アサヒグループ大山崎山荘美術館へ。レトロ建築や美しい庭、モネの『睡蓮』など見どころ多数

関西に数ある美術館のなかでも、とりわけ建築が美しいのが「アサヒグループ大山崎山荘美術館」。築100年を超える洋館が美術館として利用されており、その建築美はもちろんのこと、こだわりぬかれた庭園やテラスからの眺望も“絶品”。民藝コレクションが充実しているほか、あのモネの傑作『睡蓮』を常設展示していることでも知られる。

そんな見どころの多い同館の魅力とは。ぜひ現地で体感するべく、実際に訪れて取材することに。さっそくアサヒビール大山崎山荘美術館へ出発。

※2023年7月より「アサヒビール大山崎山荘美術館」から名称が変更。

アサヒグループ大山崎山荘美術館の行き方

アサヒグループ大山崎山荘美術館に行くには、阪急大山崎駅から無料送迎バスの利用がおすすめ。無料送迎バスは阪急京都線・大山崎駅から出発し、途中でJR山崎駅を経由、美術館まで約10分で到着する。

大山崎山荘美術館 バス

時刻表はホームページにて確認を(阪急大山崎駅発の始発は9時45分、最終便は16時05分)。

なお、駐車場がないため車での来館不可。阪急大山崎駅からハイキング気分で歩いて行くこともできるが、勾配の強い坂があるので注意が必要だ。

※バスは定員24名。満員の際はご乗車いただけない場合があります。

バスの終点は「美術館庭園入口(トンネル)」で、降りると目の前に「琅玕洞(ろうかんどう)」という名前のトンネルが見える。こちらが美術館への入口。

大山崎山荘美術館 トンネル 琅玕洞

実は、これから訪れる美術館の本館をはじめ、敷地内にはいくつもの文化財(国の登録有形文化財)があるのだが、このトンネルもそのひとつ。道中にある無料休憩所「レストハウス」も文化財で、かつては車庫として利用されていたそう。

大山崎山荘美術館 レストハウス

トンネルを抜けた先は一面の緑。まるで緑のトンネルを歩いているような気分に浸りながら、本館をめざしていく。

大山崎山荘美術館 入口

アサヒグループ大山崎山荘美術館の「本館」

トンネルを抜けたら、アサヒビール大山崎山荘美術館の本館に到着!今回の取材では、同館の広報を担当する太田道子さんにお話を伺った。

大山崎山荘美術館 外観

本館の建物は、もともと関西の実業家である加賀正太郎氏の別荘として建てられたもの。加賀氏は、大正から昭和にかけて証券会社を経営し、ニッカウヰスキーの立ち上げに加わった人物。

加賀氏が天王山南麓を別荘の地に選んだのは、若い頃に訪れたイギリス・ウインザー城から見たテムス川の景色に似ていたからなのだという。

本格的に建物の建設が進んだのは1910年代年で、加賀氏自ら建物や庭の設計に携わったそう。その後も増改築を重ね、1932年に「大山崎山荘」が完成。

大山崎山荘美術館 本館庭園

ただし、美術館として開館したのは、それからずいぶん後のこと。「大山崎山荘」が加賀家の手を離れ、所有者が代わるうちに建物の老朽化が進んでいたところ、加賀氏と交流のあった朝日麦酒株式会社(現アサヒグループホールディングス株式会社)初代社長・山本爲三郎氏協力のもと、建物の保存に取り掛かることに。修繕と新館の建設を経て、1996年にようやく「大山崎山荘」は美術館として再スタートを切った。

つまりは、築100年以上のレトロな洋館がいまは美術館として利用されているということ。アサヒグループ大山崎山荘美術館は、レトロ建築好きにはたまらないスポットなのだ。

三角屋根の「本館」はイギリス・チューダー様式の文化財

写真は本館。和のエッセンスは感じられるものの、赤い三角屋根にレンガ積みの煙突などヨーロッパ風の建築なのがよくわかる。まさに「山荘」と呼ぶにふさわしい、堂々たる佇まい。

