梅田の建築シリーズ① クラシックラグジュアリーな内装デザインを楽しむ。ハービスPLAZA ENT

大阪梅田を訪れた際に見ておくべき建築物を紹介するシリーズの第1回は、昨年20周年を迎えた「ハービスENT」です。
ハービスENTがあるのは、7つの駅とさまざまな商業施設が集中する梅田エリアの西梅田エリア。西梅田と聞いて多くの方が思い浮べるイメージは、「ザ・リッツ・カールトンのあるあたり」「ハービスのあるところ」というものではないでしょうか。

中央がハービスOSAKA、一番奥の建物がザ・リッツ・カールトン大阪。

西梅田は大阪四季劇場、ブランドショップが入ったハービスPLAZA/PLAZA ENT OSAKA、さらにはラグジュアリーホテルのザ・リッツ・カールトン大阪と洗練された雰囲気が魅力ですが、阪神電気鉄道が西梅田開発事業を行うまでは、現在とは全く違い、人通りもまばらな場所でした。

今回はハービスPLAZA ENTの見どころの紹介のほか、ハービスENTが誕生するまでの西梅田の歴史と、西梅田開発で劇団四季の誘致などに携わられた方に、ハービスENTを訪れる際に注目したいポイントなどをお聞きしたインタビューをお届けします。

建物の中なのに外のような不思議な感覚になるハービスPLAZA ENT

ハービスENTで最初に訪れたのは、地下2階から7階までの商業施設エリア。

地下2階のモールは19世紀後半にパリなどに作られたパッサージュを参照しつつ設計されたもの。写真だけを見ると、どこかの街角を撮影したように見えませんか?

でもここは建物の中。1軒、1軒が独立して見えるようにデザインされた店舗外観、照明も室内のというよりは、街角にある外灯のように見えるデザインにされているのでしょうか。

そして足元にはモザイクタイル。精緻な図柄がフロアを埋め尽くしており、とても凝ったつくりになっています。

館内を移動する手段だけではない、様々な仕掛けがあるエスカレーター

もう一つの見どころは、吹き抜けの中央エスカレーター部分で、正式名はキャスケードエスカレーターと呼ばれています。エスカレーターの乗り口、降り口に車輪が回る飾りがついており、4階では上からライトで照らして、影絵のようにして車輪が回る様子を床に映していました。

さらにエスカレーターの段差部分にはライトが埋め込まれており、足元を照らす仕掛け。

上へ上がっていく途中ではぜひ足を止めて、引きで館内を見回してみてください。ここでも美しいデザインの数々を見ることができます。

こちらは1階にあるGUCCI周辺で撮影したもの。エスカレーターの下部分まで木材でおおわれており、吹き抜けに重厚感を生み出しています。

そしてハイライトともいえるのが、5階のフロアから見る吹き抜け空間です。

洗練された大人の街として知られるハービスPLAZA ENTは、ゆったりとした空間と、落ち着いた雰囲気がやはり魅力的です。
梅田エリアはどこにいっても人が多く、ゆっくりできる場所がないといったイメージもあるなか、ハービスPLAZA ENTはまるで別世界のように落ち着いた雰囲気。ショッピングだけでなく、カフェなども楽しむことができますので、ぜひ足を運んでみてください。

ハービスENTが誕生するまで

2004年、阪神電気鉄道による西梅田開発事業の集大成として誕生

竣工当時の梅田駅東改札口。阪神電気鉄道公式サイトより1939年梅田駅

阪神電気鉄道の開業は1905年。当時の大阪側終点は西梅田の出入橋で、梅田の中心まで約500mの距離を残していました。翌年の1906年には、出入橋~梅田(現在のハービスENTの位置)間が開通、さらに開業から34年後の1939年に地下線で延伸し、梅田(現大阪梅田)駅は、現在地に移設されました。

かつて西梅田にあった阪神電気鉄道本社と西阪神ビル(写真奥)。2024年11月号HANSHINより。

1984年には、阪神本線の野田駅から梅田(現大阪梅田)駅間の地下化がスタートし、1993年に完成。同年、阪神グループは地下化によって利用可能となった線路跡で、西梅田開発事業の第1期工事に着手し、1997年にハービスOSAKAが誕生します。さらに、西梅田にあった阪神電気鉄道本社と西阪神ビルなどを一体的に建て替える西梅田開発事業の第Ⅱ期開発を進め、2004年、ハービスENTが完成しました。

お客様を主役にエンターテインメント性を追求したハービスENT

最後にハービスENT開業の際に劇団四季の誘致などを担当された木戸洋二さんにも、お話を伺いました。

木戸さんは、1975年に阪神電気鉄道㈱に入社、線路や橋梁の維持管理など鉄道土木を担当する工務部を経て、1994年からは開発事業室にて、福島のラグザ大阪、西梅田開発第Ⅱ期(ハービスENT)計画を担当。阪神・淡路大震災発生の後は阪神大震災復旧部の次長を務め、1998年から、部長として再び西梅田開発室へ。ハービスENT計画において地元や行政との協議、都市計画など基盤整備に携わる一方で劇団四季の誘致を担当されました。

