地元愛と下水道の未来を背負う 吹田市のマンホール蓋プロジェクト
2025.05.05吹田
令和7(2025)年4月現在、大阪・関西万博で盛り上がる大阪ですが、大阪府では55年前にも万博が開催されました。その舞台となったのが吹田市。現在でも跡地には万博記念公園が整備され、吹田市の象徴的な場所として親しまれています。
そんな吹田市でデザインマンホール蓋プロジェクト(以下、DMPT)に取り組む、吹田市下水道部にお邪魔しました。

吹田市下水道部のデザインマンホール蓋プロジェクトチームの皆さん
チームの事務局で下水道部歴30年以上のベテランである竹嶋秀人さん(前列右)、プロジェクト発足メンバーの一人でありマンホール好きを公言する長江理都子さん(前列中央)、カメラが趣味でプロ顔負けの腕前を持ち撮影を担当する榊原悠司さん(前列左)や、同じく事務局の伊丹一利さん(後列右)、藤原祐弥さん(後列左)などでチームを組む。
有志で結成されたデザインマンホール蓋プロジェクト
吹田市下水道部がDMPTを開始したのは、平成29(2017)年のこと。発起人となったのは、当時10年ぶりに下水道部に戻ってきた竹嶋さんです。
下水道をもっとPRする必要があると感じて声を上げ、職員有志が10人ほど集ってプロジェクトが発足しました。
「下水道は身近な存在ですが、生活のなかで下水道を意識することはあまりありません。市民の方にマンホール蓋をきっかけに下水道に関心を持っていただき、その重要性を知ってもらいたいという思いがありました」と竹嶋さん。
コンセプトは、吹田らしいデザインを施したマンホール蓋を設置すること。
デザインは自然豊かな吹田市をイメージした自然シリーズ、交通の要衝として発展した吹田市を表す鉄道シリーズ、吹田市の象徴的なものをモチーフにしたシンボルシリーズの3種類を設定。種類ごとにチームが結成されました。
そしてプロジェクト発足年度に各シリーズで1枚ずつ、計3枚のデザインマンホール蓋が誕生。
紅葉が美しい三色彩道の風景、大阪モノレールとコラボした万博記念公園駅、吹田市とパートナーシップ協定を結んでいるガンバ大阪の3枚を皮切りに、現在まで20以上のデザインマンホール蓋が設置されました。


すべてのマンホール蓋に吹田市のイメージキャラクター・すいたんがいるのが特徴のひとつです。
吹田の名産品である吹田くわいをモチーフにしたキャラクターであるすいたんの可愛らしさも、マンホール蓋への興味をそそります。
令和5(2023)〜令和6(2024)年度に設置された大阪・関西万博のキャラクター・ミャクミャクデザインのマンホール蓋を加えると、現在は約30のデザインマンホール蓋を見ることができます。
ご当地キャラ・すいたんを探せ! マンホール蓋にストーリーを込めて
吹田には鉄道6社・16の駅(内ひとつは貨物駅)があり、大阪府の他の市などと比べてもその数は多いそう。そんな背景もあり、デザインマンホール蓋のなかで最初に力を入れて製作したのが鉄道シリーズです。
近隣都市では珍しかった鉄道会社とのコラボを実現させ、令和4(2022)年までに吹田にある16のすべての駅のマンホール蓋が完成しました。
「鉄道シリーズでは、車両とすいたんと吹田らしい風景の3つを入れるのがルール。毎回その3つがうまいこと合わさるアングルを探すことに苦労しました」と撮影担当の榊原さんは話します。
「合成だと思われている方も多いようですが(笑)、過去の写真を採用したものなど一部を除き、どれもすいたんが現場に同行して撮影を行っています」
ロケハンを繰り返しながら納得いくまで撮影を行い、時には再撮影することもあったと言います。そしてその撮影になくてはならなかったのが、鉄道会社の全面的な協力です。
「鉄道シリーズ最初の大阪モノレールの万博記念公園駅は、普段は立ち入り禁止の車両基地のレールの間にすいたんが立ち背後に2台のモノレールが並ぶという、かなりレアなカット。
鉄道やマンホールのマニアの方たちなどに、『どうやって撮影したの?』と驚かれました」と、このマンホール蓋の企画や撮影の調整を行った長江さんが「もちろん安全の確保も考慮しながら」と当時を振り返ります。

