万博記念公園にある大阪日本民芸館に行ってきました。手仕事から生まれた数々の名品を鑑賞。
2025.03.22イベント
私たちの生活の中から生まれた実用的な工芸品である「民藝」。素朴な味わいで、使い勝手もよく根強い人気があります。吹田市の万博記念公園のなかにある大阪日本民芸館は、その民藝の名品を堪能できる施設です。見どころや鑑賞のポイントなどを学芸員の小野絢子さんにお聞きしました。
目次
大阪日本民芸館へのアクセスは?
大阪日本民芸館の最寄り駅は大阪モノレールの万博記念公園前駅です。阪急電車を利用する人は、千里線の山田駅か京都線の南茨木駅で乗り換えになります。山田駅からは1駅、南茨木駅からは2駅で到着します。万博記念公園前駅からはららぽーとEXPOCITYに向かって進み(写真)、左手にある中央橋を渡るとゲート(中央口)が見えてきます。そこでチケットを購入。太陽の塔を横手に見ながらまっすぐ歩き、国立民族学博物館の手前で右に曲がると到着です。万博記念公園前駅からは約15分。近くには国立民族学博物館のほか、24年に国の登録記念物に指定された日本庭園もあります。あわせて訪問するといいですね。

大阪日本民芸館の企画展は春と秋に実施
大阪日本民芸館では常設展示はなく、春(3月~7月)と秋(9月~12月)に特別展を催し、そこで作品を鑑賞することができます(特別展以外は展示替えのため休館)。陶磁器や染織品、編組品(竹・つるを編んでつくったもの)、木漆工品など約6000点ある収蔵品も、企画展の内容に合わせて小野さんが中心になってチョイスし、展示するそうです。収蔵品のなかには河井寬次郎(陶芸)、濱田庄司(陶芸)、芹沢銈介(染色)など、代表的な民藝作家の作品も多数含まれています。なかでも、河井寬次郎の「呉須筒描花手文壺」(1951年)や濱田庄司の「白釉黒流描大鉢」(1970年)は、彼らの代表作として知られています。また、棟方志功も民藝に深く理解を示した一人で、幅13.5メートル・縦2.4メートルにもなる彼の大作『大世界の柵〈乾〉―神々より人類へ―』(1970年。写真)が第四展示室に掲げられています(25年の春の特別展については後で紹介します)。

大阪日本民芸館は建物自体が作品
大阪日本民芸館は1970年に開催された大阪万博のパビリオンとして建設されました。70年万博のパビリオンのほとんどは終了後、撤去されたため、残るのは「鉄鋼館」と太陽の塔、そして大阪日本民芸館の3つだけなのですが、このうち鉄鋼館は現在、EXPOパビリオンとして別の用途で利用されています。70年万博当時のままのコンセプトで運営されているのは大阪日本民芸館と太陽の塔のみですから、貴重な「万博遺産」ということもできるでしょう。


建物自体もユニークで、上から見ると三角形の形をしています。展示室は4つありますが、1階にある第一展示室(写真上)から自然と2階にある第四展示室に至るようになっています。「ホワイトキューブに通じる近代的な内装を基調としつつ、これまでの民藝館らしい日本家屋的な雰囲気の場所がいくつも設けられています。未来に向けた試みと、従来の様式が組み合わされた建物自体の面白さも味わってもらえるとうれしいですね」と小野さん。全体的に落ち着いた雰囲気があり、ゆったりとした気分で鑑賞することができます。ちなみに、三角形の真ん中は中庭になっていて、70年万博当時と同じ形で壺や甕、鉢が展示されているとのことでした(写真下)。

