メイド・イン・関西の調味料 阪急沿線調味料図鑑【TOKK2023年8月号】
2023.07.25特集
関西の“おいしさ”を支えてきた調味料・ソース、ぽん酢、味噌。その歴史を紐解きながら、沿線で愛される名品を一挙にご紹介。
毎日の食事がさらにおいしく、夏の食欲を刺激する!
文化や風土と結びつき、関西の食を支える名脇役に
関西といえば調味料にこだわりのある人が多い。関東よりもソースやぽん酢の売り場は充実し、正月を控えた12月には白味噌の売上が急上昇。料理で幾つも使い分けたり、推しの銘柄を一途に使い続ける人もいるほど。
都が置かれた京都、天下の台所・大阪、港町・神戸を擁す関西は、古くから各地の食材が集まり、食文化が大きく発展した。日本の食の要でもある「だし文化」は、北海道から北前船で運ばれた昆布が大阪に集積したことが起源。だしの「うま味」で食材本来の味を引き出す文化が根付き、今や「UMAMI」は世界共通用語に。昆布だしで炊く「てっちり」や「湯豆腐」など、水炊きの味を最後に各自で整えるぽん酢が親しまれるのも納得。また、味噌は地域により種類や味が異なるが、白味噌に代表される関西の味噌は、低塩でだしに合うように醸し、素材自体を楽しむことができる。
外国の食文化や食材が豊富にもたらされた神戸では、洋風のソース文化が花開く。粉もんが多い関西で、その味を決めるソースが浸透したのもうなずける。
いずれも銘柄によって味わいは様々。新たな推しを探してみるのも楽しそう。
関西の【ソース】野菜とスパイスのうま味が凝縮
関東は中濃ソース、関西はウスター&甘口濃厚ソースと地域性の違いが色濃いソース。一般的なのはウスターソースで、イギリスのウスター市が発祥とされる。日本では醤油(しょうゆ)のようにかけて使うなど独自に進化を遂(と)げた。
現存する日本最古のソースメーカーとされる「阪神ソース」では、初代がドイツ人教授に「神戸にはおいしい肉はあるのに、なぜおいしいソースがないのか」と問われたことから研究を重ね、1885年にソースを作り上げたそう。当時はソースへの理解が広まっておらず、藩医の家系に育ち、医学に精通した初代は、薬屋さんに販売を託していたとか。
その後、関西にソースの製造会社が増えていくが、今も多いのが神戸。神戸全6社の地ソースをメインにそろえる「ユリヤ」の店主・中島さんは、「神戸港があり良質なスパイスが豊富だったことが一因では」という。
味の特長としては神戸がスパイシーで、大阪は甘め、京都はうま味の強いものが多いなど関西の中でも差があるそう。家族経営の小さなソースメーカーも多いので、あれこれ食べ比べながら、ソース文化を盛り上げたい。
阪神ソースの「敬七郎」
1885年創業、国内屈指の老舗(しにせ)ソース会社。初代の名を冠したウスターソースは、1897年のレシピをベースに保存料などは使わず、野菜や果実など厳選した材料のみで仕上げる。特長的な酸味と後を引くスパイスの香りは、唯一無二。まずは目玉焼きなどシンプルな料理で、ソースそのものの味を堪能したい。
【おすすめの料理】
チキンカツ、薄めのヒレカツ、ピラフのアクセント
問い合わせ | 078-453-1111 |
URL | http://www.hanshinsauce.jp/ |
プリンセスソースの「とんかつ」
阪急王子公園駅の高架下にある工場で、店主1人で切り盛り。店名は、場所にちなんだ「プリンスソース」がすでに商標登録されていたため「王女」に。とろっと甘くフルーティーな「とんかつ」ソースは、タマネギと隠し味のニンニクが味の決め手。うまさの中にパンチが利いてお好み焼にもおすすめ。
【おすすめの料理】
とんかつ、たこ焼、お好み焼、串カツ
問い合わせ(平山食品) | 078-861-4050 |
ツバメソースの「オリソース」
1930年に京都・東寺近くで創業。9種ある同社のソースの中でも「オリソース」は“超”辛口! 原料は、スタンダードなウスターソースを熟成させる際にタンクの底に溜まる“澱(おり)”の部分。溶け残り沈殿した香辛料や原材料のうま味が濃厚でやみつきに。
【おすすめの料理】
お好み焼などの甘口ソースに混ぜて、牛スジとネギの炒め物にかけて
問い合わせ(ツバメ食品) | 075-681-5796 |
URL | https://tsubamesauce.com/ |
イカリソースの「イカリソースレトロ」
関西を代表する老舗調味料メーカーが手間を惜しまず作り上げ、1955年頃のスパイシーな味を再現。香辛料はレギュラーソースの2倍使用し、1カ月以上熟成させることで豊かなスパイス感を楽しめる。洋食との相性も抜群!
