下鴨神社は京都有数の神社。世界遺産にも登録されている名所
2023.08.08おでかけ
京都市左京区にある下鴨神社は、京都で最も古い神社のひとつ。正式名称は「賀茂御祖神社(かもみおやじんじゃ)」といい、上賀茂神社とともに古代豪族・賀茂氏の氏神を祀っている。境内に自然豊かな癒やしのスポット「糺(ただす)の森」が広がっていることでも有名だ。
今回は、権禰宜(ごんねぎ)の大塚高史さんに取材。下鴨神社の魅力や見どころ、おすすめのスポットなどを詳しくお聞きした。
目次
下鴨神社の歴史やご利益
下鴨神社の歴史について、大塚さんによると「第10代・垂神(すいにん)天皇の時代に祀られたという文書がありますが、いつごろ創建されたのか詳しくはわかっていません。ただ、縄文時代の祭祀跡が境内で見つかっており、古くから人々の祈りの場だったことは間違いありません。
様々な記録から奈良時代より前にはすでに大きなお社があり、祭事が行われていたこともわかっています。
平安時代に入ると、平安京と国の守り神として皇室から篤く信仰され、今のような形になりました」とのこと。
主祭神には、賀茂氏の祖・賀茂建角身命(かもたけつぬみのみこと)と彼の娘・玉依媛命(たまよりひめのみこと)を祀る。
下鴨神社の主なご利益は、国家鎮護、縁結び、子宝、安産、子育てなど。玉依媛命が鴨川で禊(みそぎ=身体を清める儀式)をしているとき、矢を拾い、その矢が美しい男の神となり結婚。その後、子どもを産んだという伝承に由来する。
また、初代天皇・神武(じんむ)天皇の国を治める戦いに賀茂建角身命が貢献したことから、事始めのご利益や勝利の神様としても信仰されている。
下鴨神社の見どころ
建築物(本殿や楼門など)
下鴨神社の建築物は、本殿が国宝、社殿53棟が重要文化財に指定されており見どころが多い。なかでも楼門は高さ約13mに及ぶ大きな建造物で、その佇まいには圧倒的な存在感がある。
「朱色が美しい楼門ですが、他の神社の建物と比べるとあまり装飾が施されていません。当社の建物はどちらかといえばシンプル。昔のスタイルが残されているんです。
近年は外国人の方の参拝も増えていますが、なかには『このシンプルな構造が興味深い』とおっしゃる方も多いです」と大塚さん。シンプルさに人気の理由があるとは驚きだ。
太古の自然を遺す糺の森
下鴨神社の癒やしスポットとして人気なのは、境内にある「糺の森」。表参道を中心に、約3万6000坪もの広大な敷地に様々な樹木が生い茂っている。
川のせせらぎも心地よい糺の森には、京都盆地の古代の森の姿がそのまま残っており、ケヤキ、エノキ、ムクノキなどの広葉樹を中心に、植物は約40種、チョウは約50種、甲虫は約450種が確認されているという。ホタルやフクロウも生息しているそうだ。
ちなみに大塚さんのおすすめは新緑の時期。「ぜひ緑の美しさを味わってください。新緑の時期、晴れた日に木々の間から見える空を眺めると、澄んだ気持ちになります」とのこと。
京都の街中にありながら、境内は静かで落ち着く雰囲気。自然のなかをゆっくり散策していると、日々の喧騒を忘れられそうだ。
縁結びの神様 相生社
縁結びのご利益で知られる「相生社(あいおいのやしろ)」と御神木「連理の賢木(れんりのさかき)」にもお参りしたい。
2本の木が途中で結ばれて1本の木となる御神木「連理の賢木」は、まさに夫婦和合の象徴。御神木に願いを込めると、この木のように良縁を結んでくれるというわけだ。「連理の賢木は、たとえ枯れても糺の森のどこかに跡継ぎの木が生まれる」という不思議な逸話もあるそうだ。
美麗のご利益がある河合神社
下鴨神社の摂社「河合神社」は美麗祈願のご利益で知られ、御祭神に神武天皇の母・玉依姫命を祀る。本殿に祀られている玉依媛命と名前は同じだが別の神様で、こちらは玉のように美しいことから美麗の神様として信仰されている。
河合神社では、塗り絵のように絵を完成させる「鏡絵馬」が人気。クレヨンや色鉛筆、普段自分が使っている化粧品などを用いて絵馬にメイクを施し、絵馬に願いを託すことで、身も心も美しくなれるという。
河合神社は、『方丈記』を著した随筆家・鴨長明にもゆかりが深い。鴨長明は、実は河合神社の禰宜の息子として生まれた人物。境内には彼の資料室もある。
みたらし団子のルーツ 御手洗池
境内の小さな池「御手洗池(みたらしいけ)」と、その傍らに立つ「御手洗社」にもぜひ立ち寄りたい。御手洗社は、井戸の上に立つことから「井上社」と呼ばれることもある。
大塚さんは、「都会にあってこれほど清浄な水が湧き出るのは珍しいです。御手洗池から湧き出た水は、境内を流れる川となり、森をうるおします。当社にとって、とても大切な場所です」と話す。
ところで、御手洗池が「みたらし団子発祥の地」といわれているのはご存じだろうか?伝承によると、御手洗池に湧き出した水泡をかたどって誕生したのが、あの丸くておいしいみたらし団子なのだという。まさか、みたらし団子のルーツが下鴨神社にあったとは!
