【阪急沿線で、半世紀。vol.5】神戸フレンチの草分け「神戸精養軒本店」
2022.07.2550周年
誰もがきっと1つは持っている“なつかしの場所”。
沿線で愛される、1972年創業のお店の、素敵なストーリーをご紹介。
神戸フレンチの草分け その味を継いで
阪急王子公園駅から山手へ歩いて約15分のところにある神戸精養軒本店は、店の前を牛が歩いて通るのどかな風景の中でその歴史をスタートした。
現在の社長・井上康信さんの叔母にあたる弥枝子さんが教職員の官舎として利用されていた建物を買い取り、康信さんの父・康司さんが料理長として就任、康司さんは神戸フレンチの草分け的存在として、神戸フランス料理研究会の会長も務めた。
9歳の頃には週末に店の皿洗い、芋の皮むきなどの手伝いをし始めていたという康信さん。高校を卒業後にステーキハウス、ホテルのレストラン、中華料理店などで腕を磨き、神戸精養軒本店に入る。正式に事業を引き継いだのは10年前だが、今でも毎日「もっとできたのではないか」「これで良かったのか」との思いを抱えながらキッチンに立つ日々だという。
10日間かけて作る濃厚なのにさらさらデミグラスソース
神戸精養軒本店では当初、フランス料理のフルコースを提供していたが、西洋料理自体がまだ珍しい時代、日本人の口に合いづらく、カトラリーの使い方が分からない人も多かったとか。和風のアレンジを加えたり、エスカルゴや鴨肉といったフレンチ食材を扱いつつも、ハンバーグやオムライスといった食べやすいメニューも提供するようになり、現在までその味が愛され続けている。
その中で、50年間変わらないものの一つにデミグラスソースがある。牛骨や野菜などを煮詰め、濾すという作業を10日間繰り返し、最後に小麦粉を少し加え、味を調える。チョコレート色をした濃厚な見た目だが、口当たりはサラッとし、舌の上に甘み、うま味、コクが絡み合うように広がっていく。
メニューの内容から洋食店と思って訪れる人も多いが、デミグラスソースをいただくと、その味わいはフレンチそのもの「いわゆる洋食ではない」と知る。フレンチの技術、伝統、哲学すべてが詰まっているといわれるソース。手間を惜しまず、じっくりと味を深めたデミグラスソースは、康信さんの料理に対する姿勢、ホスピタリティーまでが凝縮されている。
昨日よりもおいしく、明日はもっとおいしく進化し続けて…
撮影の合間に、奥さまの明子さんが話してくれた「いつも来てくださる常連の方には特に、前回の来店の時よりもさらにおいしいもの、前回を上回る味をお届けしないといけない。そういった気持ちでいます」という言葉が印象的だった。
毎日、毎日、少しずつおいしく、味を磨き続けること。それがお客さんにも伝わるからこそ通い続ける方が多いのだろう。最近では、4代続けて通うようになった方も増えてきているそう。神戸洋食スタイルの味わい、神戸フレンチの先駆けとしての味、その両方を受け継ぎ、「これからもお客様に愛される店であり続けたい」と、康信さんは今日もキッチンで腕を振るう。
祝!TOKK50周年コラボ
本紙と神戸精養軒本店の50周年コラボ商品は、通常ディナーもしくは単品のみで提供の「ビーフシチュー」を、ランチコースで楽しめる「ビーフシチューコース」3,850円。自家製野菜ドレッシングでいただくミニサラダ、スープ、パンまたはライス、食後のお茶がセット。口の中でほどけるほど柔らかく煮込まれた牛スネ肉がたまらない一品。
スポット名 | 神戸精養軒本店 |
時間 | 11:30~14:00、17:00~20:00(閉店21:30) |
定休日 | 水曜休 |
問い合わせ | 078-871-4488 |
アクセス | 阪急王子公園駅下車 約15分 |
場所 | 神戸市灘区上野通7-4-17【MAP】 |
URL | https://hitosara.com/0006107323/ |
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