大山崎山荘美術館 外観

ステンドグラスや吹き抜けのホールなど館内にも見どころが

本館に足を踏み入れると、外観以上にレトロな雰囲気が味わえる。本館の玄関ホールでは、開放感のある吹き抜け天井と、天井に張り巡らされた梁の連なりが装飾的で美しい。

大山崎山荘美術館 本館天井

太田さんによると「現在の本館玄関ホール部分は、加賀氏がイギリスで見た炭鉱夫の家に着想を得たものです」とのこと。

そばには、青いタイルが美しい暖炉も。暖炉の周りは小さな待合になっており、「獅子窟(ししくつ)」と呼ばれている。暖炉上部にある「獅子」の意匠(=装飾的なデザイン)が、その名の由来となった。

玄関ホールを進んだ先にあるのが、ステンドグラスが美しい階段で、ここも加賀氏のこだわりの場所。と同時に、太田さんも個人的に館内で一番気に入っている場所なのだそう。

大山崎山荘美術館 ステンドグラス

聖母マリアと彼女を象徴する白百合のデザインが印象的なステンドグラスは、加賀氏がヨーロッパから取り寄せたもので、創建当時から残されている。太田さんから「柔らかい曲線をもつ、飴色に光る階段にもぜひ注目してください」とのお話も。

このように美術館では随所に加賀氏のこだわりを見ることができ、建築美そのものが大きな魅力となっている。

本館」では陶磁器や工芸品などの民藝コレクションを展示

本館では、陶磁器や工芸品、彫刻などを中心に収蔵品の数々が展示されている。

大山崎山荘美術館 本館
※写真は、2023年12月3日まで期間限定で開催されている展覧会「受贈記念:没後10年 舩木倭帆展」の頃に撮影したものです。展示作品は時期により変更となる場合があります。

このうち陶磁器や工芸品などは、朝日麦酒株式会社(現アサヒグループホールディングス株式会社)初代社長・山本爲三郎氏の民藝コレクションがベースとなっている。山本氏は、柳 宗悦が唱えた民藝運動のよき理解者・支援者であり、民藝作家の河井寛次郎や濱田庄司、バーナード・リーチの作品を積極的に収集した人物でもある。

大山崎山荘美術館 河井寛次郎
※河井寬次郎《呉須釉泥刷毛目鉢》(1954年)。展示作品は時期により変更となる場合があります。

展示する収蔵品は、企画展にあわせてその都度セレクト。取材時には、その日開催されていたガラス作家がテーマの展覧会「受贈記念:没後10年 舩木倭帆展」にあわせて、収蔵品のなかから河井寛次郎の美しいブルーが印象的な作品が展示されていた。次はどのような作品にであえるのか、そんな再訪の楽しみもある。

美術館の随所でみられる意匠にも注目を

本館をめぐる際には、建物細部の意匠にも注目したい。よくよく観察すると、かつて本館が別荘として利用されていた頃に家族が集まる場所だった部屋「山本記念展示室」の壁面には、大山崎名物のタケノコが。

また、同室の暖炉に使われている「画像石」には、中国の古い馬車が彫り込まれている。

大山崎山荘美術館 画像石

ほかにもリスやハト、加賀家の紋章などが館内に隠れている。本館入口で「宝探しマップ」をもらっておくのもおすすめ。建物の「意匠」、つまり「お宝」の場所を示すヒントが書かれている。

カットグラスが使われている窓やシャンデリア、ランプ掛け、机や椅子などどこを見渡しても素敵な空間。「加賀氏のセンスや審美眼には、いつも本当に驚かされます」と太田さん。展示作品はもちろん、あなたのお気に入りの意匠や調度品を探してみるのも楽しいだろう。