この御手洗池では、夏の土用の時期に「御手洗祭(足つけ神事)」という有名な神事が行われる。こちらについては後述しているので合わせてチェックを。
十二支を祀る言社
本殿前に立つ小さな7つの社は、「言社(ことしゃ)」という。それぞれに干支(十二支)が祀られており、自分の干支の社にお参りすると守護してくれるそう。訪れるとついつい、自分の干支を探してしまう。本殿と合わせて参拝しよう。
ラグビーファンの聖地 さわた社
“ラグビーファンの聖地”として有名な「さわた社」にも注目を。御祭神の神魂命(かんたまのみこと)の御神名から、魂は玉に通じるとして、さわた社には球技上達のご利益があると信じられてきた。
そんなさわた社が“ラグビーファンの聖地”と言われるようになったルーツは、1910年にさかのぼる。その年、さわた社前の馬場で関西で初めてラグビーの試合が行われた。当時対戦したのは第三高等学校(現在の京都大学)と慶應義塾(現在の慶應義塾大学)。
その後も、2019年のワールドカップ日本大会の組み合わせ抽選会が京都で行われた際には、世界各国の代表も参拝したそうで、いまでは世界中のラグビーファンが訪れるそうだ。
休憩処 さるや
参拝のひと休みには、境内の「休憩処 さるや」へ。古くは無病息災を願って葵祭の頃に食べられていたという和菓子「申餅」をはじめ、かき氷「鴨の氷室の氷」や「良縁ぜんざい」などの甘味を提供している。おいしい甘味を味わいながら穏やかなひと時を過ごそう。
下鴨神社の授与品(お守りなど)
神社にお参りしたら、授与品も気になるところ。インスタを中心に話題なのは、レースでできたお守り「開運招福御守(レース)」。
レースには下鴨神社のご神紋である双葉葵と藤が刺繍されていて、透け感のある繊細で美しいデザイン。
心願成就のお守り「媛守(ひめまもり)」も人気だそうで、お守りに使われているちりめん生地は一体ごとに柄が違うため、好きな柄を持てるのもう嬉しいところ。
下鴨神社には、「源氏物語」の作中で詠まれた和歌が記された縁結びの「源氏物語おみくじ」や、ラグビーボール型の絵馬などユニークな授与品も多い。それらに注目しながら参拝するのも、下鴨神社ならではの楽しみ方といえそうだ。
下鴨神社の年間行事やイベント
【5月】葵祭(賀茂祭)
下鴨神社の祭事といえば「葵祭(賀茂祭)」。「葵祭」は約1,500年の歴史をもつ下鴨神社と上賀茂神社の祭礼で、5月初旬から様々な神事が行われる。なかでも、装束姿の射手が馬上から矢を放つ5月3日の「騎射流鏑馬神事」や、平安装束に身を包んだ豪華絢爛な行列が京都市内を練り歩く5月15日の「路頭の儀」は必見。
【7月】御手洗祭(みたらしさい)
7月土用の丑の日前後10日間に行われる「御手洗祭」も要チェック。参拝者は境内の御手洗池に膝まで浸かり、厄除けや無病息災を祈願する。平安期の頃、貴族が季節の変わり目に禊祓いをして罪穢れを祓っていたという風習にちなんでいる。京の夏の風物詩として、「御手洗祭」の日には多くの参拝者でにぎわう。
下鴨神社への行き方(電車・バスのアクセス情報)
下鴨神社を訪ねるなら、阪急京都河原町駅を起点にするのがおすすめ。
【市バスの場合】阪急京都河原町駅から市バス4・205系で約15分のバス停「糺の森」または「下鴨神社前」で下車。バス停から下鴨神社はすぐ近く。
【電車の場合】阪急京都河原町駅から京阪・祇園四条駅に乗り換え。3駅先の京阪・出町柳駅で下車し、下鴨神社までは徒歩約6分。
市バス、電車どちらのルートでも、阪急京都河原町駅から下鴨神社へは所要約20~30分と、京都の市街地からも案外近い。
ちなみに、下鴨神社の近くには「鴨川デルタ」という市民憩いのスポットもある。映画やドラマにもしばしば登場する有名スポットで、亀や鳥の形をした飛び石をぴょんぴょんと渡る人の姿も。下鴨神社に来たら、鴨川デルタで京都の水辺も楽しんでみたい。
下鴨神社の基本情報(拝観時間や料金)
スポット名 | 下鴨神社(しもがもじんじゃ) |
料金 | 境内自由 |
時間 | 6:00~17:00(神事等により変更の場合あり)※「休憩処 さるや」は10:00~16:30。 |
問い合わせ | 075-781-0010 |
アクセス | 阪急京都河原町駅→市バス・下鴨神社前停または糺の森停下車すぐ |
住所 | 京都市左京区下鴨泉川町59【MAP】 |
URL | https://www.shimogamo-jinja.or.jp/ |
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