<京都・大阪・神戸>街のミュージアムを訪ねて地域文化にふれる【TOKK2022年6月号】
2022.05.25特集
小規模ながらも、その土地に根差した文化や歴史までも感じることができるのが街のミュージアム。
やきものの産地に建つ記念館から、阪急電車ゆかりの場所に建つ美術館、新設された文化施設まで、京都・大阪・神戸のミュージアムを紹介します。
目次
やきものの街【京都・清水五条】河井寛次郎記念館
清水焼の地で、河井寛次郎の創作と暮らしの場にひたる…
京都の清水寺周辺は、京都の伝統工芸の一つ・清水焼の産地として知られるエリア。30歳の時に窯を譲り受けて以降、この地に創作と生活の場を構えたのが陶芸作家の河井寬次郎。家族とともに生活し、作品づくりを続けた自宅兼工房を50年にわたり、親族が維持管理し、記念館として一般公開している。
寬次郎が自ら設計したという自宅に、陶芸作品のほか、晩年意欲的に取り組んだという木彫作品などが展示され、来館者は作品の合間を縫うようにして鑑賞できるのが何ともぜいたくに感じる。居間や食卓、家族の寝室などがあった2階、工房や窯までほぼ全てが開放され、一通り見て回った後は、囲炉裏のそばの椅子に腰かけて休憩する。日本を代表する陶芸作家の生活と創作の場であったところに座り、往時の雰囲気までも肌で感じ取れるのが魅力だ。
技巧的作品から抽象まで、寛次郎の作風を振り返る
島根県の出身、大工の父親のもとに次男として1890年に生まれた河井寬次郎。24歳の時に京都市立陶磁器試験場に入り、研究制作に打ち込んだ。現在地に居を構え、作家となったのが30歳、その1年後には〝陶界に現れた彗星(すいせい)〟と人気作家の仲間入りを果たす。特に陶磁器試験場で磨いた釉薬の技術が高く、美しい色合いの技巧的な作品が評価されるが、寛次郎自身は創作に迷った末にその作風を封印したという。
日用品に用の美を見出した民芸運動に参加したのちは、暮らしを意識した作風となり、戦後は抽象的なものへと変化していく。
寬次郎は、生活と創作は常に一緒に存在すると考え、学芸員で孫にあたる鷺(さぎ)さんも「祖父は生活と仕事の区別をしなかった。24時間、混然一体となっていた」と話す。また、「この家には作家も一般の人たちも始終、色々な人が出入りし、囲炉裏の周りで語り合っていました。毎晩、御飯を何人分用意するのか分からなくて、祖母は本当に忙しかったと思います(笑)」とも。
記念館では、所蔵する作品約200点を3カ月ごとに入れ替え、常時50~60点を展示している。人々の日常生活の中に美を見出した寬次郎の視点は、コロナ禍で長期間に渡り生活を見つめなおした私たちに大きなヒントを与えてくれる。
スポット名 | 河井寛次郎記念館 |
料金 | 一般900円、高大生500円、小中生300円 |
時間 | 10:00~17:00(入館は~16:30) |
定休日 | 月曜休 |
問い合わせ | 075-561-3585 |
アクセス | 阪急京都河原町駅→市バス・馬町停下車 約2分 |
住所 | 京都市東山区五条坂鐘鋳町569【MAP】 |
URL | http://www.kanjiro.jp/ |
[ちょっと寄り道]石川製陶所
記念館の周辺は清水焼の生産地として窯元が集まる。代金を木箱に入れ、自分で包装して持ち帰る、無人販売される陶器を見るのも楽しみの一つ。
スポット名 | 石川製陶所 |
時間 | 10:00~16:00 |
定休日 | 不定休 |
問い合わせ | 075-561-6047 |
京都屈指の景勝地【京都・嵐山】福田美術館
京の景勝地を華やかに彩る日本画の名作を堪能
景勝地としての嵐山の歴史は長く、7世紀の桓武天皇の頃に遊興の地として始まったとされる。大堰川対岸に位置する亀山公園から見る風景は、平安時代とほぼ変わらないともいわれ、多くの人を惹きつけるのは今も昔も同じ。
窓から渡月橋を望めるロケーションが、特別感を感じさせる場所に「福田美術館」がオープンしたのは2019年。京都で得たものを、地元でかえしたいという創業者の思いから始まり、約15年の構想を経て完成した。
