身近なことからはじめる防災。もしもに備える基礎知識を学ぼう

9月1日は、1923年のこの日に関東大震災が起こったことにちなんで制定された「防災の日」。
日頃の備えを見直し、改めて防災について学ぶ機会にしてみては。

防災の基礎知識

災害で得た経験を次にどのように活(い)かすか、また、それをどう防災や減災に繋げていくかについて研究されている、人と防災未来センター 主任研究員・林田さん。いざという時に役立つ日ごろの準備についてお聞きしました。

人と防災未来センター 主任研究員
林田怜菜さん

人間文化学博士。2021年から同センター勤務。専門分野は災害時の自治体復旧活動の研究、震災資料の保存と分析。

研究テーマ、普段のお仕事についてお聞かせください。

自治体職員の方が記された業務日誌や引継ぎノートといった記録から、災害現場や避難所で起こった様々な事象について分析を行い研究結果にまとめています。記録を読むほか、直接取材に行ったり、災害時には現場に赴き対策本部などで勤務することもあります。研究結果については、自治体の職員へフィードバックし次に活かしていただいたり、子ども達向けに講座などを開催し防災への備えについて教えたりしています。

自然災害と聞くと津波や地震を想像しますが、自然災害の定義はありますか?

自然災害の定義は「自然現象と人が生活する社会の弱い所が重なり合い生じる被害」とされています。例えば、誰も暮らしていない無人島に津波が襲ったとしても、怪我をしたり、亡くなったりする人もいませんし、電車が脱線したり、家が崩れることもありませんので、津波=自然現象と捉えられますよね。逆に、人が住んでいる社会に自然現象が起こった場合は、地震に弱い家に住んでいれば住宅が倒壊する、浸水の可能性が高い場所であれば家や車、人が流されてしまいます。社会の弱い部分に自然現象が重なると、自然災害になってしまいます。

防災のために、日頃から準備しておくべきことを教えてください。

(1)自然災害を知る (2)自分の街を知る (3)自然災害に備えるという3段階で準備をしていただければと思います。

(1)「自然災害を知る」

地震の原因となるプレートの仕組みについて勉強することや、過去の大きな自然災害について調べ、特徴的な被害を把握しておくことなどです。

(2)「自分の街を知る」

自治体のハザードマップを確認し、自分の住んでいる街のリスク(危険)を知っておくこと。危険を知った上で、地震の際の避難経路や道路が使えなくなったらどうするかなどを想像しながら、いつもの道や自宅周辺を歩くと色々なことが見えくるはずです。

(3)「自然災害に備える」

まず災害の際の避難場所の確認、家族同士の連絡手段を決めておいてください。自宅内は地震などに備えて家具を固定するなどの対策をします。また、7日分のトイレと食料の準備も必要です。当センターでもお配りしているチェックリストなどを使い、赤ちゃんがいる、高齢者がいるなど年齢や性別に応じた備蓄品をそろえていきましょう。

最後に、防災に関して意識しておきたいことを教えてください。

日本は自然災害が多い国ですから、保存のきく食料品を少し多めに購入する、防災に関する情報についてアンテナをはるなど、普段から防災を意識して生活するようにしましょう。また、災害を想定した訓練へも参加してみましょう。いざという時の練習をしておくと、慌てず安全に身を守ることができます。そして正常化の偏見に負けないことです。正常化の偏見とは「自分だけは大丈夫」と考えることを言います。人が心を落ち着かせようとする時に働く心理なのですが、それによって逃げるのが遅れたり、危険性に気づきにくくなったりします。偏見に負けない気持ちがとても大切です。

知っておくといざという時に慌てなくて済む!

災害用伝言ダイヤル「171」

災害が発生し、被災地への通信が増加、繋がりにくくなった場合に提供されるサービス。被災地、避難所、その他の地域などから171に電話をかけると、伝言を録音、再生できる。毎月1日と15日ほかの「体験利用日」に、実際に使ってみるのもおすすめ。

各自治体の防災関連サイトは必ず確認を

防災の基本の1つとして挙げられるのが自分の住んでいる地域について知ること。こんな時に役立つのがハザードマップ(災害予測図)。洪水、土砂災害、高潮などの種類がある。住んでいる地域や勤務先、よく出かける場所の自治体の公式サイトで事前にチェックを。

兵庫県 【CGハザードマップ】
https://www.hazardmap.pref.hyogo.jp/cg-hm/
大阪府 【おおさか防災ネット】
https://www.osaka-bousai.net/index.html
京都府 【きょうと危機管理WEB】
https://www.bousai.pref.kyoto.lg.jp/dis_portal/

身を守る

こんな場面でどうする?出かけた先や移動中、職場などで災害に遭ってしまった時にどうするか?それぞれの場面ごとに最善の行動を覚えておこう。

地下街で

階段から雨が流れ込むなどの水害と遭遇した場合には、スタッフの指示に従う。水の力は想像以上に強いため、流れに逆らい地上へ上がるなどの自己判断は危険。地震の際には姿勢を低くし身を守れる場所へ移動を。慌てて外へ飛び出すなどの行動はNG。

家の中で

水害の危険があるときは早めに避難所へ行くことが原則。2階へ避難し水害を逃れるのは最終手段と考え、早めの避難を。地震が起きた際は机やベッドの下などで、落下物から身を守ることを最優先に。

高層ビル・マンションで

1階部分に水が流れ込んでくるような状況では高い所へ身を移すのが安全。停電が起き閉じ込められる可能性があるため、エレベーターの使用はNG。階段を使って上へと移動するのが正解。