【おすすめの料理】
ハンバーグ、デミグラスソースにかけて、カキフライ、アジフライ
問い合わせ | 06-6453-1480 |
URL | https://www.ikari-s.co.jp/ |
上記のソースがすべて買える!約20ブランド100種以上がずらりと並ぶ“ソースの聖地”へ
お好み焼の街・長田にある食料品店。店頭には「ばらソース」や「ニッポンソース」など、神戸を中心とした地ソースの小瓶や一升瓶が整列する。震災で神戸を離れた人のリクエストで扱いが増えたそう。チョイスに迷ったら、ソースの味を知り尽くした店主・中島さんに相談を。
店名 | ユリヤ |
時間 | 10:00~19:00 |
定休日 | 日曜・最終土曜 |
問い合わせ | 078-577-0231 |
アクセス | 神戸高速線高速長田駅下車すぐ【MAP】 |
住所 | 神戸市長田区五番町8-1-6 |
URL | https://www.yuriya.co.jp/ |
関西の【ぽん酢】どんな料理にもマッチ
爽やかな風味の万能調味料。食品区分では、柑橘類の果汁に酢を加えたものが「ぽん酢」で、一般的にイメージする醤油などを加えたものは「味付けぽん酢」、「ぽん酢醤油」などとされることが多いのだとか。
語源は、江戸時代にオランダから長崎に伝わった柑橘果汁入りの酒「pons(ポンス)」に“酢”の文字を当てた説が有力で、水炊きを好む関西に伝わって定着した。神戸に本社を置くマルカン酢のぽん酢売上比率は、関西約65%、関東約35%と関西が圧倒的だそう。
作り手は醤油蔵や酢メーカーなど様々で、柑橘類もユズやスダチ、カボスなど味の個性が豊かなのも特長だ。
だしが決め手の「狐白軒」のぽん酢も、キリッと酸味が利いたものと、まろやかなものの2種。店主の吉田さんに聞くと、酢が苦手な人が意外に多く、柔らかな風味のぽん酢を開発したのだそう。色々な人の好みに合う、多彩な味で展開できるのもぽん酢が愛される理由かも。ひとかけで素材の味を引き出し、料理を格上げしてくれる頼れる存在だ。
マルカン酢の「お酢屋がつくった すだちぽん酢」
神戸の老舗酢メーカーの看板商品は、自慢の純米酢による風味が圧倒的。純米酢のうま味を生かして、シンプルな配合が可能に。1本で12個も使用する徳島産スダチの果汁感や、北海道産真昆布と焼津産かつお節のコク深いだしがうま味を底上げし、梅酢の特徴的な酸味と塩味が力強さをプラスする。
【おすすめの料理】
鍋物、マリネ、カルパッチョ、焼魚などの魚料理
問い合わせ | 078-857-0501 |
販売場所 | 阪急オアシス、イズミヤ、いかりスーパー など ※取り扱いは各店舗により異なる。 |
URL | https://www.marukan.com/ |
澤井醤油本店の「さわいさんちの京ぽんず」
1879年創業の醤油蔵の売れ筋。木桶で醸造したうま味の強い再仕込醤油と繊細な淡口醤油をブレンドし深みのある味わいに。柑橘は、店主夫妻の好きなグレープフルーツを使うのが特長。独特の苦みを抑え、ユズやスダチ、リンゴ酢を配合した爽やかな一品。
【おすすめの料理】
大根おろし、炒め物、サラダのドレッシングとして
時間 | 9:00~17:00(日曜・祝日は10:30~15:30) |
定休日 | 不定休 |
問い合わせ | 075-441-2204 |
アクセス | 阪急烏丸駅→地下鉄・丸太町駅下車 約11分【MAP】 |
住所 | 京都市上京区仲之町292 |
URL | http://sawai-shoyu.shop-pro.jp/ |
狐白軒の「宝塚つつじガ丘のぽん酢 すっきりさん(左)・まろやかさん(右)」
天然羅臼昆布と枕崎の本枯節の一番だしで店主が手作りする味は「飲めるぽん酢」と評判。スダチとユコウでさっぱり仕上げた「すっきりさん」と、鳥取産の有機栽培ユズとカボスを使った酸味が柔らかい「まろやかさん」の2種。醤油やみりん、酢も伝統の醸造法によるものを厳選し、だしのうま味が強いクリアな後味に。
【おすすめの料理(すっきりさん)】
刺身などの魚料理、冷奴、サラダ、蒸し野菜
【おすすめの料理(まろやかさん)】
しゃぶしゃぶ、焼肉などの肉料理、サラダ、蒸し野菜
インフォ | 購入は電話、メール、Instagramのメッセージで要相談 |
定休日 | 不定営業 |
問い合わせ | 090-1919-8595 |
