<祇園祭編>守り継ぎ、祭りを支える伝統の技。匠の技を紐解く祇園祭・天神祭【TOKK2025年7月号】

絢爛豪華な懸装品、夜空を彩る奉納花火、祭りのムードを盛り上げる提灯。
華やかな舞台の裏で祭りを支える職人たちの技を知る。

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<天神祭編>守り継ぎ、祭りを支える伝統の技。匠の技を紐解く祇園祭・天神祭

匠の技を紐解く祇園祭 開催期間:7月1日(木)〜31日(火)

千年以上の歴史を誇る祇園祭は、厄病退散を祈願する神事として始まった。1カ月におよぶ祭りの中で、最大の見どころは山鉾巡行。「動く美術館」とも呼ばれ、町ごとに異なる装飾を施した山鉾が京都市中を動く様子は圧巻。

宵山期間は夕方以降、四条烏丸周辺が歩行者天国となり、大勢の人々でにぎわう。提灯が灯される中、お囃子(はやし)の音色が鳴り響き、古都の伝統と活気に満ちた京都の夏の風景が広がる。

祇園祭神幸祭

祇園祭山鉾連合会からのお願い
※会場の混雑が予想されますので、体調不良の方は無理なご来場をお控えください。
※ごみのお持ち帰りにご協力お願いします。 ※食べ歩きはご遠慮ください。
※祇園祭に関するお問い合わせ
 050-5548-8686(ハローダイヤル/9:00〜20:00、7月25日まで)

山鉾巡り・宵山・山鉾巡行

場所阪急烏丸駅周辺【MAP

神事・祭礼

場所八坂神社
問い合わせ075-561-6155
アクセス阪急京都河原町駅下車 約8分
住所都市東山区祇園町北側625【MAP

山鉾巡行・花傘巡行

場所阪急京都河原町駅【MAP
備考山鉾巡行の観覧は、阪急烏丸駅→地下鉄・烏丸御池駅、または京都市役所前駅の利用も便利。

織物

お話を伺ったのは

龍村美術織物 白井 進さん
デザイナーとして入社後、50年以上にわたりタペストリー(装飾用の織物)を研究。海外でも研究を重ね、数々の文化財の復元に携わってきた。

数々の職人の技術が集結し巡行される山鉾

祇園祭が「動く美術館」と呼ばれるのは、本来なら博物館で厳重に管理されるに値するほど貴重な品々が、目の前で鑑賞できることにある。稚児人形や水引など、山鉾に飾られる豪華な懸装品は、重要文化財に指定されているものもあり、その町の誇りとして高らかに掲げられる。

また一方で山鉾は、釘を一切使わずやぐらを組む手伝方(てつだいがた)、屋根や柱を施す大工方(だいくがた)、大車輪を裁く車方(くるまがた)など、数々の職人たちによって支えられている。今回、函谷(かんこ)鉾の正面を堂々と飾る巨大なタペストリーの復元を手がけた織物の匠・白井さんを訪ねた。

1枚が横2.2メートル、縦2.7メートルもあり、圧倒される大きさ。

精緻(せいち)な時代考証に基づき約400年前の織物を復元

忠実に復元するために最も重要なのは時代考証だという。16世紀後半にベルギーで製作されたものであることが判明し、白井さんはベルギーを訪問。タペストリーに使われた織機や製糸方法、糸の素材、染料などを研究した。「一番の困難は色を忠実に再現することでした。400年以上経ち劣化した織物から正確な色を突き止めるため、同時代の織物を手がかりにし、色の科学的分析も行いました」。色が特定された後、羊毛と絹に染色して約70色の糸が完成。

ベルギーで手に入れた染料の見本。コチニールやインディゴなどが原料として使われていた。

試し織りでは「日本の職人が織ると、なぜか日本人の顔立ちになってしまう」という予想外の壁にもぶち当たったそう。試作を繰り返し、5人の職人によって完成したタペストリーは2005年にお披露目された。

織る際に使う日本の道具・杼(ひ)。

毎年宵山期間になると、函谷鉾保存会町会所で復元前後のタペストリーが並べて展示される。繊細な色のグラデーション、人物の頬の艶を表現するため使用された絹糸など、間近で見ることで職人たちの細部の技に気づく。「ぜひ隅々までチェックしてください」。

【祭りでチェック!匠の見どころ】

文化的価値の高さ
復元前後とも重要文化財に指定されており、1枚の状態で残っているものとして大変貴重です。

復元前後の色の違い
最も再現に苦労したところです。鮮やかによみがえった様子をぜひご覧ください。

行事函谷鉾拝観
場所函谷鉾保存会町会所
日時7月13~16日/10:00~22:00
料金大人1,000円
問い合わせ075-221-8630
アクセス阪急烏丸駅下車すぐ
住所京都市下京区函谷鉾町89 函谷鉾ビル2階【MAP
URLhttps://www.kankoboko.jp/

