【大阪梅田】8秒に1杯売れるジュース!「元祖大阪梅田ミックスジュース」はなぜおいしい?レシピも公開
2025.05.21グルメ
フルーツと牛乳が醸し出す、まろやかな甘さ。時折無性に恋しくなる大阪人のソウルドリンクと言えば──。そう、アレです。ミックスジュースです。阪神大阪梅田駅構内に本店がある、その名も「元祖大阪梅田ミックスジュース」は半世紀以上にわたり、「キン」と冷えたさわやかな酸味で、通勤客や阪神甲子園球場を訪れる野球ファンらの人気を集めています。「8秒に1杯売れる」という提供スピードの裏側、〝秘伝〟のレシピが誕生した背景とは――?
目次
「元祖大阪梅田ミックスジュース」の場所は?

阪神大阪梅田駅の改札の外、地下2階・ホーム階の東端にあります。
阪急大阪梅田駅から向かう場合は、地下街「ホワイティうめだ」を抜けて、阪神大阪梅田駅「東口」方面へ。エスカレーターや階段を使って地下2階・ホーム階へと下ります。

左手にくるっと180度振り向くようなかたちで改札を背にし、「きっぷうりば」を右手に回り込むと、めざすお店が。フルーツを写した色鮮やかなパネルや、行列を整理するベルトパーティションが目に飛び込んできました。お店の間口は2.5メートルほど。カウンター中央のレジを挟んでミキサーが計6台据えられています。
行列ができないほどのスピード提供!

訪れたのは平日の午前中です。お店のそばでは、ビジネスリュックを背負った男性やベビーカーを押した女性、若者の男性グループや百貨店のショッピングバッグを持った女性らが笑顔でジュースのカップを口にしていました。
私もスタッフに「ミックスジュースを」と注文。すると、もう1人のスタッフが即座にミキサーのスイッチをオン。数秒後にはカップからあふれんばかりに注がれたミックスジュースが、そっとカウンターに置かれました。キャッチフレーズの「8秒に1杯売れる」よりも速い。驚きのスピードです。絶え間なくお客さんがやって来るにもかかわらず、行列ができることはほとんどありませんでした。

店長の三谷真由美さんによると、缶詰のみかんや黄桃、バナナ、牛乳、氷などの材料を入れて作るジュースはミキサー1台で約10杯分。あらかじめ撹拌(かくはん)して、ほぼ完成した状態に仕上げておき、注文が入ると最後に数秒間回して提供しています。その減り具合や行列の有無を見計らいながら、他のミキサーにも順次材料を補充してスイッチオン。ジュースを切らさないよう、お客さんを待たせないよう気を配っているそうです。
「元祖大阪梅田ミックスジュース」の人気の秘密

お店は、大阪・尼崎市内を中心に飲食店を展開する「サカイ」(本社・大阪府吹田市)が運営しています。2010年に父親の跡を継いだ井戸辺弘樹社長に話を聞きました。

阪神梅田駅(当時)に「梅田ジュースコーナー」をオープンしたのは1969年。大勢の乗降客が通る改札のすぐ脇という〝一等地〟(現在の駅長室付近)でした。先代の社長は、すでに大阪の喫茶店で人気メニューとなっていたミックスジュースを「このコーナーでも看板商品に育てたい」と考えたそうです。

おいしさのポイントは「みかんの酸味」とシャリシャリ食感

先を急ぐ通勤客や野球ファンら〝いらち〟が多い駅の構内。提供スピードは重要です。大阪人の心をつかむには、安さも大切。材料には缶詰のみかんや黄桃を使用し、規格外品を大量に仕入れてコストを抑えました。そして「急ぐお客さんにもさらっと飲んでもらえるように濃すぎず、みかんの酸味がしっかりと感じられる」(井戸辺社長)レシピを編み出しました。みかん多め、バナナ少なめの「黄金比」は、半世紀以上たった今も変わりません。
出来立てのジュースを口に含むと、みかんの甘みがふわぁっと広がります。黄桃、バナナと牛乳の混じり合ったまろやかさの後、すっきりとしたみかんの酸味が残りました。
シャリッとした氷の食感も印象的です。一気に飲み干すと頭に「キン」と響く冷え具合です。
電車に空調設備もなかった創業当時、しっかりと冷えたジュースを飲んでもらおうと、氷を一緒に撹拌するスタイルに。細かく砕かれた氷の舌触りが、瞬間的に冷たさを感じさせるそうです。

こうして誕生した「速い・安い・おいしい」の3拍子そろったミックスジュースは、お客さんの9割が注文する看板商品へと成長し、5,000杯以上売れる日も。ただ、同じメーカーの缶詰でも季節によって味に微妙な変化があるといいます。そのわずかな違いをキャッチできるよう風味のチェックを日々繰り返し、材料の配合を微調整しながら創業以来の味を守り続けています。
「元祖大阪梅田ミックスジュース」のレシピを公開!おいしく作るコツも