アクセス | 阪急雲雀丘花屋敷駅下車 約16分、または阪急バス・つつじが丘停下車すぐ【MAP】 |
住所 | 宝塚市花屋敷つつじガ丘1-19 |
@kohakuken | |
URL | wastyleyoshida.jimdofree.com |
関西の【味噌】日本人のおふくろの味
日本を代表する発酵調味料。蒸した大豆に麹と塩を加えて発酵させるのが基本の製造法だが、地域によって米や麦などの原料や製法が異なり、色や味など幅広いのも魅力。
関西の味噌といえば、新年の雑煮で知られる白味噌。平安時代には親しまれていたとされる。甘み成分となる米麹をふんだんに使い、短時間で熟成させるため、甘く、美しいクリーム色に。1830年の創業時から宮中に味噌を献上していた「本田味噌本店」の広報・田中さんによると、当時貴重だった米をたくさん使う白味噌は、宮中のハレの儀式などで重用されたらしいとのこと。まさに華やかな都で育まれた調味料だ。
米を多く使う味噌は大阪にも。「米忠味噌本店」の「特製赤みそ」は、同店が江戸時代から米問屋を営んだことから誕生し、当時富を握った商人が楽しんだ贅沢(ぜいたく)な逸品。赤味噌と聞いてイメージする固い赤褐色の八丁味噌とは異なり、甘みとうま味の強い米味噌だ。ルーツを知りながら味わうのもまた美味なり。
本田味噌本店の「西京白味噌」
創業から約200年技術を受け継ぎ、味噌作りを行う。「西京白味噌」は江戸を「東京」、京都を「西の京(西京)」とも呼んだことが名前の由来。米麹を大豆の2倍使い、20日程度と短期間で熟成させ、塩分は約5%と低く抑える。繊細な甘味は精進料理などのあっさりした昆布だしによく合い、雑煮にすれば絶品。赤味噌などとブレンドしたり、ナスの田楽や鱧に添える酢味噌にしても格別だ。和菓子に用いられることも多く、同店では白味噌のフィナンシェなど洋菓子も開発。伝統を守りつつ、時代に合わせた味噌の楽しみ方を提案する。
【おすすめの料理】
雑煮、酢味噌和え、田楽、西京漬
時間 | 10:00~18:00 |
定休日 | 日曜休 |
問い合わせ | 075-441-1131 |
アクセス | 阪急烏丸駅→地下鉄・今出川駅下車 約6分【MAP】 |
住所 | 京都市上京区小島町558 |
URL | https://www.honda-miso.co.jp/ |
米忠味噌本店の「特製赤みそ」
堂島米市場の対岸で江戸時代中期から米問屋を営み、1820年に味噌店に。米麹を惜しみなく使った元米問屋ならではの「特製赤みそ」は、大阪商人の伝統の味。最上級の国産素材を1年以上長期熟成させるため、甘口ながら“だしいらず”と言われる芳醇(ほうじゅん)なうま味が際立つ。夏季はキュウリとゴマを浮かべた冷製味噌汁でぜひ。
【おすすめの料理 】
味噌汁(魚介類入り)、煮魚、豚肉の炒め物
時間 | 9:30~18:00 |
定休日 | 土・日曜・祝日は休、8月11~16日休 |
問い合わせ | 06-6441-2266 |
アクセス | 阪急大阪梅田駅→地下鉄・肥後橋駅下車すぐ【MAP】 |
住所 | 大阪市西区江戸堀1-8-12 |
URL | https://www.komechu.jp/ |
六甲みその「芦屋そだち 米赤こし味噌」
芦屋で親しまれる1918年創業の味噌蔵。提携農家の米のほか、大豆や塩までも兵庫産にこだわる「米赤こし味噌」がイチオシ。熟練の職人が手間をかけて作った米麹に、同量の大豆を合わせて黄金色になるまで天然醸造した味噌は、甘味とうま味のバランスが抜群。だしに合うよう塩分は低めで、滋味深い味と香りがしっかりと堪能できる。
【おすすめの料理 】
味噌汁、餃子・からあげのタレ、肉みそ、おにぎり
時間 | 9:00~12:00、13:00~17:00(10~3月の土曜の午後は~16:00) |
定休日 | 土・日曜・祝日は休(10~3月の土曜は営業)、8月11~15日休 |
問い合わせ | 0797-32-6111 |
アクセス | 阪急夙川駅下車 約19分、または阪急大阪梅田・今津・神戸三宮各駅→阪神電車・打出駅下車 約8分【MAP】 |
住所 | 芦屋市楠町11-16 |
URL | https://www.rokkomiso.co.jp/ |
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