所蔵品は「初めて美術館を訪れる人でも一目で美しいと共感できる作品」をコンセプトに収集され、特に横山大観、上村松園、竹内栖鳳による優美な作風の美人画、近年注目を集める伊藤若冲などがコレクションの中心を占める。
学芸員の岡田さんは「日本画の入り口とするにはピッタリの巨匠たちの作品を通じて、美術に関する知識、感動など、何か持ち帰ってもらえるような展示を目指しています」という。嵐山は観光だけでなく、日本画の大家の作品とも出合える場所なのだ。
[絶景とスイーツ]ミュージアムカフェ「パンとエスプレッソと福田美術館」
ミュージアムカフェ「パンとエスプレッソと福田美術館」の「福」のロゴをあしらった「季節の福パフェ」1,200円と「アイスコーヒー」500円。
スポット名 | 福田美術館 |
料金 | 一般・大学生1,300円、高校生700円、小中生400円 |
時間 | 10:00~17:00(入館は~16:30) |
定休日 | 火曜休(祝日の場合は開館、翌日休) |
問い合わせ | 075-863-0606 |
アクセス | 阪急嵐山駅下車 約15分 |
住所 | 京都市右京区嵯峨天龍寺芒ノ馬場町3-16【MAP】 |
URL | https://fukuda-art-museum.jp/ |
企画展情報「やっぱり、京都が好き~栖鳳、松園ら京を愛した画家たち」
近世から近代の京都画壇の作品を中心に、京都にゆかりの絵画を展示する。画家の目を通して描かれた、嵐山の桜と紅葉、舟あそびや、祇園祭、壬生狂言、市井(しせい)の人々と、京都の風物や歳時記が一堂に会する絢爛(けんらん)豪華な展覧会。2022年7月3日(日)まで。
TOKKでは読者プレゼントとして、『福田美術館』の「やっぱり、京都が好き 招待券」をペア5組にプレゼント。 応募締切は2022年6月13日(月)。応募は ページ下の「プレゼント応募」バナーをクリック。
阪急ゆかりの街【大阪・池田】逸翁美術館
阪急阪神東宝グループ創業者の美意識に触れる
阪急電鉄をはじめとする阪急東宝グループ(現阪急阪神東宝グループ)の創業者・小林一三が生前に集めた美術コレクションを年4回の企画展を通じて展示、紹介している「逸翁美術館」。池田駅から徒歩約10分のところに建つ美術館周辺には、小林一三の旧邸・雅俗山荘、宝塚歌劇や阪急電鉄の資料などを保存公開する「池田文庫」もあり、阪急電鉄とは特にゆかりの深い場所。私鉄経営の礎を築いた事業家として注目されることも多い小林一三だが、芸術に関する造詣も深く、茶人逸翁としても知られた。
「電車の利便性と暮らしを豊かにする娯楽など、相反する事柄を両輪で回し続けながら沿線開発を行ったのが小林一三です」と話すのは、同館の館長である仙海さん。常に”人を楽しませる”ことを基本とし、宝塚歌劇、百貨店、野球チームなどが実現されていく。そして茶道具のコレクションからも”人を楽しませる”という意識が感じられるそう。例えば、茶器のコレクションには、ウェッジウッドのフィンガーボールも含まれており、欧米旅行で買い求めたものを茶席をともにする客人に合わせ準備したのだという。型にはまらない、オリジナリティーあふれる美意識で集められた名品を鑑賞しに、ぜひ足を運んでみて。
スポット名 | 逸翁美術館 |
時間 | 10:00~17:00 |
定休日 | 月曜休 |
問い合わせ | 072-751-3865 |
アクセス | 阪急池田駅下車 約10分 |
住所 | 池田市栄本町12-27【MAP】 |
備考 | 「蕪村 時を旅する」大人700円、高大生500円、「ひゅうどろどろ 怪奇まつり 歌舞伎に出てくるオバケだぞ~」大人700円、高大生500円 |
URL | http://www.hankyu-bunka.or.jp/itsuo-museum/ |
[ちょっと寄り道]小林一三記念館
小林一三の暮らした邸宅を公開している小林一三記念館も併せて見学を。
スポット名 | 小林一三記念館 |
料金 | 300円、中学生以下無料 |
時間 | 10:00~17:00(入館は~16:30) |
定休日 | 月曜休(祝日の場合は開館、翌日休) |