「私が阪神電気鉄道に在籍していた期間には、阪神本線野田~梅田駅間の地下化工事の完成、西梅田開発協議会が発足し、開発がスタート、ハービスOSAKA、ハービスENTの開業、ラグザ大阪開業など、阪神電気鉄道の歴史においても大きなトピックスが続いた時期でした。
西梅田開発には、途切れ途切れで関わる形でしたが、劇団四季の誘致、大阪で初めてのラグジュアリーホテル「ザ・リッツ・カールトン大阪」の誘致が実現したことなどは思い出深いエピソードです」。

ハービスENTのグルメフロアから大阪四季劇場へと続く通路周辺の風景

劇場へ足を運び、作品を鑑賞することで事業への理解を深めた

「梅田エリアにはすでに梅田芸術劇場がありましたが、劇団四季とはお客様の層も違っておりましたので、ぜひ誘致を成功させたいと思っておりました。阪神電気鉄道だけでなく、従来から劇団四季の事業を支援されていた毎日放送さんの協力もいただきながら、誘致することができました。
私自身もこの間は「四季の会」の会員となり、作品を鑑賞することで、劇団の事業への理解を深めていきました。劇場スペックにおいても劇団四季の要望を取り入れつつ、賃料などの交渉をし、無事にこけら落とし公演「マンマ・ミーア」を迎えることができました」。

大阪四季劇場へ続くエントランス部分の風景

「これは余談になりますが、ハービスENTのコンセプトである「アーバン・エンターテインメント・コンプレックス」に沿って、さらにエンターテインメント性を高めようと1500席ほどのシネコン誘致が検討されたこともあったのですよ」。

お客様を主役と捉えた館内装飾

ハービスENTの建物の中に入ってから、劇場へたどり着くまでのアプローチの設えについてもお話しいただきました。
「中央エスカレーターの歯車が回っている装飾や、ステップが光る装飾のほか、入り口を入ってから劇場までのアプローチ部分に豪華な装飾が施されていますが、これらは全てそこを通る〈お客様が主役である〉との想いからです。ユニークな装飾は、他の建築などでもあまり見られない、ハービスENTだけのものです。ぜひ楽しんでください」。

大阪四季劇場の入り口付近にはシャンデリアのように輝く柱が設置されている。

大変貌を遂げた梅田エリア。阪神、JR、阪急とそれぞれの個性を感じる街づくりがユニーク

「私が阪神電気鉄道へ入社した当時は大阪駅周辺にはまだバラック小屋が密集している場所もあるなど、今とは全く違う景色を見ていたものです。ハービスOSAKA、ハービスENTの開業でそれまでは人通りのほとんどなかった西梅田に人が行きかうようになり、梅田エリアの変遷を目の当たりにできたことは本当に嬉しく感じます」。

「西梅田はかつて貨物ヤード跡と阪神高速ランプ、阪神本線の軌道敷しかなく、存在感の薄い場所でした。そこへハイブランドが集まる商業施設、ラグジュアリーホテル、劇場などが完成し、人通りと活気が戻った。まさに“生まれ変わった”といえる場所だと思っています」。さらに、「梅田はグランフロント大阪やグラングリーン大阪を含め、それぞれ特徴あるエリアが広がっており、来街者が、その日・その時間の目的や気分でいろんな選択が出来る多様な街という点もユニークだと思います」とのこと。

木戸洋二さん
1975年阪神電気鉄道㈱入社、工務部において19年間、阪神本線・野田~梅田間の地下事業などを担当、1998年からは西梅田開発室部長として福島のラグザ大阪プロジェクト、西梅田開発第Ⅱ期ハービスENTの両方に関わる地元、行政との協議、都市計画に携わる。2005年に阪神電気鉄道取締役に就任、2007年には阪神電気鉄道常務取締役、2013年には阪神電気鉄道代表取締役副社長に就任。2015年から2017年まで、阪急阪神ビルマネジメント㈱代表取締役会長を務めた。

昭和レトロが注目される中で、ぜひ見ておきたいラグジュアリーレトロなハービスPLAZA ENT

近代的なビルから、雑居ビルまで、梅田には何百という数のビルが建っているのですが、その一つ一つを細かく見ていくという機会はなかなかありませんよね。たくさんのビルの中でも、ハービスPLAZA ENTが魅力的な点は、ひとたび足を入れると別世界が広がっているという世界観です。梅田に来たら、やはり一度は見てほしい!建築物です。

スポット名ハービスPLAZA ENT
住所大阪府大阪市北区梅田2丁目2−22【MAP
URLhttps://www.herbis.jp/

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この記事を書いたのは、TOKK編集部 K

生まれも育ちも京都。阪急電車の全駅を紹介した『まちあるき手帖 神戸線・宝塚線・京都線』を編集し、阪急電車の全駅を踏破した経験の持ち主。気になること、興味の対象は数限りなく、一日24時間では足りない!

うどん/コーヒー/ロードバイク/猫/読書/SNS(dispoで何を撮影するのが良いかお悩み中のこの頃)/ピラティス/和菓子/パン/電車/旅/東京/アンティーク/写真/建築

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