民藝について学芸員の小野さんに教えていただきました。
ここで「そもそも民藝とは何か?」について小野さんからレクチャーを受けることにしましょう。民藝は「民衆的工藝」の略で、思想家の柳宗悦や陶芸家の河井寬次郎、濱田庄司らによってつくられた言葉です。彼らは、手仕事によって生み出された日常づかいの品の中に美を見出そうと活動したのでした。「それを民藝運動といいます。実は、柳たちが民藝という言葉を初めて使ったのは1925年のことで、ことし100年を迎えるんです」(小野さん)。鑑賞のためだけではなく、全国でつくられる民藝の品々には道具としての機能性と共に、素直で飾らない美しさがあります。それらは日本のみならず海外からも高い評価を受けているそうです。「柳たちは、民藝品をつくる無名の職人・作り手の支援も行いました。それに多くの人たちが共鳴したんですね。昭和の初期に大きなブームとなっています」と小野さん。柳が亡くなったあと、大阪日本民芸館がつくられた頃にもブームが起こっていました(大阪日本民芸館の開館は大阪万博終了の1972年。初代館長は濱田庄司でした)。そして、2000年代の終わり頃から再び注目が集まり、いまにつながります。デジタル機器で私たちの生活は一変しましたが、あまり豊かさを実感できない。そんななか身近なものの中に美を見出すことで、‘’心‘’が豊かになる――。買って使ってうちにどんどん「よさ」がわかってくるところも、多くの人の心をつかむの要因なのかもしれません。
迷うのも楽しいミュージアムショップ
小野さんによると「ミュージアムショップも展示の一環」と捉えられているそう。厳選し、こだわりをもった国内外の民藝品が販売されています(ミュージアムショップのみの見学も可能)。
たとえば、日本の六古窯の一つに数えられ、800年以上の歴史をもつ丹波焼などの焼き物。戦後まもなく民藝運動に共鳴した若者たちによって始まった島根の出西窯 (しゅっさいがま)の焼き物は、とくに人気があります。
他にも、岩手県の浄法寺塗や安比塗などの漆器、鳥取県で1000年以上の伝統をもつ和紙などが販売されています。数ある商品のなかで、小野さんのお気に入りは丹波布でつくられた品々。

写真は小野さんが実際、使用している丹波布の名刺入れですが、「風合いだけでなく、使い勝手もよく、どんどん手になじんでくる。手放せません」とのこと。丹波布は昭和の初め、柳宗悦が、その良さを見出したといいます。紡ぎの木綿糸、草木による染色、そして手織り……。たしかに、他にはない独特の味わいがありますね。
大阪日本民芸館の人気イベント紹介

特別展以外にもさまざまなイベントを大阪日本民芸館は催していますが、なんといってもおすすめは5月に開催される「みんげい市」でしょう。2日にわたって開かれ1日1000人もの人が訪れるこのイベントは、10年ほど前にスタートしました。関西に住む民藝の作り手の方々がブースを出して、自身の作品を展示即売します。参加者は15~18人で、「好きな作り手さんの作品を目当てに、毎年のように足を運んでくれるお客さんもいます」(小野さん)。他にも、各分野の専門家や作り手を招いた講演会・ワークショップなど、年間を通じてさまざまなイベントが行われています。小野さん自らが講師となった民藝初心者向けのセミナーもあるそうなので、興味のある人はHPで確認してください。

春季特別展は「大阪の民藝運動―三宅忠一の眼―」
大阪・関西万博開催を記念した春の特別展は、ことし万博が開催される大阪の民藝運動がテーマです。大阪の民藝運動をリードした三宅忠一氏は、洋食店「スエヒロ」の経営者としても知られています。三宅氏は大阪に「日本工芸館」を設立(現在は休館中)、各地の民藝品を大阪の人たちに紹介しました。また、民藝品制作の支援にも力を入れました。今回の特別展では、日本工芸館と大阪日本民芸館の収蔵品を通して、大阪の民藝運動の足跡を振り返ります。講演会や小野さんによるギャラリートークもあります(詳細はHPをご確認ください)。
会期:3月6日(木)~7月15日(火)
休館日:水曜日
料金:一般710円
詳しくは https://www.mingeikan-osaka.or.jp/exhibition/special/
基本情報まとめ
スポット名 | 大阪日本民芸館 |
営業時間 | 10時-17時(入館は16時30分まで) |
休館日 | 毎週水曜日、年末年始 ※3月~7月(春)、9月~12月(秋)の特別展開催期間のみの開館です。 |
入館料 | 一般710円・高大生450円・小中生100円 ※観覧券を購入された方は、日本庭園・自然文化園も入園できます。 |
アクセス | 大阪モノレールの「万博記念公園前駅」より徒歩15分 ※阪急の千里線「山田駅」、京都線「南茨木駅」にて乗り換え |
電話 | 06-6877-1971 |
住所 | 大阪府吹田市千里万博公園10-5(大阪万博記念公園内)【MAP】 |
URL | https://www.mingeikan-osaka.or.jp/ |
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