河川敷で

前日まで大雨が降っていたり、台風だった場合は翌日に河川敷に近づかず、数日様子を見よう。時間がたってから川が氾濫したり、土砂災害が発生することも。地震発生時に河川の近くにいた場合は、川から充分距離の取れる場所へ素早く移動を。

電車やバスで

大きな地震や災害が起きた場合、公共交通機関が動かなくなることを想定しておこう。一度は会社や学校から徒歩で歩いて帰る練習を。災害の際に車内にいた場合は、乗務員やスタッフの指示に従い、勝手に降りるなどの行動はしないで。

エレベーターの中で

揺れを感じたら全ての行先階のボタンを押し、最初に止まった階で降りること。止まってしまった場合は外部との連絡手段であるインターホンで状況を伝え、救助が到着するまで待つこと。無理矢理外に出るのは危険。

梅田防災スクラム

地下にも地上にも街が広がる梅田エリア。もしも梅田で災害に遭ったら? そんな時にどうすればよいかを防災マニュアルやサイネージ、SNSなどで情報発信を行うのが「梅田防災スクラム」。梅田地区の人と人、企業と企業、エリアとエリアがスクラムを組むように、がっちりと手を組み協力しながら「梅田で働く人、梅田を訪れる人同士が助け合えるエリア」を目指している。「携帯型防災マニュアルブック」は下記からダウンロードを。
https://umeda-connect.jp/bo-sai/

備える

普段の生活の中で使用しているものを、防災用として少し多めに購入する癖づけを。日常の生活の中で備蓄を意識し、継続していくことが大切。

防災用品、防災食として準備したものの賞味期限や使用期限が過ぎていた…という体験をした人も多いのでは?備蓄品を常に使える状態で維持するポイントは「防災のために特別なモノをたくさん用意する」のではなく、「平常時が蓄えてある」というイメージを持つこと。いつも使用している食品や消耗品などを少し多めに購入、ストック分が災害時に備蓄品として役立つ。日常生活の中で消費しながら、購入し続ける備蓄体制を維持して。

普段から携帯したい 0次の備え

人と防災未来センターが独自の基準で選定、携帯を推奨しているアイテム。ポーチなどにまとめて持ち歩くか、普段のバッグに分散して入れておくのでもOK。

(1)マスク
閉された空間で長時間過ごす時や、埃や塵から身を守る時に必須となる。
(2)携帯トイレ
出先でトイレを我慢し続けるのは大変。お守りとして1つは携帯しておきたい。
(3)カラビナLEDライト
どこにでも吊り下げて持ち運べるライト。暗い中を移動する際に役立つ。
(4)ホイッスル
危険な時、身動きが取れなくなった時に自分の存在を知らせるための大切なアイテム。
(5)手袋
素手で触るのが危険な場合などに手を保護する。ケガを防ぐために持っておきたい。
(6)ポーチ
必須ではないが、携帯品をひとまとめにする時に便利。

家の外に持ち出す 1次の備え

災害時に必要となる最低限のものを備え、すぐに取り出せるようにしておくのが1次の備え。被災したその時、安全な場所へ逃げる際にこれだけは持っていきたい。必要なものは女性、高齢者、子どもなど、個々人ごとに異なるものもあり、災害時は入手しにくくなるので自分に必要なものを普段からそろえておこう。

家の中に備蓄しておく 2次の備え

飲料水や食品など、ライフラインが途絶え、助けの手が届かなかったとしても自給自足できる備蓄品が2次の備え。7日間分を目安に備えておきたい。食品は防災食だけでそろえずに、家族の好みなどをベースに長期間保存できる野菜や缶詰、乾物などを多めに買いローリングストックしていくのがおすすめ。

人と防災未来センター

6,400人を超える人命が奪われるなど大きな被害をもたらした阪神・淡路大震災の経験と教訓を受け継いでいくため作られた施設。館内では、当時の映像や体験者の話などをもとに震災を追体験する展示や、防災や減災に関する知識を習得できる体験展示など、総合的に防災を知ることができる。

西館3F 震災の記憶フロア

震災の記憶を残すコーナー
資料提供者の体験談とともに、震災関連資料を展示。地震で壊れた生活用品や日記など、当時の様子がわかる貴重な資料が多数。

西館4F 震災追体験フロア

震災直後のまち
傾いた住宅やマンション、商店など、地震直後の街の様子を再現したジオラマの中を歩いて巡る展示。

1.17シアター
大型ビジョンと音響で地震当日の地震破壊の様子を再現。住宅、ビル、道路などが崩壊していく様子は胸に迫る。

西館2F 防災・減災体験フロア

防災について学ぶゲームや備蓄品の実物展示などを楽しみながら、防災を学べるコーナー。

東館3F BOSAIサイエンスフィールド

ディザスターウォール(画像上)
自然現象と人々の生活が交わることで自然災害が発生するということを学べるスペース。
クエスチョンキューブ(画像下)
映像の中で災害時の様々な場面を体験しながら、クイズ形式で最善の行動を学ぶ。

東館1F ミュージアムショップ

各種防災グッズ、防災関連書籍、ゲーム、神戸の土産などを取りそろえるミュージアムショップへもぜひ足を運んで。様々な防災グッズを実際に手に取って確かめることができる。

スポット名 人と防災未来センター
料金大人600円、大学生450円(東館のみの見学は大人300円、大学生200円)、高校生以下無料
時間9:30~17:30(入館は~16:30)
休館日月曜休(祝日、振替休日の場合は翌平日休)
問い合わせ078-262-5050
アクセス阪急春日野道駅下車 約13分、または阪神・岩屋駅または春日野道駅下車 約10分
住所神戸市中央区脇浜海岸通1-5-2【MAP
URLhttps://www.dri.ne.jp/

#防災 #防災の日 #9月1日

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