また各駅の特徴に合わせて、すいたんにストーリーを感じさせることもモットーにしているのだとか。
「例えば江坂駅はビジネス街であることにちなみ、すいたんに撮影用に作ったすいたん新聞を入れた通勤カバンを持たせてビジネスマンを演出しました」と榊原さん。

駅周辺がイギリスの街をモデルに整備されたという阪急千里山駅のマンホール蓋では、旅している英国紳士のような雰囲気で旅行カバンとコウモリ傘を持ってベンチに座るすいたんの姿が。
そして、医療や健康に関する研究施設などが集まる北大阪健康医療都市があるJR岸辺駅では、ノルディックウォーキングをする健康志向のすいたんが見られます。
また、すいたんが目立つものもあれば、どこにいるのか探すのが難しいほど密やかに登場しているバージョンも。
阪急の吹田駅のマンホール蓋では、目を凝らしてもすいたんを発見できず……。
「すいたんは右上に立つ吹田市役所のベランダにいますよ」と、長江さんが笑顔で教えてくれました。

デザインマンホール蓋自体も、わかりにくい(?)場所にあることが多いのもポイント。宝探しのような感覚で見つけるのを楽しむことができます。


令和5(2023)年には、自然シリーズの3枚が仲間入りしました。大型複合遊具・バオバブツリーが新たなシンボルとなった江坂公園、秋には紅葉がきれいで四季を感じられる桃山公園、夏になると水遊びをする子どもたちで賑わうせせらぎの道をデザインしています。
いずれも市民に親しまれる憩いの場であり、吹田の街の魅力が伝わってきます。


マンホール蓋から未知の下水道の世界へ
大阪・関西万博の開催に合わせて作られたミャクミャクデザインのマンホール蓋は現在、吹田市内の8ヶ所で見ることができます。EXPO’70の開催地として市内に残るレガシーや大阪・関西万博のテーマ「いのち輝く未来社会のデザイン」に合った施設など、万博に関連した場所に設置するのがコンセプトなのだとか。
「ミャクミャクデザインの蓋を巡ることで、吹田市の万博の遺産にも触れていただければ」と竹嶋さん。
色鮮やかなデザインが目を引くので、こちらは探しやすいかもしれません。

ガンバ大阪のホームスタジアムであるパナソニックスタジアム吹田の完成から10年を迎える令和7(2025)年の今年は、ガンバ大阪の新たなキャラクター・モフレムとすいたんをデザインしたマンホール蓋が登場予定なのだそう。今後もマンホール蓋を通じて下水道と吹田のPRを続けていきたいと竹嶋さんたちは語ります。
「マンホール蓋にとどまらず、その先にあるものも想像していただけたら。マンホール蓋の下には網の目のように下水道管が広がっていてその先には下水処理場があり、水をきれいにして川に戻している。そんな生活環境に欠かせない下水道にも想いを巡らせていただければうれしいです」と竹嶋さん。
直径60cmの小さなデザインマンホール蓋に込められた、プロジェクトチームの皆さんの熱い想いをお聞きすることができました。
「どのマンホール蓋が好きですか」の質問には、「どれも思い入れがあり子どものような存在なので、選ぶのが難しい」と揃って悩まれていた皆さん。
マンホール愛に溢れる姿が印象的でした。
この記事を取材したのは ライター A子
愛知県出身京都在住。京都が好きで移り住んで約20年。
制作プロダクションでの編集を経て、ライターとして独立。
京都の酒場巡りが好きで、主に御所周辺や出町柳エリアに出没。

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