誰もがきっと1つは持っている“なつかしの場所”。
沿線で愛される、1972年創業のお店の、素敵なストーリーをご紹介。

夫婦二人三脚で商売をスタート

「まいど！」「今日は早いね」「いつもありがとう！」。お客さんが訪れるたびに、威勢のいい声が響き渡る。「家でじっとしているよりお店に出ていたい。接客が大好き」と話すのは、「鳥舟」の顔として店番を務める岡﨑千栄子さん。1972年に夫婦で大安亭市場内に店舗を借り、4坪のスペースから商売を始めて早50年。今では従業員の数も大幅に増え、調理場まで備える立派なお店に成長した。

「鳥舟」の自慢は、創業当時から変わらない新鮮な朝引きの鶏肉。神戸に1件しかない処理場から仕入れる京丹波産赤鶏のほか、播州や紀州など様々な産地の鶏肉を扱う。さらに、秘伝のタレに長時間漬け込んで店内で作られる唐揚げや、自家製のローストチキンなどの調理品も、手ごろな価格で他にはない味わいと評判だ。

阪神・淡路大震災で実感した人の優しさ

半世紀にも渡ってお店を続けてきて、「仕事が大変だと思ったことはない」と千栄子さんは話す。しかし、その道は決して平坦なものではなかった。1995年、阪神・淡路大震災により、大安亭市場は甚大な被害を受けた。幸い「鳥舟」は倒壊を免れたが、ガスや水、電気は止まってしまった。

そのような状況にありながら、震災から約2週間後には営業を再開していたという。「主人がプロパンガスを調達してきて、同じ市場の仲間に井戸水を使わせてもらって。待っているお客さんのため、商売を再開することに無我夢中やった」。

再開の話を聞きつけた常連客が続々と訪れ、お互いの無事を確かめて喜んだそうだ。「八百屋さんが野菜をくれたお返しに、うちからは鶏肉を届けたりして、市場のみんなで助け合った。取引先がお米を差し入れしてくれたこともあったし、人の優しさを改めて実感したね」。

“家族”の存在が忙しい毎日の支えに

大安亭市場での助け合いの精神は、昔も今も変わらない。市場には色々な国のお客さんが訪れるが、言葉がわからない時はその国出身の店主に教えてもらうそうだ。「お隣のお店には韓国語を教えてもらっていて、子どもたちがまだ小さかった頃は、先代の店主が『みんな兄弟だから』って言って、子どもたちをよくかわいがってくれた」。

そうして“家族”同様に接してくれる仲間や、姉夫婦に支えられ、働きながら3人の子どもを育て上げたという千栄子さん。お店が忙しくてなかなか構ってあげられない分、お正月休みには必ず旅行に出かけて埋め合わせをしていたのだそう。仕事に育児に奮闘する親の背中から、幼な心に学び取ることは多かったに違いない。2012年にご主人の和一さんが亡くなってからは、長男の克也さんが後を継ぎ、「鳥舟」の代表を務めている。

人との触れ合いを今日も力に変えて

笑顔でてきぱきと接客をこなす千栄子さんは、今年78歳を迎えた。いきいきと仕事をする姿からは全く年齢を感じないが、働き続ける原動力はどこにあるのだろう。

「お店の前が通学路になっているから、『おはようございます』『いってらっしゃい』って挨拶を交わして、子どもたちと交流するのが楽しい。地域やお客さんの子どもが成長するのを見られるのは、50年も続けているお店ならでは。人との触れ合いが元気の源やね」。お店を長く継続するには、良い商品を提供するのはもちろん、「また来たい」と思わせる魅力的な人が存在することも、大切なのかもしれないと感じた。

祝！TOKK50周年記念

ふっくらジューシーな唐揚げ、焼き鳥、ささみのチーズフライなど、店内で作る「鳥舟」自慢の調理品。今回はTOKK創刊50周年を記念して、人気商品の詰め合わせを特別に用意してもらえることに。期間は2022年4月25日（月）～5月24日（火）まで、価格は500円。何が入っているかは当日のお楽しみ。晩ご飯のおかずやお酒のアテ、お弁当の一品として活躍してくれること間違いなし。「鳥舟」自慢の味がワンコインで堪能できる、お得な機会をお見逃しなく！

スポット名	鳥舟（とりふね）
時間	7:00～18:00
定休日	水曜休
問い合わせ	078-231-3830
アクセス	阪急春日野道駅下車 約9分
場所	神戸市中央区日暮通4-１-14 大安亭市場内【MAP】
URL	https://www.ichiba-kobe.gr.jp/ichiba09/shop/ichiba09-torifune.html

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