくらんでから収穫できるので、太くて味の濃いバナナになるんです」。

吹田バナナは一般的なバナナに比べて糖度も高く、25度もあるのだとか。
緑色の状態で収穫した後は倉庫で温度管理をしながら追熟していきます。
「バナナの株が成長すると根元の脇からいくつもの新芽が出てきます。栄養を取られないように切ったり摘み取ったりして一つだけ残し、その新芽を育てていきます」。

収穫が済んで役割を終えたバナナの草は切られますが、水分を多く含む葉っぱや茎は運び出すのも一苦労。水やりや草むしりも含めてここでの作業は機械を使わずに手作業で行われるため、なかなかの重労働です。
「バナナは個体差が大きく、同じ時に植えてもが同じ収穫時期になるとは限りません。加えて日当たりや土の状態などの影響によっても結構な成長の差が出るんです」。
現在88本あるというバナナの株は、確かに成長の具合や状態がさまざま。それぞれに合わせながら世話をする大変さが伝わってきます。
「3年の間にたくさんの失敗もありましたが一つずつ乗り越え、ようやく軌道に乗ってきているようにも感じています。今年は順調にいってるんじゃないかな」と笑う紙谷さんの表情には、バナナ栽培の苦労とやりがいがにじんでいました。
店舗やキッチンカーのバナナスムージーが人気
そんな紙谷さんの苦労の結晶ともいえる吹田バナナは、「バナナの神様 大阪難波店」で味わうことができます。
看板メニューはバナナスムージー。熟した一番いい状態のバナナを贅沢に使い、砂糖不使用で驚きの甘さが口いっぱいに広がります。
無農薬のため、皮ごと味わえるのも吹田バナナの魅力。皮ならではの栄養素もあるため、スムージーにはパウダー状にして入れています。

また「バナナの神様 大阪難波店」は、江坂など地元のイベントに参加することもよくあるそう。
キッチンカーで販売するバナナスムージーは大盛況で、1日に700~800杯売れることもあるのだとか! 吹田バナナが少しずつ地元で認知されてきているようです。

バナナ自体の店舗販売は行っていませんが、時期によっては1kg単位などで販売することも可能なので、気になった方は「バナナの神様 大阪難波店」に問い合わせてみてください。

「吹田 は古くからの農家さんが多いので、バナナ栽培にも興味を持ってもらえたらうれしいなと思っています。喜んで株分けをするので、ぜひチャレンジしてもらえたら!」と、紙谷さんは地元でバナナ栽培を広めることにも意欲的です。
吹田がバナナの産地になる日がくるかも…と、そんな思いをほのかに抱きつつ今後を楽しみに見守っていきたいです。
スポット名 | 北摂バナナ圃場 |
問い合わせ | com-foo.26@ace.ocn.ne.jp |
URL | https://hokusetsu-banana.com |
スポット名 | バナナの神様 大阪難波店 |
営業時間 | 10:00~22:00 |
定休日 | 不定休 |
問い合わせ | 06-6567-8606 |
アクセス | 阪神・近鉄大阪難波駅下車 約15分 |
住所 | 大阪府大阪市浪速区日本橋3-5-25 コミュニティーフードホール大阪日本橋内【MAP】 |
URL | https://www.instagram.com/877nokamisama_namba/ |
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この記事を取材したのは ライター A子
愛知県出身京都在住。京都が好きで移り住んで約20年。
制作プロダクションでの編集を経て、ライターとして独立。
京都の酒場巡りが好きで、主に御所周辺や出町柳エリアに出没。

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