職人が作り出す涼感。夏の伝統品【TOKK2022年7月号】
2022.06.25特集
暑い夏を快適に過ごす古からの知恵。
そんな知恵を大切に、また新しい形で今に受け継ぐ職人が生み出す品々の世界を大特集します。
目次
<京うちわ>【京都・烏丸】京うちわ 阿以波(あいば)
細い骨と繊細な装飾が生み出す涼
元禄二年創業、「阿以波」は京うちわ一筋、今年で333年になる老舗(しにせ)だ。
京うちわとは、細骨と美しい装飾のうちわ面に、取っ手を後から組み合わせる挿し柄が特徴とされている伝統的工芸品。うちわには涼を得るだけでなく、魔除けや邪気を祓(はら)う意味もあり、それゆえ神事や軍配などの縁起物としても使われている。
「阿以波」にはあおぐことを目的としたうちわから、両面に透かしが入ったものや美しい刺繍を施した京うちわまで数多くそろう。まず、片透かしのうちわを手に取れば、その軽さに驚かされる。面が大きいため一度に起こせる風は大きく、細い骨がよくしなってあおぎやすい。「うちわは実際に涼を得るだけでなく、お花の代わりに床の間などへ飾ることもできますよ」と女将さん。季節を先取りした絵柄のうちわから、季節を楽しむ心を改めて気付かされた。京うちわには涼しさだけでなく、繊細優美な姿から目で見る涼感も味わえるのだ。
パチッと心地良い音が響く空間
「阿以波」の作業場では、うちわの骨を折るパチッと弦をはじいたような音が淡々と響く。紙と骨を合わせる仮張りという作業では、線も引いていない薄い紙に細い竹の骨を均等かつ放射状に糊付けしていく。
芸術品のような繊細で美しいうちわだが、「生活の中で使ってもらうのが工芸品だと思う」と、十代目当主の饗庭さん。原材料をはじめ、後継者も減っている伝統工芸の世界だが、切磋琢磨しながら生み出すことで様々な発見があることを教えてくれた。美しいうちわを日常に取り入れる高揚感が、爽やかな涼をもたらしてくれそうだ。
スポット名 | 京うちわ 阿以波(あいば) |
時間 | 10:00~18:00 |
定休日 | 日曜・祝日休(7月末までは無休) |
問い合わせ | 075-221-1460 |
アクセス | 阪急烏丸駅下車 約4分 |
住所 | 京都市中京区井筒屋町422【MAP】 |
URL | https://www.kyo-aiba.jp/ |
【CHECK】祇園祭 山鉾巡行が3年ぶりに復活!
技術の伝承と継続のため、例年に近い形で催行される2022年の祇園祭。詳細はこちらよりチェックして!
豪壮な山鉾巡行を3年ぶりに開催。京都「祇園祭」7月1日(金)~31日(日)
3年ぶりに実施される巡行を見に行くなら…祇園祭特別号miniTOKK
技術の伝承と継続のため例年に近い形で催行される2022要駅で設置・配布されている「祇園祭特別号miniTOKK」を連れて出かけてみて!大きなマップもあるため見やすく、京都の町を散策するのにも便利です!
またスマホサイトも公開中のため、実際に手に取れない方はこちらでもチェックできます!
https://www.hankyu.co.jp/sp/area_info/gion2022/
<クラフトビール>【兵庫・伊丹】小西酒造
世界が認める清酒蔵元のビール
清酒発祥の地とされる伊丹で長く続いてきた小西酒造が、クラフトビールでも世界的に高い評価を得ていることをご存じだろうか。
小西酒造のビール「ITAMI BEER ホワイト」は、ベルギービールの醸造技術に、「白雪」など日本酒の発酵技術を合わせたビールで、昨年世界3大ビールコンテストの一つIBAでは最高位を受賞。オレンジピールとハーブやスパイスの香りが繊細な余韻を生む味わいになっていて、ホップの苦みが効いた辛口のビールが苦手な人にも飲みやすい一品。「ITAMI BEER」には、ほかにチョコレートのような濃厚さが魅力の「ブラック」と今年春にデビューした日本酒酵母を使用する「アンバー」の3種類がそろう。六甲長尾山系伏流水で造るビールこそ、大人の夏の昼下がりに良く似合う。
雑味のないおいしさの秘訣
クラフトビールの醸造をはじめて約30年となる小西酒造。「ビール造りの工程でも、日本酒の仕込みに使う『かい棒』で麦芽の攪拌(かくはん)をするなど、随所に酒造りの技術が生かされています」と、クラフトビール課の下中さん。
煮沸時は、糖度や温度を見るなど、ほぼつきっきりで面倒を見る必要がある。「大変ですが、これもおいしいビールのため。少しでもおいしいものを造って届けたい」と一言。香りや甘味が楽しめる芳醇なクラフトビールは、ゆっくり時間をかけて味わいたい。
スポット名 | 小西酒造 |
問い合わせ | 072-775-0524 |
URL | https://www.konishi.co.jp/ |