粽(ちまき)

お話を伺ったのは

厄除チマキ保存会 松原常夫さん
放下鉾にて約20年、厄除けチマキの手配を担当。チマキが入手困難になる危機に際し、同団体を立ち上げる。町を盛り上げるアイデアマン。

稲刈りからはじめ京北の里山で継承されたチマキ作り

京北で作られたチマキは、放下鉾のメンバーによって包みが巻かれる。

各山鉾で授与される厄除けチマキ。放下(ほうか)鉾でチマキの手配を担当する松原さんは、一人で50年以上製作を担当してきた 職人の引退により、次の担い手と材料を探すべく奔走した人物。

チマキの材料は、藁、笹、い草。「藁を確保するため、知人を通じて京都・京北で稲刈りから始めました」。それをきっかけに集落との繋がりができ、現在はここに住む約10人が家事の傍ら一年を通してチマキ作りに励んでいる。

「こだわっているのは形の美しさ」と言うのは、作り手の一人・小池さん。まるで勝手に手が動いているような速さで藁に笹の葉を巻き、1本ができ上がった。1分ほどの間だが「葉の中心が中央にくるように」「角をきれいに整えて」と細部まで目を光らせている。できたものを10本まとめ、い草で束ねて完成するのだが、そこにも「着物の前合わせをイメージして美しく」という小池さんの美意識が表れている。今に継承された京都産のチマキを玄関に飾って、家族の安寧を願おう。

祭りでチェック!匠の見どころ

個性がにじみ出た形
一つひとつのチマキに、作り手の個性が出ています。作り手の思いも受け取ってください。

祭りの活気
巡行では私も放下鉾のお供をし、最後は感動で涙があふれてきます。町の熱気を皆さんにも感じてほしいですね。

行事放下鉾 厄除けチマキの授与
場所放下鉾保存会事務所前
日時7月13~16日/10:00~22:00(13日は18:00~)
料金1,200円
問い合わせ080-4239-3160
アクセス阪急烏丸駅下車 約6分
住所京都市中京区小結棚町432【MAP
URLhttps://houkboko.jimdosite.com/

最新の印刷技術で祇園祭を後世に伝える

印刷技術と情報技術を駆使し、文化遺産の保存と継承に取り組む大日本印刷(DNP)では、同ギャラリーで祇園祭の様子が描かれた江戸時代の重要文化財「洛中洛外図屏風 池田本」(林原美術館)の高精細複製を展示している。

約5年にわたる研究を経て、金箔の上に印刷できる技術を開発し特許を取得。デジタル技術の匠たちによる印刷により、原画に残る小さな傷や金箔が重なった立体感までもが忠実に再現されている。実際に手で触れることができる展示もあるので、その技術を確かめてみて。

スポット名DNP 京都太秦文化遺産ギャラリー
時間11:00〜19:00(土・日曜・祝日は〜18:00)
休館日月曜休(祝日・振替休日の場合は開館、翌日休)、祝日の翌日休(土・日曜の場合は開館)、京都dddギャラリーの展示替え期間中休
料金入館無料
問い合わせ075-585-5370
アクセス阪急烏丸駅下車すぐ
住所京都市下京区水銀屋町620 COCON KARASUMA3階【MAP
URLhttps://dnp-cultural-heritage.jp/

祇園祭の主なスケジュール

7月1~11日二階囃子[各山鉾町(鉾・曳山のみ)]
2日くじ取り式[京都市役所 市会議場]
9~14日前祭山鉾建て[前祭各山鉾町]
10日お迎提灯[氏子区内]
神輿洗式[四条大橋]
12~13日前祭山鉾曳初・舁(かき)初
[前祭各山鉾町(鉾・曳山、一部舁山)]
14~16日前祭宵山[前祭各山鉾町]
17日前祭山鉾巡行[氏子区内]
くじ改め[四条堺町]
神幸祭(神輿渡御)[八坂神社~御旅所]
18~21日後祭山鉾建て [後祭各山鉾町]
20~21日後祭山鉾曳初・舁初
[後祭各山鉾町(鉾・曳山、一部舁山)]
21〜23日後祭宵山
後祭各山鉾町(鉾・曳山のみ)]
24日後祭山鉾巡行[氏子区内]
くじ改め[寺町御池]
花傘巡行[下京中学校成徳学舎~八坂神社]
還幸祭(神輿渡御)[御旅所~八坂神社]
25日狂言奉納[八坂神社]
28日神輿洗式[四条大橋]
31日疫神社夏越祭(えきじんじゃなごしさい)
[八坂神社境内疫神社]

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