アサヒグループ大山崎山荘美術館の「地中館」

アサヒグループ大山崎山荘美術館で見逃せないのが「地中館(地中の宝石館)」。こちらでは、モネの傑作『睡蓮』などの作品を常設展示している。

大山崎山荘美術館 地中館

円形の建物は「周囲の景観に溶け込むように」と地中に埋め込まれる形で建設されており、作品が飾られている。

この「地中館」を設計したのは、世界的に有名な建築家・安藤忠雄氏。「安藤氏の建築を見るのが目的で訪れる方も多くいらっしゃいます。当館の“目玉”の一つです」と太田さん。

大山崎山荘美術館 モネ「睡蓮」

アサヒグループ大山崎山荘美術館は、モネの作品を8点所蔵する。そのうち『睡蓮』を描いた作品は複数あり、常時いずれかの作品が展示されているそうだ。モディリアニやルオー、クレーなど20世紀を代表する芸術家たちの作品もあり、どれも逸品ぞろい。棟方志功など日本の作家や現代作家の作品も展示している。

2012年には、別館として新たに「山手館(夢の箱)」が完成。こちらも安藤忠雄氏が設計を手がけたもので、随時企画展などが開催されている。

アサヒグループ大山崎山荘美術館の庭園

自然豊かで四季折々の景色が楽しめるのもアサヒグループ大山崎山荘美術館の魅力のひとつ。春はなんといっても桜。シダレザクラにはじまり、ソメイヨシノやヤエザクラなどが順に花を咲かせるという。

大山崎山荘美術館 桜
大山崎山荘美術館 桜

そして、夏になると池の睡蓮が花開く。「睡蓮は『地中館』の入口付近の池にも咲いています。モネの『睡蓮』とリアルな睡蓮を見比べる、という楽しみ方もあります」と太田さん。

大山崎山荘美術館 紅葉

秋には、山全体が色づく紅葉も見事。

青空に映える紅葉と建物

冬はツバキやサザンカなどを楽しむことができ、時には一面、雪に覆われることもあるそうだ。季節ごとの様々な表情に出会ってみたい。

アサヒグループ大山崎山荘美術館のカフェ

館内にはカフェがあり、鑑賞のひと休みにぴったり。

ここで味わいたいのが、企画展にあわせてつくられる特製スイーツ。リーガロイヤルホテル京都のパティシエと担当学芸員が話しあって生み出す渾身の品で、取材時には展覧会「受贈記念:没後10年 舩木倭帆展」にちなみ、舩木作品の透明なガラスを通る光を彷彿とさせるデザート「透きとおる青」が。

大山崎山荘美術館 「透きとおる青」
※時期により内容は異なる。こちらの「透きとおる青」は、展覧会「受贈記念:没後10年 舩木倭帆展」にあわせて2023年12月3日までの提供。

天気がよい日には、木津川、宇治川、桂川の三川を望む絶景のテラス席でゆっくりとケーキやコーヒーを楽しむのもいい。川を挟んだ向こうには、石清水八番宮が鎮座する男山も。そして眼下には、四季折々の表情を見せる庭園。この見事な眺望も「作品のひとつ」と言ってもいいかもしれない。

アサヒグループ大山崎山荘美術館のグッズ

美術館を訪れたら、ミュージアムショップも覗いてみよう。売れ筋なのは「マスキングテープ」。その時に開催されている展覧会にちなんだデザインが登場するのだそう。

大山崎山荘美術館 ショップ

太田さんのおすすめは、収蔵品がモチーフのオリジナルTシャツ。ほかにも、キーリングやバッジ、「熟成ビールケーキ」など様々なグッズが販売されているので、忘れずに立ち寄ろう。

大山崎山荘美術館 キーリング

アサヒグループ大山崎山荘美術館の基本情報(開館時間、料金など)

スポット名アサヒグループ大山崎山荘美術館
料金一般料金は展覧会により異なる。高大学生500円、中学生以下無料
時間10:00~17:00(入館は~16:30)
休み月曜(祝日の場合は開館、翌日休)※臨時休館あり。
問い合わせ075-957-3123(総合案内)
アクセス阪急大山崎駅→無料送迎バス、または阪急大山崎駅下車 約14分
住所大山崎町銭原5-3【MAP
URLhttps://www.asahigroup-oyamazaki.com/