ITAMI BEERの購入は小西酒造直営店の「白雪ブルワリービレッジ長寿蔵ショップ」などで。隣接した「白雪ブルワリーレストラン長寿蔵」では、料理と共にクラフトビールや日本酒もいただくことができる。
スポット名 | 白雪ブルワリービレッジ長寿蔵 |
時間 | 10:30~18:00 |
問い合わせ | 072-773-0524 |
アクセス | 阪急伊丹駅下車 約5分 |
住所 | 伊丹市中央3-4-15【MAP】 |
URL | https://breweryrestaurant-chojukura.gorp.jp/ |
<天満切子>【大阪・天神橋筋六丁目】天満切子Gallery(ギャラリー)
やわらかな曲線が醸す自分だけの景色
薩摩や江戸が知られるが、大阪にも切子がある。ガラス発祥の地で大阪天満宮近くには、ガラス工房が多く並んでいた。そんなガラスの街で作られているのが天満切子だ。天満切子の大きな特徴はかまぼこ彫りで、V字ではなくU字の彫刻刀でやわらかな線にカットする。
「アールがついた面が凹レンズのようになって、水を注ぐとグラスの中は1枚の絵のようになる」と「天満切子」3代目の宇良さん。その美しさに魅せられ、贈答目的で訪れても自分への購入も考える人が多いとか。
「鑑賞の美もありますが、天満切子は使ってわかる用の美。普段使いして欲しいです」との言葉通り、飲み物を注げば、グラスの中は自らの手も映らず万華鏡のよう。今夏は切子で自分だけの特別な景色を堪能しては。
スポット名 | 天満切子Gallery |
時間 | 13:00~19:00(土・日曜・祝日は11:00~) |
定休日 | 月曜休 |
問い合わせ | 06-6926-4443 |
アクセス | 阪急大阪梅田・天神橋筋六丁目各駅→地下鉄・天満橋駅下車 約4分 |
住所 | 大阪市北区天満2-2-19【MAP】 |
備考 | 購入は天満切子直営の「天満切子Gallery」などで。 |
URL | https://gallery.temmakiriko.com/ |
<地サイダー&ジンジャーエール>【大阪・能勢 】能勢酒造
豊かな緑に育まれたおいしい水のやさしいソーダ
大阪市内から1時間と少しのところにある能勢の里山。そこに300年続く「能勢酒造」がある。ここでは、「とろりと甘い」と多くのプロの料理人やバーテンダーも認める桜川の天然水で、サイダーなどの炭酸水やアルコール造りが行われている。
「おいしさを邪魔しない程度のミネラルが含まれているのが、うちの水」と話してくれたのはこの水で育った社長の子安さん。清涼感のある「桜川サイダー」と大人向けでショウガの効いた「能勢ジンジャーエール」は、夏にこそ飲みたい逸品。栓を開けた時は強く発泡するが、口にするとやわらかい。それでいて、開栓してからもガスがなかなか抜けないのだ。
ゆったり時間が流れる能勢の空気をそのまま詰め込んだようなソーダで、やさしい時間を楽しみたい。
スポット名 | 能勢酒造 |
問い合わせ | 072-735-2222 |
備考 | 工場での購入は不可。阪急オアシスなどで購入可。 |
URL | https://nosemizu.com/ |
<竹籠バッグ>【京都・大宮】竹工房 喜節
人の縁がつながって生まれた唯一無二の品
「やりがいを直接感じられる仕事がしたい」と竹工芸を学ぶため、31歳の時に脱サラをして京都へ来た「竹工房 喜節」の細川さん。竹籠バッグは全国伝統的工芸品公募展で、内閣総理大臣賞を受賞するほど評価されているが、実際は苦労の連続だったとか。「最初は籠部分は良くても、それ以外の評価が厳しくて。今の評価は周囲の人のおかげなんです」と笑う細川さん。
バッグの内装は機織りの仕事もしている奥様が、金具や真田紐は知り合いからと縁が縁を呼び、この竹籠バッグが生まれたという。竹職人は、竹割り3年、編み8年と計10年以上かかる厳しい道。「竹工芸職人は本当に少ない。京銘竹の知名度向上とこの業界への恩返しがしたいですね」。竹は経年で味わい深くなる素材、漆加工が施された軽くて丈夫なこのバッグと共に、時間の流れを楽しんでみて。
スポット名 | 竹工房 喜節 |
時間 | 10:00~17:00 |
定休日 | 不定休 |
問い合わせ | 075-406-0919 |
アクセス | 阪急大宮駅→市バス・千本丸太町停下車 約4分 または、市バス・丸太町智恵光院停下車 約4分 |
住所 | 京都市上京区中務町486-66【MAP】 |
備考 | 工房見学は事前予約がベター。 暖簾が出ていれば、当日の工房見学も可の場合もあり。 |
URL | https://takekobokisetsu.com/ |
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