このミックスジュースを自宅でも味わいたいと思ったアナタ。実はサカイのホームページに〝秘伝〟のレシピが掲載されています。大阪人のソウルドリンクと言っても、井戸辺社長によると、意外と若い世代には浸透していないそう。まずはこの味を幅広い層に知ってほしいと公開を決めました。準備する器具は、氷を砕くことができるミキサー。コツは、缶詰のみかんと黄桃を冷凍しておくことです。酸味が足りないときはレモンを加えてもいいそうです。
以下、ホームページからの抜粋です。
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【材料】(お店の1杯より多めのできあがり)
・缶詰のみかん・黄桃合わせて100g(みかんと黄桃は6:4~8:2の割合。シロップも含む)
・バナナ10g
・ミルク(牛乳、加工乳、乳飲料などいずれでも可)50cc
・上白糖8g
・氷50g
【つくり方】
①缶詰のみかんと黄桃をミキサーに入れる
②バナナ・ミルク・上白糖・氷をミキサーに入れる
③ミキサーを回し、見た目が均一になり、ミキサーが食材を砕く音が消えたらできあがり
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ミックスジュースだけではない!多彩なジュース

お店では、ミックスジュース(230円)以外にも、常時3~4種類のジュースが用意されています。
はちみつが入ったまろやかな味の「レモン生ジュース」(230円)は隠れた人気商品。ビタミンEや鉄分が豊富な「小松菜ミックスジュース」(260円)はヘルシー志向のお客さんにオススメです。旬のフルーツを使った「スイカジュース」や「いちごジュース」なども季節ごとに登場。まずは定番のミックスジュースを味わってから、別のジュースを注文するというお客さんも多いそうです。
「元祖大阪梅田ミックスジュース」のこれから。大阪の観光地に

創業から半世紀を超える老舗が今めざしているのは、阪神大阪梅田駅にある本店を「観光地」にすることです。これまでの通勤客や野球ファンに加え、観光で大阪に来た人たちにも立ち寄ってもらえるようにと知恵を絞っています。
転機は2019年の大阪梅田駅のリニューアルでした。お店が〝一等地〟だった改札脇から東端への移転を余儀なくされ、乗降客のメインの動線から外れました。お店の存在を積極的にアピールする必要に迫られ、「梅田ジュースコーナー」と控えめに掲げていた店名を、看板商品そのままに「元祖大阪梅田ミックスジュース」へと変更。果実のみずみずしさを伝えるパネルもあしらって明るい雰囲気を演出しました。新たにデザインした昭和レトロ風のロゴをカップにプリントし、SNSに写真が投稿された際の〝映え〟も意識しています。

そういった仕掛けが奏功し、アーティストのSNS投稿を機にファンが訪れたり、大阪市の韓国向け観光パンフレットへの掲載をきっかけに旅行客も増えたりしているそうです。
井戸辺社長は「『梅田に行ったらミックスジュース』を観光の定番にしたい」と意気込みます。ここ数年は新大阪駅や南海なんば駅といった観光客の玄関口となる大阪市内のターミナルにも次々と出店。本店にも足を運んでもらえるよう「元祖大阪梅田ミックスジュース」をPRしています。
「元祖大阪梅田ミックスジュース」は阪神大阪梅田駅以外にもある
本店のほかに、ミックスジュースを味わえるのは以下の3店舗。ただし、本店とは商品のサイズや価格が異なる場合があります。
■エキマルシェ新大阪ソトエ店
JR新大阪駅3階 東改札外「エキマルシェ新大阪ソトエ」内
■なんば店
南海なんば駅3階北改札口内9番ホーム横
■天王寺ミオ店
天王寺ミオプラザ館 B1階

本店のカップは通勤客がさっと飲めるようにとやや小ぶりのサイズ、1種類です。フタもついていません。「1グラムでも多く飲んでほしい」と、ミキサーでふんわり泡立ったミックスジュースがあふれんばかりに注がれて提供されています。「ビールのような見た目がおもしろい」と評判になり、そのスタイルがすっかり名物となりました。井戸辺社長は「なにげなく始めたことでも50年も続けていると『おもしろい』と言われるようになる。老舗の強みですね」と話してくれました。
一方、新規の店舗では、フタつきのMやLサイズも用意しています。「新幹線に乗ってから味わいたい」といった声も考慮するなど、新たな可能性やニーズを探っているそうです。
日本中に、世界に広がる「元祖大阪梅田ミックスジュース」

取材に訪れた日、修学旅行中という福島県いわき市の中学生5人と引率の先生がミックスジュースを手に笑顔を見せていました。先生は「数年前に引率で来て、この味を知って以来の大ファン」。外国人旅行者らしきグループも続々と立ち寄っていきます。創業以来のレシピを守り、大阪の人たちから長らく愛されてきた味が、日本の遠くまで、さらには世界へと広がっていくのを感じる場所でした。
スポット名 | 元祖大阪梅田ミックスジュース |
時間 | 7:00~22:00 |
定休日 | 元日 |
問い合わせ | 06-6342-7890 |
アクセス | 阪神大阪梅田駅構内(東口改札外) |
住所 | 大阪市北区梅田3丁目大阪駅前地下街6号【MAP】 |
URL | https://ai-sakai.com/brands/juice/ |
この記事を書いたのは… TOKK情報部
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この記事の企画編集は… TOKK編集部T
「TOKK(トック)」編集部T。豊中育ち→箕面→豊中→池田→神戸・岡本→池田と阪急沿線を転々とする。そのたびに街と周辺を隅々まで歩き、住人だからこそ分かる見どころを掘り起こしている。次に住んでみたいのは阪急京都線の大山崎。趣味は、おいしいもの発掘と山歩き。
阪急沿線情報紙「TOKK」は2022年で創刊50年を迎えた情報紙で、関西私鉄・阪急電車沿線のおでかけとくらし情報を毎月1回、各30万部発行するメディアです。取材のこぼれ話やお店の方から聞いたお話や、くらしの中で気になる情報を毎日更新中です。
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