URL | http://www.hankyu-bunka.or.jp/kinenkan/ |
企画展情報「蕪村 時を旅する」
「時を捉える」「時を想う」「時を旅する」の3部構成で与謝蕪村の作品の魅力を解き明かす。蕪村が敬愛する松尾芭蕉の『奥の細道』の全文を書写した「奥の細道」も全巻公開。2022年6月26日(日)まで。
企画展情報 「ひゅうどろどろ 怪奇まつり 歌舞伎に出てくるオバケだぞ~」
歌舞伎役者を描いた浮世絵、役者絵から妖怪や幽霊など怪しげなモノをテーマごとにそろえ展示する。暑い夏にちょっと涼しくなれる企画展。2022年7月16日(土)~9月4日(日)。
TOKKでは読者プレゼントとして、 『逸翁美術館』の「ひゅうどろどろ 怪奇まつり 招待券」をペア10組にプレゼント。 応募締切は2022年6月24日(金)。応募は ページ下の「プレゼント応募」バナーをクリック。
山と海がみえる街【神戸三宮】こども本の森 神戸
神戸の街で、本と出合う
人の営みをテーマにした1階、子どもたちに知って欲しい知識をテーマにした2階からなる「こども本の森 神戸」。床から天井まである本棚には、山と海に囲まれた神戸らしく、生き物、自然をテーマにしたコーナー、国際都市・神戸にちなんだ多言語の絵本などもそろう。斬新な本の展示方法でも話題になっているが、上段で展示している本は全て、下段にも同じものが用意され、小さな子どもでも簡単に手に取ることができる。大人も読み返したい名作から、専門的なジャンルに着目した絵本まで、見応えあるラインアップに思わず時間を忘れてしまう。
スポット名 | こども本の森 神戸 |
料金 | 無料 |
時間 | 9:30~17:00(現在は予約の方のみ入館可) |
定休日 | 月曜休(祝日の場合は開館、翌日休) |
問い合わせ | 078-325-1125 |
アクセス | 阪急神戸三宮駅下車 約11分 |
住所 | 神戸市中央区加納町6-1-1【MAP】 |
URL | https://kodomohonnomori-kobe.jp/ |
酒と文化の薫る街【伊丹】市立伊丹ミュージアム
伊丹の主要文化施設が郷町(ごうちょう)に集まり、再スタート!
江戸時代、酒で財を成した酒造りの街・伊丹。4月22日にオープンした「市立伊丹ミュージアム」は、単体の施設ではなく、「柿衞(かきもり)文庫」、美術館、工芸センター、伊丹郷町館があったエリアに、博物館の機能が新たに加わり、この一帯を〝市立伊丹ミュージアム〟として整備したもの。
訪れた人は、美術、俳諧、歴史、工芸に同時に触れられるのが魅力。伊丹の文化をギュッと凝縮したスポットとして再び注目を集めている。
スポット名 | 市立伊丹ミュージアム |
料金 | 料金は展覧会により異なる |
時間 | 10:00~18:00(入館は~17:30) |
定休日 | 月曜休(祝日の場合は翌日) |
問い合わせ | 072-772-5959 |
アクセス | 阪急伊丹駅下車 約10分 |
住所 | 伊丹市宮ノ前2-5-20【MAP】 |
URL | https://itami-im.jp/ |
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企画展情報「ヨシタケシンスケ展かもしれない」
2013年に『りんごかもしれない』で絵本作家としてデビュー、国内外で高い評価を受けるヨシタケシンスケの初の大規模回顧展。2022年7月15日(金)~8月28日(日)。
料金 | 一般1,000円、高大生700円、小中生400円 |
時間 | 10:00~18:00(入館は~17:30) |
URL | https://yoshitake-ten.exhibit.jp/ |
TOKKでは読者プレゼントとして、「市立伊丹ミュージアム」の「ヨシタケシンスケ展かもしれない 招待券」をペア3組にプレゼント。 応募締切は2022年6月24日(金)。応募は ページ下の「プレゼント応募」バナーをクリック。
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