<天神祭編>守り継ぎ、祭りを支える伝統の技。匠の技を紐解く祇園祭・天神祭【TOKK2025年7月号】

絢爛豪華な懸装品、夜空を彩る奉納花火、祭りのムードを盛り上げる提灯。
華やかな舞台の裏で祭りを支える職人たちの技を知る。

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<祇園祭編>守り継ぎ、祭りを支える伝統の技。匠の技を紐解く祇園祭・天神祭

匠の技を紐解く天神祭 開催期間:7月24日(木)・25日(金)

大阪の夏を彩る行事。学問の神様・菅原道真公を祀る大阪天満宮を中心に、2日間にわたって様々な神事が行われる。

祭りのハイライトは、25日の陸渡御(りくとぎょ)と船渡御(ふなとぎょ)。華やかな衣装に身を包んだ大行列が街を練り歩き、御神霊を乗せた船を中心に約100隻が川を行き交う。夜は提灯やかがり火が灯される中、奉納花火がフィナーレを飾る。

陸渡御の観覧、神事・祭礼

場所大阪天満宮
問い合わせ06-6353-0025
アクセス阪急大阪梅田・天神橋筋六丁目各駅→地下鉄・南森町駅下車すぐ
住所大阪市北区天神橋2-1-8【MAP

船渡御・奉納花火の観覧

場所天神橋・桜宮橋付近ほか
日時7月25日/日没〜21:00頃
アクセス阪急大阪梅田・天神橋筋六丁目各駅→地下鉄・南森町駅下車 約8~14分【MAP

花火

お話を伺ったのは

葛城煙火 喜田真史さん
大学の学祭で見た打ち上げ花火をきっかけに、花火づくりを仕事にしようと決意し入社。天神祭の花火のプログラム構成や打ち上げ現場の監督を務める。

奉納花火の製作は1月から

祇園祭と同じく日本三大祭りの一つである天神祭。御神霊への奉納と感謝を込めて打ち上げられる奉納花火は、夏の盛りの大阪の街ににぎわいを添えている。

この天神祭の奉納花火を担当しているのが、1950年創業の葛城煙火。天神祭用の花火の製造は奈良にある工場で1月からスタートする。まず取り掛かるのは、花火の色や形となる〝星〟作り。球体型の機械に粘度のある火薬を入れて回転させ、遠心力で丸くし、天日干しする。これを何度も繰り返し、1㎜ずつ大きな球体にしていく。一度に大きくすると割れやすいためだ。

星ひと粒が花火の光のひと粒になる。

次に行う玉込め作業は、機械化が難しくすべて職人が手作業で行っている。玉の半分それぞれに規則正しく星を並べ、その中心に着火剤となる火薬を詰めるのだが、「ポイントは程良い隙間を作ること。そうすることできれいに割れます」と喜田さん。そのさじ加減は、職人が何度も繰り返し作った経験で得られるものだ。

最も神経を集中させる打ち上げ現場

天神祭で使用される花火玉は野球ボールくらいのサイズ。打ち上げ花火の中では小ぶりだが、打ち上がると直径50〜60mにもなる。

奉納花火のプログラムは毎年変更を加え、どのパートも豪華になるように構成しているそう。プログラムを管理しているのは、煙火筒の番号と玉の種類、100分の1秒まで設定した打ち上げ時間を、ごく簡単にまとめたパソコン上の表のみ。素人が見てもさっぱり分からないが、職人ともなればこの表を見ただけでどのように打ち上がるのか頭の中で描けるという。

祭り当日、喜田さんたちは朝8時に現場に入る。暑い日差しが降り注ぐ中、2カ所の打ち上げ場所に約3千本の煙火筒を設置していく。日が暮れ、いよいよ花火が始まると、職人たちは花火のでき映えを確認しているのだろう……と思いきや、「火の粉の監視」という重要な役割があるそうだ。「どんな現場でも、安全に催行することが一番の仕事」と、喜田さんは真剣な目で言う。

そんな緊張感のある現場の職人たちの励みになっているのが、観客の声。「コロナ禍に無観客で花火を打ち上げたことがあるんです。静かな現場は心寂しく、祭りは観客がいてこそと、実感しました」。いよいよ訪れる暑い夏。今年も職人たちが手がけた奉納花火が町を活気づける。

【祭りでチェック!匠の見どころ】

梅鉢の花火
大阪天満宮の社紋である梅鉢の形をした花火を約15発打ち上げる予定です。ぜひ見つけてください!

クライマックス
打ち上げ数全体の約3割を終盤に集中して打ち上げ、盛大に祭りを締めくくります。

提灯

お話を伺ったのは

提灯舗かわい 河合清司さん(左)、浩司さん(右)
戦火により創業の記録は残っていないが、安政5(1858)年にはこの地にあったという老舗。
6代目の兄の清司さんは文字、弟の浩司さんは図柄の筆入れを担当。

伝統の提灯に職人が息を吹き込む

神社や店舗の飾り用としての注文が多いそう。

夏祭りのムードを盛り上げる提灯。天神祭では大阪天満宮をはじめ、町内や船渡御などで数万点におよぶ提灯が飾られる。「昔はこのあたりにいくつか提灯屋があってね。今では上方提灯を大阪で製造しているのは、当社のみとなりました」と話すのは、提灯舗かわいの6代目・河合清司さん。手すきで作られた島根県の石州半紙を使い、「地張」と呼ばれる伝統的な工法を代々守り続けている。素材や工法を変えて安価なものも出回っているが、丈夫さが違うのだという。上方提灯に触ってみると確かにハリがあり、人のぬくもりも感じられる。

天神橋筋商店街の大きな提灯も同店が製作

2人が担当するのは筆入れ。「描く時は息を止めて無になります。雑念が少しでも入ると、指先から筆へと伝わってしまうんです」と弟の浩司さん。2人は修業時代、お手本の字を徹底して観察し、止め、はらい、力加減などを読み解き、基礎を体に叩き込んだ。立体的な提灯にバランスよく文字や絵を配置し狂いなく描けるのは、長年の鍛錬の賜物だ。

「奈良にいるうちの職人が竹を切り割って芯を作り、和紙を貼り付けています」と浩司さん。

今年1月からは、テレビで見た同店の提灯作りに感銘を受け2人の元に飛び込んだという美馬さんが描き手として加わり、新たな一歩を踏み出した。灯を絶やさず、これからも伝統を繋いでいくことだろう。

「描くのが楽しくて」と笑顔の美馬さん。

祭りでチェック!匠の見どころ

町ごとに異なるデザイン
祭りの期間中掲げられる提灯は、町によって文字やデザインが違います。それぞれに意味があるので観察すると楽しいですよ。

町民の活気
年に一度楽しみにしているハレの日。町全体の高揚感を会場で体感してください。

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