アサヒグループ大山崎山荘美術館周辺のランチ情報

アサヒグループ大山崎山荘美術館とあわせて行きたい、おすすめランチのお店もご紹介!ぜひご参考に。

本格フレンチ・イタリアンのランチを堪能。「Restaurant Tagami(レストラン タガミ)」

有名ホテルで修業を積んだシェフが生み出す本格フレンチ・イタリアンがおいしいと話題の人気店。自慢のコースランチでは、旬の食材や地元産の野菜をふんだんに使用した彩り豊かな逸品が味わえる。

タガミのランチ

平日限定「マダムランチ」は、モチモチ食感が楽しめる生パスタやデザートプレートまでがセットになった贅沢な内容で2,480円とリーズナブル。土日祝は「ホリディスペシャルランチ」2,780円でゆったりと食事を楽しむのも◎。

タガミのランチ

阪急大山崎駅から徒歩2分とアクセス便利な立地なので、美術館とあわせて訪れてみてはいかが。

タガミのテラス席
スポット名Restaurant Tagami(レストラン タガミ)
時間11:15~14:30、18:00~22:00(LO21:00)
定休日月曜
問い合わせ075-951-5081
アクセス阪急大山崎駅下車すぐ
住所大山崎町大山崎竜光53-1 【MAP
URL https://r-tagami.com/

おしゃれな人気カフェ「Hermit Green Cafe 大山崎店(ハーミットグリーンカフェ)」

こちらも阪急大山崎駅からほど近い人気カフェ。2階建ての一軒家をリノベーションしたという店内は、おしゃれでありながらカジュアルな雰囲気で居心地抜群。

ハーミットグリーンカフェのランチ

季節の食材を使用した「パスタランチ」、肉の旨味たっぷりの「ハンバーグランチ」、モチモチ生地の「ピッツァランチ」など、ランチメニューもバラエティ豊か。前菜、サラダ、スープがセットで付いてくるのも嬉しいポイント。

ハーミットグリーンカフェのスイーツ

デザートも提供しているので、美術館帰りのティータイムにもおすすめ。癒やしのひと時を過ごそう。

ハーミットグリーンカフェの内観
スポット名Hermit Green Cafe 大山崎店
時間11:00~22:00(LO21:30)
定休日無休
問い合わせ075-468-8737
アクセス阪急大山崎駅下車すぐ
住所大山崎町大山崎明島15【MAP
URL http://www.hermitgreencafe.com/

大山崎周辺のグルメをもっと知りたい人は<こちらから!>

大山崎駅から一駅、西山天王山駅から行けるサントリーのビール工場見学は<こちらから!>

まとめ

アサヒビール大山崎山荘美術館は、レトロな洋風建築や四季折々の自然を楽しめる庭園、安藤忠雄設計の建築物にモネの『睡蓮』と見どころ多数。ひと休みには、館内のカフェでスイーツを堪能しながらリラックス…。日々の喧騒を忘れて癒やしのひと時を過ごせるスポット、ぜひ訪れてみて。

なお、アサヒグループ大山崎山荘美術館では2023年12月3日(日)まで展覧会「受贈記念:没後10年 舩木倭帆展」を開催中。2023年12月16日(土)~2024年2月25日(日)には展覧会「藤田嗣治 心の旅路をたどる―手紙と手しごとを手がかりに」の開催を予定しています。展覧会の最新情報はこちらからチェック

この記事を書いたのは… TOKK情報部
「TOKK情報部」は、TOKKの読者から構成されている組織です。大阪・兵庫・京都の阪急沿線エリアを中心に、関西で長年暮らしているメンバー揃い。年代、性別もさまざま。グルメ/観光/エンタメ/歴史/アート/イベントなど、様々なジャンルに興味・関心をもち、沿線ライフを日々楽しんでいる「TOKK情報部」が、TOKK読者ならではの目線で取材した記事をお届けします。

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京都在住。休日の過ごし方はもっぱら京都のまち歩き。美術館や社寺、お笑いライブがとくに好き。花より団子。

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